【モスクワ=小野田雄一、ジェシュフ(ポーランド南部)=佐藤貴生】ロシアのウクライナ侵攻をめぐり、両国の代表団は2月28日午後(日本時間同日夜)、ベラルーシ南東部ゴメリ州の施設で停戦交渉を始めた。露主要メディアが伝えた。双方の溝は大きく、交渉が妥結するかは不透明。交渉に並行し、ロシアは首都キエフを含むウクライナ各都市への攻撃を続けた。主要都市の掌握には至っていない。ロシアは同日、核兵器を運用する部隊を戦闘警戒態勢に移行させた。
交渉開始に先立ち、ウクライナのゼレンスキー大統領は「交渉の結果には期待していない」と述べ、楽観的な見方を避けた。ロシアは武装解除などをウクライナに迫る可能性がある。交渉はロシアが兵站を整えるまでの「時間稼ぎ」だとする観測もあり、ウクライナ側の警戒感は強い。
タス通信によると、露代表団トップは「合意に達するまでやる」と述べた。
停戦交渉をめぐっては、2月25日に双方が意欲を表明。しかし開催場所などで双方が対立した。ウクライナは27日、「ロシアがウクライナ軍にまず武器を置くよう求めたため、交渉を拒否した」と明かすなど、一時は実現が危ぶまれた。最終的に両国は同日夕、ベラルーシとウクライナの国境地帯での交渉に合意した。
ロシアは交渉の合意後も攻撃を続け、双方に死傷者が拡大している。ウクライナは28日、侵攻以降に約5300人のロシア兵が死傷したと発表。子供16人を含む350人以上のウクライナの民間人が死亡したとしている。一方、これまでロシアの損害を公表していなかった露国防省も27日、自軍側に死傷者が出ていることを初めて認めた。
さらに露国防省は28日、ショイグ国防相がプーチン大統領に、核兵器を運用する陸海空戦力の戦闘警戒態勢への移行が完了したと報告した、と発表した。露主要メディアが伝えた。核戦力の戦闘警戒態勢への移行は27日、プーチン氏がショイグ氏らに指示していた。
露国防省はまた、28日、南東部ザポリージャ原発を制圧したと発表。ウクライナのメディアによると、同国側は虚偽だと否定した。東部マリウポリで戦闘が起きたほか、キエフ周辺でも防衛線を突破しようとしたロシア軍が撃退された。ロシアがキエフ北方に増援を送ったとの情報もある。
英国防省は28日、キエフ北方のチェルニヒウと東部ハリコフで激しい戦闘が起きているが、両市はウクライナの統制下にあると発表。ウクライナ軍の強固な抵抗や兵站の問題などで、ロシア軍の主力はキエフ北方30キロ地点からなお前進できていないとも指摘した。