「ムーンフェイズの腕時計が気になる」
「腕時計のムーンフェイズはどうやって合わせるの?」
腕時計のムーンフェイズは、その日の月の満ち欠け具合を教えてくれるロマンティックな機能です。
デザインとしての人気や面白さが先行しているイメージですが、海水浴や釣りに行かれる際にチェックしたり、バイオリズムの指針にしたりなど、実用性も皆無ではありません。
そんなムーンフェイズの合わせ方について知りたいと思う人は多いのではないでしょうか。
ムーンフェイズの腕時計はブランドやモデルごとに意匠が凝らされ、ダイヤル上での配置や月の部分のデザインもさまざまです。(クリックで商品詳細ページにジャンプします)
実はムーンフェイズの合わせ方は想像以上に簡単です。
この記事ではムーンフェイズの合わせ方を、GINZA RASINスタッフ監修のもと解説します。
ムーンフェイズの仕組みについても説明していますので、機械式腕時計が好きな方はぜひ参考にしてください。
目次
そもそも月齢って?
「齢」という言葉の通り、その月が生まれてから経過した日数を表しているのが「月齢」です。新月(月の見えない夜)を0歳とし、翌日を1、翌々日を2・・・というように数えられ、15日目前後で満月となり、その後は再び欠けてゆき30日目前後で次の新月を迎えます。また、7日目前後の半月を「上弦の月」、22日前後の半月を「下弦の月」と呼びます。
ですので、「三日月」と呼ばれるのは月齢3の状態の月ですね。また、三日月は月齢では3ですが、新月から2日目まではほとんど肉眼で見られない細い月なので、昔は「初月(ういづき)」とも呼ばれたそうです。
ところで、新月から満月を経て再び新月に戻るまでの時間は、つまるところ月が地球を一周するのにかかる時間と一致しますが、この周期は29.3日から29.8日くらいの幅で微妙に変化しており一定ではありません。月が地球の周りを回る間に地球自体も公転により移動しているので、細かく求めようとすると大変複雑な計算となるようです。
という豆知識もございます……が、天文学者でもない私たちは大体29日半と思っておけば支障は無いでしょう。こちらを踏まえて、本題のムーンフェイズ機構についてのご説明に移りたいと思います!
ムーンフェイズってどんな仕組み?
こちらがムーンフェイズ! 夜空を思わせる深いブルーの中にきらきらと輝く月や星が配置され、このデザインだけでも時計選びのポイントになりそうな人気の意匠です。
一部変わったタイプも存在しますが、ほとんどに共通するのは、月や星の描かれたディスクが↓のような特徴的な形の窓から半分(未満)覗いているという点。
そして半透明のデザインが個性的なこちら↓のウブロを見て頂くとお分かりいただけるかと思いますが、ムーンフェイズのディスクには、月が2つ描かれています。
このディスクの歯車には59枚の歯があり、「29.5日で半周=59日で一周(向きは時計回り)」するように作られています。
表示されていた月が3時側の丸い部分に少しずつ覆われていき、完全に隠された当日は月が2個とも表示されない状態(新月)となります。翌日になると9時側からもう1個の月が少しだけ覗き始め、日ごとに全体が見えるようになっていき、頂上に上ると全面が見える状態(満月)となるのです。
1枚のディスク上に月を2個配置させ、新月を表すため半分+半円2個分を覆い隠し、片方の月が隠れた翌日にはもう片方の月が現れる仕組み。また、月齢周期が約29.5日と半端な数値ですが、こちらを2倍の59日で一周とすることで、歯車の設計面での複雑さも解消しているなんとも賢いシステムと言えるでしょう。
実際に合わせてみましょう!
ムーンフェイズは時計の時刻が進むのと連動して切り替わっていきますが、先ほどお話しした月齢周期の微妙な変動や、時計自体の止まりなどによりずれてしまう場合があります。しかし、たとえ大幅にずれていても、当日の月齢さえWEBサイトなどで確認できれば合わせるのは意外と簡単。
今回は「ロンジン マスターコレクション ムーンフェイズ L2.673.4.78.3」を使って、ムーンフェイズの合わせ方をご説明したいと思います!
こちらが今回使用する時計。12時間積算計と一体化したムーンフェイズは紺色の地に金のプレートが貼られたようなスタンダードなデザインで、多機能な文字盤にうまく溶け込んでいます。
月齢は17くらいを指していますね。
さて、月齢「17くらい」と言いましたが、ムーンフェイズは目盛りなどもなく少しずつ動いていくので、↑のような何とも言えない欠け具合だと正確な月齢が読み取れません……。しかしこのファジーな雰囲気もムーンフェイズの魅力と言えば、そんなような気もしてきます。
というわけで、まずは確実に判断できる月齢ゼロ、新月の状態にしてみましょう。こちらのモデルは、リューズを一段引きで12時側に巻くと、小さくカチカチと音がしてムーンフェイズが右回りしていくタイプでした。
3時側の半円に月が覆い隠され、新月になりました。9時側半円の中では次の月がスタンバイをしています。
ここで、今日の月齢を確認したいと思います。
Googleで「月齢」と検索をかけてみてもよいですし、こちらのサイトなどで、当月の月齢カレンダーを確認できます。
今月はこちら。2018年2月11日(日)に合わせたいと思いますので、月齢は「25」となります。つまり、新月の状態から25回分カチカチと歯車を進めていけばOK!
2回分ほど進めた状態がこちら。三日月に少し満たないくらいの細い月が出てきました。
慎重に数えながら、25回分進めました。あと4~5日もすれば隠れてしまいそうな状態ですね。
尚、途中でわからなくなった場合はもう一度新月からやり直しです……。満月の状態も真ん中なのでわかりやすいですが、新月から始めるほうが確実ですね。
月齢合わせが完了です! 次の新月の表示のときにちゃんと実際の月が隠れているか、確認するのが楽しみですね。
まとめ
神秘的な月の満ち欠けを、多くの知恵と工夫により機械式時計に落とし込んだ「ムーンフェイズ」。もしかしたら、「手持ちの時計についているけど表示は気にしていなかった!」「難しそうでいじったことがない……」という方もいらっしゃったのでは?
ご紹介した合わせ方は想像以上に簡単だったかと思いますので、ぜひこの機会に使いこなしてみてはいかがでしょうか。
尚、時計のムーンフェイズをしっかり合わせていても、月齢周期が29.2日など短めの場合満月は月齢13や14で訪れることもあり、実際の月の満ち欠けと時計の表示がずれていく事は免れません。調整は慣れれば数秒なので、夜空を見上げて新月や満月に気がついたとき、時計の表示が違っているなと感じたらそのつど合わせていくというのも、時計をきっかけに天体を楽しむひとつの方法ではないかと思います。
当記事の監修者
廣島浩二(ひろしま こうじ)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチ コーディネーター
一級時計修理技能士 平成31年取得
高級時計専門店GINZA RASIN 販売部門 ロジスティクス事業部 メンテナンス課 主任
1981年生まれ 岡山県出身 20歳から地方百貨店で時計・宝飾サロンで勤務し高級時計の販売に携わる。 25歳の時時計修理技師を目指し上京。専門学校で基礎技術を学び卒業後修理の道に進む。 2012年9月より更なる技術の向上を求めGINZA RASINに入社する。時計業界歴19年