「クロノグラフってどんな機構なの?」
「クロノグラフの機能について詳しく知りたい」
見た目にかっこいいクロノグラフですが、機能について詳しく知りたいという人は多いのではないでしょうか。
高級腕時計では、多くの人気モデルにクロノグラフが採用されています。
この記事ではクロノグラフがどのような機構なのか、GINZA RASINスタッフ監修のもと解説します。
人気モデルの紹介もしていますので、クロノグラフモデルのご購入をお考えの方はぜひ参考にしてください。
目次
クロノグラフとは
クロノグラフは「特定の経過時間を計測するための機構」です。日本人に馴染みのある呼び方をすれば、ストップウォッチ機能と言えます。一般的なクロノグラフは時分針の他に「クロノグラフ針」を備えており、この針をスタート・ストップボタンで制御することで任意の時間経過を計測します(詳細な使い方は次項で解説)。
機械式腕時計には様々な機構が存在しますが、その中でもクロノグラフの需要はトップクラスです。
クロノグラフは時間を計測できるという多機能性に加え、文字盤の配列がメカニック!秀逸なデザインになっていることが多いことが人気の背景として挙げられるでしょう。
そのため、各ブランドの定番モデルには必ずと言ってよいほどクロノグラフ搭載機がラインナップされています。
なお、「クロノグラフ 」という言葉は、ギリシア語の「クロノス=時間」と「グラフォス=記す」を合わせた造語です。クロノグラフの原型であった時計が”文字盤上にインクの滴を垂らして経過時間を記した”ことが由来となっています。
ちなみに現存する資料やクロノグラフ機構から、1816年にルイ・モネが発明し、1822年にニコラ・マシュー・リューセックが「クロノグラフ」と命名・特許取得したことが歴史の始まりとされています(余談ですがルイ・モネは時計の歴史を200年早めたと名高いアブラアン=ルイ・ブレゲの共同制作者で、後に計測機構としてのクロノグラフと時計を初めて一体化させたのはこのブレゲと言われています)。
時計の精度に関する公的規格「クロノメーター(COSC)」と混同しがちなので、要注意です!
Column;腕時計のクロノグラフの歴史
前述の通り、クロノグラフは19世紀前半に機構として確立しています。
今でこそスマートフォンにストップウォッチが内臓されている時代ですが、当時は計測機構を機械的に構築・制御することで時間計測が行われていました。
「クロノグラフ針を制御するスタート・ストップボタン」「計測終了後、クロノグラフ針をゼロ位置に戻すリセットボタン」「30分や1時間の計測を行える積算計」・・・こういった機構を持つクロノグラフはどうしても構成パーツが多く、仕組みも複雑です。
そのため腕時計に搭載されるようになったのは、さらに時代が下って1900年代に入ってからです。
1900年代に起こった世界大戦や各種産業革命は、より精密な時間計測を要請しました。加えて、任務中にポケットから懐中時計を出す手間は煩わしく、腕時計サイズでこれを求められます(ちなみに腕時計が一般化したのは、1914年に勃発した第一次世界大戦が一つのきっかけと言われています)。とりわけ航空機の発達と軍用化が、クロノグラフ需要を大いに高めました。
1913年にロンジンが腕時計用クロノグラフの量産で先鞭をつけ、続いてバルジューやブライトリング、パテックフィリップなどといった名門時計メーカーがこれに追随していきます。
なお、クロノグラフはムーブメントメーカーのエボーシュ(汎用ムーブメント。これをベースに、各社が改良を加えたりそのまま使ったりする)を用いるメーカーが少なくありません。ロレックスやパテックフィリップも、現在では自社製クロノグラフを搭載していますが、エボーシュを使った歴史は長いと言えます。
そんな名門ブランドに銘エボーシュを供給したクロノグラフメーカー―バルジューやヴィーナス、レマニア等々―は、1930年代に現代にも受け継がれる歴史的名機を次々生み出し、かつ量産し、クロノグラフの一つの黄金時代を築き上げました。
現在ではバルジューやヴィーナスはETAに、レマニアはブレゲに吸収されましたが、今なお市場に流通するオールドウォッチの信頼性を下支えしているのは、こういった銘クロノグラフメーカーのエボーシュです。
このように世界大戦下で各国に供給されたこれらクロノグラフですが、戦後に需要がなくなったかと言うと、全くそんなことはありません。むしろ戦後、腕クロノグラフは時計の機能として一般化しており、ブライトリングのナビタイマーやオメガのスピードマスター、ロレックスのデイトナにタグホイヤーのオータヴィアにカレラ等、現代も各社を代表するコレクションが勃興していきました。
