労働者協同組合にわとコ(令和6年2月設立)

住まいをつなぐ、人をつなぐ、地域で未来をつくる
労働者協同組合という働き方を通じて、地域を元気に!

労働者協同組合にわとコは、少子高齢化や都市圏への人口流出等により空き家が増え続けている山形県山形市で設立された、山形県初の労働者協同組合です。「地域の空き家問題をなんとかしたい」「地域の困りごとや課題・ニーズに応えながら空き家の利活用につなげたい」、そして「空き家管理を通して就労の機会をつくりたい」という想いを胸に立ち上がりました。

これまでの活動の経緯

増えていく空き家と地域住民の困りごとを実感

年々空き家が増えていますが、物置として利用されていたり、更地より固定資産税が安いこともあり、特に規制のある農村地域では売買や除却が進まず放置されたままの家も少なくありません。その結果、老朽化した建物や荒れた庭の草木などにより、所有者だけでなく、近隣住民にとっても困りごととなっています。

さらに、2023年12月、「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」(改正空家対策特別措置法)が施行され、放置すれば「特定空家」(周囲に著しい悪影響を与える空き家)になるおそれのある空き家(管理不全空家)に対し、市町村長が指導・勧告を行う制度が新設されました。勧告を受けた空き家は、固定資産税の住宅用地特例の適用対象外となり、税制や管理が厳しくなって対応に困る人が急増する可能性が出てきました。

地域を愛する仲間たちが出会い意気投合!

2023年末、現在の代表理事は、元々知り合いであった現メンバーの市議会議員より「空き家問題を解決しつつ、地域活性化につながる取り組みを始めたい。それを労働者協同組合でやってみようと思っている」と聞いて、本業である不動産関連の事業を興味があった労働者協同組合で、という話に「やってみたい!」と即答しました。同じく、空き家問題と労働者協同組合に関心が深かったもう一人のメンバーを誘って行動を起こしました。
「やらぬ後悔が一番イヤ。まずはやってみる」、「山形大好き!思い立ったらやってみたい」、「何事も自分でやってみる!」が信条の3人はすぐ意気投合し、空き家問題に取り組む団体を設立することに決めました。

  • 創立総会後に地元の皆さんと懇談

社会問題解決に直結した活動がしやすい労働者協同組合を選択

生活協同組合の利用を通じて労働者協同組合に関心があったこと、過疎地域の課題を民主的な働き方で解決したいと考えていたこと、そしてメンバーの一人が東京都主催の労働者協同組合のセミナーに参加したことから、3人は、労働者協同組合とNPO、会社組織との違いを検討しました。その結果、「ボランティア性の高いNPOに比べ、賃金を伴う働き方の方がパフォーマンスも上がり、継続性が高まる」「利益追求ではなく地域課題解決をめざす事業に適している」「地域の人々と一緒に活動できる」と考えて、労働者協同組合を選択しました。山形県では初となる労働者協同組合の誕生です。

現在は、相談事業、空き家管理と利活用(マッチング)、地域包括支援センターや片づけ屋さんなどと連繋した事業を進めながら、空き家や住まいに関する様々な困りごとを労働者協同組合が仲介し、行政や専門事業者、移住希望者などと結びつけるプラットフォームの構築をめざしています。

  • 地域包括支援センターとの打合せ風景

活動に当たり大事にしていること(意見反映の方法等)

対面とSNSのハイブリッドコミュニケーションで活発に議論

大切にしているのは、組合員同士はもちろん、地域の方々との丁寧なコミュニケーションです。組合員同士は普段はSNSを活用し、思いついたことや企画などを随時共有・発信できる仕組みを活用していますが、事業を進める上で対面する必要性もあり、理事会を含め対面での打ち合わせを必ず月1回は開催しています。実際に会うからこそ事務連絡の行間の機微を共有できる、とリアルな話し合いを大切にしています。

また地域の方々とは、こちらから出向いて一人ひとりの声を丁寧に聴くようにしています。空き家相談は多様で複合的。住まいへの思いや願いに寄り添い、一緒に悩みを整理していく。それが空き家問題解決への重要な一歩と考えています。

  • 時には屋外でも打ち合わせ、リアルな話し合いを大切に

実は空き家は魅力的、「負動産」ではなく「富動産」に!

