Informationは人をin formationするものである - 役に立つかは別として

役に立つかは別として

頭の中にあるゴチャゴチャを出しとけばスッキリするかも

Informationは人をin formationするものである

まだフロリダの話はあるんだけど、別に書きたいことがまた出てきたから書く。

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つい最近、ユヴァル・ノア・ハラリ氏の最新作「Nexus」を読み始めた。

日本語版は来年出るらしいっす。

ハラリ氏の著書は、人類史全部という超高いところから俯瞰して物事の成り立ちや流れを分析しているのが面白いし、マジ勉強になるから、結構読んでいる*1

とは言え、「Nexus」に関しては、まだ第3章に入ったばかりで、キンドルのパーセンテージで言うと9%しか読めてない。だから「全部読んでからブログ書けよ!」って感じなんだけど、第1章にあまりにも印象的な箇所があって、どうしても今書きたいから書く。

以下抜粋(ところどころ太文字にしたのはあたし。非公式翻訳もあたしのもの):

Information doesn't necessarily inform us about things. Rather, it puts things in formation.(情報が必ずしも物事の説明になるわけではない。情報はむしろ物事を形成するものである。)

...中略...

Music can make soldiers in formation, clubbers sway together, church congregations clap in rhythum, and sports fans chant in unison.(音楽は、兵士に隊列を組ませ、クラブの客に一体となって踊らせ、教会の会衆にリズムに合わせて手拍子させ、スポーツファンに声を揃えて応援させることができる。)

ハラリ氏は、本題に入る前に「そもそも情報とは何か」という話をしていて、「情報がそのまま知識にはなることはないし、たくさんの情報を集めたって真実になるわけでもない*2」というようなことを説明した上で、「情報の実質的な作用とは、人々をまとめて動かすことなのだ」というようなことを指摘している。そしてその例として情報の一種と言える音楽を出して、いかに人々が音楽という情報をもとに一体となって動くか述べている。

なるほど!!言われてみたらそうだわ!!!

「サピエンス全史」では、

ホモ・サピエンスが生態系の頂点に立って文明を築くことができた理由は架空の物語を語る能力があったからという話があって、なるほど!!と目からウロコだったけど、今回も早速目からウロコだった。

GoogleやFacebookが示唆するような「大量の情報でも整理して簡単に検索できるようにさえすれば…」とか「世界中の人々が情報を共有することさえできれば…」みたいな考えは、「そもそも情報は知識でも真実でもなく、間違っていることも改ざんされていることさえある」という前提を踏まえたらナイーブでしかない。これは、マジで人類みんなが常に意識すべきことだと思う。

でも、あたしがこの視点そのものより「おお!…え?」と思ったのは、「Information puts things in formation」というフレーズ。

ちょっと待って、Informationってもしかしてホントにin-formationが語源だったりする??それともこれはハラリ氏のめちゃくちゃイケてる言葉遊び?

昔、オードリー・ヘップバーンが「Impossible」を分解して「I'm possible」と言ってたのを見て「ナイスぅー!座布団1枚!」と思ったことがあったけど、

イケてる言葉遊びで真実を突くというダブル技を見せてくれたハラリ氏には座布団を2枚あげたい。

でも、こういう技は日本語訳すると死んじゃうんだよね。上のオードリー・ヘップバーンの言葉の訳みたいに英単語をそのまま残す以外に方法はなさそうなんだけど、「Nexus」の場合は英単語を残してまでして言葉遊びをわざわざ表現してたら読者の気が散って逆効果だろうし、だとしたら死んでもらうしかない。ああ、もったいない。

……という話はまあどうでもいいんだけど、Informationの語源についてちょっと調べてみたら、どうやらInformation(名詞)は

  • 古いフランス語の informacion(助言) や enformacion (指導)から来ていて
  • これらはもともとラテン語の informationem(概要、概念など)から来ているが、
  • この informationem という名詞は、同じくラテン語の informare(指導する、教育する、形づくる)というという動詞を語源としている

ということらしい*3。「形づくる」は「give form to」になっている。「put it in formation」ではないけれど、指導や教育によって人の言動をなんらかの形にはめていくということであれば、意味的にはわりと近い。

面白いなぁ。語源は in formation じゃないけど、意味的には近いものがあるって興味深い。

現代では、特定の人たちが指導や教育に見せかけたステマや洗脳によって自己利益のために大衆の言動を誘導していることがとても多い、しかもテクノロジーによってより多くの人を対象により簡単・迅速にできるようになっている、というのが違うくらいかもしれない。

でも「Informationは人をin formationするものである」と覚えると、情報とどう向き合うべきなのかと意識しやすくはなるよね。

第1章で結構満足しちゃったけど、頑張って残りも読もっと。

 

*1:全部は読んでないけど。

*2:そして、真実はリアリティの一側面でしかないとも言っている。

*3:Informationの語源はこれを参照した。

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