この当時の各社のクロノグラフは、当時世界を席捲していたモーターレースでの使用が視野に入れられていたことが特徴です。とは言え、オメガのスピードマスターは、宇宙開発に携行された歴史が有名ですね。
さらに1969年には、各社が悲願の自動巻きクロノグラフ開発に成功します。この年はブライトリング・ホイヤー・ハミルトン・ビューレン連合がクロノマチックを、セイコーがCal.6139を、ゼニスがエルプリメロを発表しており、いずれが世界初かは議論がありますが、現代最もポピュラーな自動巻きクロノグラフ技術が確立しました。
クロノグラフの歴史を振り返ると、大戦下の需要でまず喚起され、その後もモーターレースを始めとした過酷な環境下での精密な時間計測によって人々をよく助けた、偉大なる機構ということがわかりますね。
クロノグラフの基本的な使い方
クロノグラフは一見すると複雑ですが、使い方は至ってシンプルです。
タイム計測の基本は「スタート→ストップ→リセット」の3段階で行われます。
なお、操作の仕方は簡単ですが、機械式時計のクロノグラフは数百円で購入できる電池式ストップウォッチとは違い、非常に緻密な設計で作られているため操作方法を誤ると壊してしまうことがあります。
正しい操作方法をご説明しますので是非参考にしてください。
操作① 2時位置のプッシュボタンを押してスタート
一般的にクロノグラフはリューズの上に位置する2時位置のボタンにより計測がスタートします。
しかしながらモデルによって位置が異なる場合があるので、取扱説明書をよくご覧ください。押し心地に関してもモデルによって差があり、簡単に押し込めるモデルもあれば、奥深くまで押し込んで作動するモデルも存在します。
操作②もう一度2時位置のプッシュボタンを押すことでストップ
もう一度2時位置のプッシュボタンを押すことで、計測はストップします。ストップした状態から計測を再開したい場合、もう一度同じボタンを押すことで再開されます。つまり2時位置のボタンは押すことで「スタート」「ストップ」が繰り返されることになります。
操作③4時位置のプッシュボタンを押すことでリセット
計測が完了したら4時位置のプッシュボタンを押すことでリセットされます。
注意しなければいけないのはリセットするときは必ずストップさせてから行うこと。この順序を守らないと、思わぬ不具合や故障に繋がってしまいます。
こちらもモデルによって位置が異なる場合があるので、モデルに合わせた操作を心がけましょう!
クロノグラフの文字盤の見方
クロノグラフは2本から3本の独立した針が動くことにより、時間を計測します。一般的な時計は中央に秒針が配置されていますが、クロノグラフは中央にクロノグラフ針が配置されています。
そのため通常の秒針はインダイヤル(文字盤の中の小さな文字盤)に搭載されることが多いです。
2時位置のプッシュボタンを押すことで、クロノグラフ針がスタート。クロノグラフ秒針は、60秒で文字盤上を1周します(これまた、モデルにもよりますが)。クロノグラフ秒針が60秒を超えると、文字盤に独立して設けられた「積算計」に経過分数と時間数がそれぞれ記録される仕組みです。
具体的には1分が経過すると30分積算計が1目盛り動き、そして1時間が経過すると12時間積算計が1目盛り動く仕組みとなっており、この3つの針の位置を見ることでスタートしてからどの位時間が経過したのかが分かります。
また、一般的なクロノグラフは「30分積算計」と「12時間積算計」が配置されていますが、「60分積算計」と「24時間積算計」が搭載されているモデルも存在します。
タキメーター?テレメーター?クロノグラフのメーターの種類
クロノグラフはベゼルにメーターが付いているモデルが存在します。実はこの「メーターの種類」によってクロノグラフで出来ることに違いがあります。
ここではクロノグラフに備えられた、いくつかのメーターの種類をご紹介しますので、是非ご覧になってください。
①速さを計る「タキメーター」
タキメーターはベゼルに刻まれた目盛り(数字とドット)とクロノグラフ針を用いて平均時速を割り出すことができます。タキメーターを採用するクロノグラフは多く、機能以上にデザインとしての趣が強いです。
ちなみにタキメーターの「タキ(tachy-)」は早さを意味する接頭語です。
計測方法は通常の操作と同様に「スタート・ストップ」で計測します。
例えば車の時速を割り出したい場合、車の走りはじめと同時にクロノグラフをスタートさせ、“1km”走行した地点でストップボタンを押します。その時にクロノグラフ針が指しているタキメーターの目盛りが時速になります。
1km走行した時点で30秒の位置にクロノグラフ針があったとすると、タキメーターのメモリでは120を指していることになります。すなわちこの時の時速は120Km/時です。