空き家をネガティブではなくポジティブに捉える、これが基本的な考え方です。空き家は「負動産」ではなく「富動産」。適切に活用されれば、地域と住民を豊かにしてくれる貴重な財産にもなります。私たちから地域の方々に「使わせていただきたい」と声掛けを続けることで新しい可能性が広がっていくと考えています。

活動に当たり生じた困難や課題、それに対する対応

担い手不足、余裕の無さなどの運営課題は「できることをできる範囲で」

半年を経て、それぞれの得意分野がわかってきたので、互いの強みを活かした取り組みを進行中です。企画ごとに企画長を選出し、責任をもって取り組みにあたることを心がけています。

当初は「やりたいこと」と「やれること」がうまくかみ合わないこともあり、マンパワー不足や運営における余裕の無さを痛感しましたが、まずは「できることをできる範囲で」活動を続けています。
具体的には、事業収入の柱とした空き家管理の必要性を呼びかけるための講演会、空き家利活用の可能性や面白さを発信する「専門事業者や移住者によるパネルディスカッション」や「空き家利活用の妄想ワークショップ」などのイベントを開催しています。自分たちがワクワクすることを中心にアイデアを持ち寄り活動を展開しています。

空き家の管理委託を地域で担う「仕組み」を事業化

空き家問題を発端として高齢化する地域の課題も視野に入って来ました。地域の役員は担い手不足にあり、ボランティア要素も多いため一部を有償の仕事にできないだろうかと考えました。そこで、地域に眠っている多様な人材(働き手)を発掘し、育児や介護の隙間でも、退職後でも無理なく働ける仕事としての就労を生み出せないか検討し、空き家の管理を地域が自ら行い就労の場として活用する、「仕組みづくり事業」を立ち上げることにしました。

どのような方法が最も地域に適していて、持続可能なのか。空き家の持ち主や地域の方々との話し合いや相談を重ね、まずは管理・活用の承諾をいただいた物件の委託管理を地域の人材や団体に担ってもらいたいと思っています。

地域の人々が関わることは、住民一人ひとりが問題意識を身近に感じることができるだけでなく、管理を仕事として請け負っていただくことで地域の新しい仕事づくりに貢献できます。まだまだ課題は山積みですが、こうした取り組みがやがて持続可能な地域づくりに役立っていくと考えています。

今後の方向性

空き家所有者の悩みは地域パートナーと連携

月1回の空き家の困りごと相談では、「大きな仏壇があってどうしていいかわからない」「物置になっていて片付かない」「高齢の一人暮らし。子どもたちも県外。将来どうしたら?」といった相談が寄せられます。

現在は地域の団体や企業とパートナーシップを結び、特定エリアに強い不動産業者を紹介したり、遺品整理事業者を紹介したり、地域包括支援センターと連携したりしていますが、今後はより広範なネットワークを拡大していく予定です。

  • にわとコのパートナー(左は地域の仏壇屋さん、右は不動産屋さん)

新しい時代の新しい働き方で空き家の可能性を広げたい

コロナ禍を経て、働き方や生き方を見直す人たちが増えてきました。テレワークやワーケーション、地方移住への問い合わせや相談、現地視察の対応も行っています。

家は、働き方や生き方を支える重要なインフラです。空き家を活用して、もっと多くの方に山形市での生活を楽しんでもらいたいと思っています。

空き家活用×労働者協同組合で地域課題を解決
就労機会を増やし、活き活きとした地域へ

空き家活用の取り組みを通じて、空き家予備軍ともいうべき一人暮らしの高齢者の不安や困りごとも見えてきました。将来は地域の皆様の幅広い困りごとに対応する事業も検討しています。

にわとコは「労働者協同組合という働き方を広めていく」ことも活動テーマのひとつに掲げています。地域のための業務を地域の人たちが仕事にして、共に働く。それを実現できるのが労働者協同組合です。まずはこれまでボランティア要素が強かった町内会・自治会の役員業務の一部事業化も考えています。こうした変化が、役員の高齢化・なり手不足問題の解消や、地域経済活動の活性化につながるかもしれません。

まずは空き家管理で実績を積み、労働者協同組合に興味を持つ人を増やしたい。そして地域の困りごとを解決し、仕事を創出し、持続可能で活力ある地域社会の実現をめざしていきたいと願っています。

  • にわとコのロゴ
  • 草刈作業後の組合員3人です

基本情報

法人名  労働者協同組合にわとコ
事業所の所在地  山形県山形市大字村木沢586番地2
設立  2024年2月
事業内容  空き家活用・管理、困りごと相談
組合員数   3人
組合員の年代別構成  30代〜50代
組合員以外の就労者  0人
売上高  140万円(初年度見込)
出資1口の金額  5万円(2口以上)
出資の総口数  6口

(令和6年7月末現在)