ちなみにタキメーターベゼルとクロノグラフ針を使って、「1時間あたりの作業量」を計測することも可能です。
ある作業を開始してから終了するまでを、クロノグラフで計測します。終了時点で30秒だった場合、タキメーターのメモリは120。すなわち1時間あたり、その作業は120回行えることを意味しています。
タキメーターは「オメガ スピードマスター」「タグホイヤー カレラ」「ロレックス デイトナ」など、多くのスポーツモデルに採用されており、クロノグラフの象徴的な機能となっています。
②距離を計る「テレメーター」
テレメーターは主に戦時中に使われていた機能です。大砲の発砲する光を確認してスタートボタンを押し、発砲した音が聞こえたら、ストップをするという手順を踏むことで戦車や軍艦までの距離を測定していました。
ちなみに「テレ(tele-)」は遠距離を意味する接頭語です。
現在でも光と音の速度差を利用して距離を割り出す機能として搭載される時計はございます。
この画像では、赤い円の部分がテレメーターです。
測定時間は最長1分で、20kmまでの測定が可能となっています。例えば雷が光ったと同時にクロノグラフを稼働させ、落雷の音とともに停止させた時、クロノグラフ針が指すテレメーターの位置が落雷地点までの距離ということになります。
なお、テレメーターを単体で搭載していることは珍しく、ほとんどがタキメーターとセットで搭載されています。
【参考モデル:ユンハンス マイスターテレメーター 027/3380.00】
③脈拍数を計る「パルスメーター」
目盛りに基準値として書かれた脈拍数を打った時点の経過時間で割り出す機能をパルスメーターと呼びます。pulseは脈のことですね。
使い方は通常の操作と同様で「スタート・ストップ」で操作します。まず、クロノグラフをスタートさせると同時に脈を測り始めます。時計によって異なる基準回数(15回の時計なら15回)拍動したところでストップを押します。このときに、クロノグラフ針が指している数字が、1分間の脈拍数です。
【参考モデル:パテックフィリップ コンプリケーション 2カウンタークロノグラフ パルスメーター 5170G-001】
④十進法で表記「デシマルメーター」
デシマルメーターはプロフェッショナルなパイロットの為に作られたメーターです。文字盤中央の赤い円状の目盛りで航法の計算を単純化できる1分100DMに換算するのが目的です。ちなみにデジマルとは10進法のことです。
距離は10進法なので、60進法の「秒」ではなく十進法「DM」が使われます。10DMで10海里移動できれば、「速度は100ノット/分」と判りやすく、暗算でも処理しやすくなっていることがポイントです。
【参考モデル:ブライトリング ナビタイマー モンブリラン01 A033G09KBA(AB0130)】
⑤呼吸数を図る アズモメーター
出典:https://www.hautehorlogerie.org/jp/
1分間当たりの呼吸数を計るための目盛りを備えたクロノグラフです。ちなみにathmaは喘息(ぜんそく)のことです。
通常は呼吸15回に要する時間を計測し、クロノグラフ針が止まった所の数字が1分間の呼吸数を示します。
クロノグラフをさらに複雑に!派生型をご紹介
クロノグラフには様々なメーターが備えられていますが、機構自体が一般的なクロノグラフと異なるモデルも存在します。
ここでは特に有名な機構「フライバック・クロノグラフ」「レガッタ・クロノグラフ」「スプリット・セコンドクロノグラフ」「エルプリメロ21」について説明します。
クロノグラフの上位機構①「フライバック・クロノグラフ」
普通のクロノグラフは計測を終え再び時間経過を計測するためには、一度ストップ、リセットをしてからリスタートをする必要がありましたね。
一方、クロノグラフの上位機構「フライバッククロノグラフ」では、クロノグラフの計測を停止させないで、次のタイムを続けて計測できます。
操作① 2時位置のプッシュボタンを押してスタート
通常のクロノグラフと同じく2時位置のプッシュボタンを押すことで計測がスタートします。
操作②4時位置のプッシュボタンでリセット&リスタート
一般的なクロノグラフは計測中に4時位置のプッシュボタンは押してはいけません。
しかし、フライバッククロノグラフは計測中にこの4時位置のプッシュボタンを押すことで全ての計測針がリセットされる機能が備わっています。
ただリセットさせるだけではなく、ゼロに戻った瞬間に再度計測が行われるのが大きな特徴であり魅力。これによって、いっそう精密な計測が可能になったというわけです。
計測中にクロノグラフ針を停止させたい場合は、一般的なそれと同じく2時位置のプッシュボタンを押すことでストップさせます。4時位置のプッシュボタンを押すと針がリセットされます。”計測中”に4時位置のプッシュボタンを押すことでリセット・リスタートが行えること以外は普通のクロノグラフと同じ操作です。
ただしフライバック式クロノグラフは、このリセット・リスタートを繰り返すと負荷がかかってしまうモデルもありますので、いたずらに再計測を繰り返すのはオススメできません。
クロノグラフの上位機構② レガッタ・クロノグラフ
レガッタクロノグラフはロレックスのヨットマスターIIや、ルイヴィトンのタンブールに搭載されている機構です。
ヨットレースのスタートまでのカウントダウンを計測する機能で、最大10分間のカウントダウンをセットすることができます。上の画像のロレックス ヨットマスターIIで見ると、センターのクロノグラフ針とは別に、三角の先端がついたカウントダウン針が見てとれますね。これが計測と同時に数字が減じられていき、カウントダウンの役割を果たします。このことから、「減算計」などと呼ばれることもあります。
なお、ロレックス ヨットマスターIIはシンクロナイゼーション機能が搭載されております。これはカウントダウン計測中にプッシュボタンを押すことで、クロノグラフ秒針を12時に戻し、放すとカウントダウンを再開させる機能のことです。シンクロナイゼーション機能によって、計測が始ってからでも公式シグナルに合わせてカウントダウンの誤差を修正することができるのです。
【参考モデル:ロレックス ヨットマスターII 116681】
クロノグラフの上位機構③ スプリットセコンド・クロノグラフ
スプリットセコンドは2本のクロノグラフ秒針によって複数のラップタイムを計測できるクロノグラフです。
スタートボタンを押すと2本の秒針が同時に動き、スプリットボタンを押すと一本の針のみが止まり、もう一方のクロノグラフ針は計測を続けます。さらにここからスプリットボタンを再び押すと、停止していた一本の針が稼働中のクロノグラフ針に瞬時に追い付き、また2本同時に針が動きます。
二つの針を停止させた状態でリセットすると、例え針の位置がバラバラだったとしても、同時にゼロ位置に戻ります。
2つのラップタイムを計測する事ができますが、非常に複雑なメカニズムで動いているため搭載されるモデルはそう多くありません。
スプリットボタンの位置はモデルによって異なりますが、概ね10時位置やリューズの中心部分に配されていることが多いです。
なお、スプリットセコンドはフランス語でラトラパンテと、日本語で割剣と称されることもあります。
【参考モデル:IWC ポルトギーゼ クロノグラフ ラトラパンテ IW371210】
クロノグラフの上位機構④ 1/100秒計測クロノグラフ(エルプリメロ21)
ゼニス社が開発したエルプリメロ21は1/100秒計測を可能とした超高性能クロノグラフです。
一般的にクロノグラフの針は、1分で1回転となります。しかしながらエルプリメロ21では、なんとクロノグラフ針が文字盤を見事に1秒で1周します!
文字盤のインナーベゼルリングには0 から 100 までの目盛りが書き込まれており、 1/100 秒という緻密なクロノグラフ計測が可能となっているのです。
クロノグラフ針が目まぐるしく回るため、視覚的にも楽しい機構です。
【参考モデル:ゼニス デファイ エルプリメロ 21 95.9001.9004/01.R582】
クロノグラフの上位機構⑤ ワンプッシュクロノグラフ
ワンプッシュクロノグラフはひとつのボタンでスタート、ストップ、リセットが行えるクロノグラフのことを指します。
複数のボタンを使うことがないため、操作性に優れ、時計自体もコンパクトなものが多いです。
復刻モデルにしばしば採用されており、人気の高いクロノグラフです。
【参考モデル:ブランパン ヴィルレ ワンプッシュ クロノグラフ 6185-3646-55B】
3つ目(横)、2つ目(縦) クロノグラフ
クロノグラフには3つ目タイプと2つ目タイプのクロノグラフが存在します。どちらも機能性は同じですが、ムーブメントの設計やデザインに合わせて、どちらかが採用されます。
現在の主流は3つ目ですが、レーシングウォッチを中心に2つ目も人気があり、どちらを選ぶかはクロノグラフを選ぶ際の大きなポイントです。
例えばロレックスの顔として君臨するデイトナ。デイトナは3つ目仕様のクロノグラフで、3時位置に30分積算系、6時位置にスモールセコンド、9時位置に12時間積算系が搭載されています。
デザインのバランスがとりやすく、世界中の時計愛好家から支持を集めています。
こちらはIWCのフラグシップモデル ポルトギーゼ。
ポルトギーゼシリーズは2つ目仕様が採用されているモデルが多く、スポーティーかつラグジュアリーなイメージを与えます。12位置に30分積算系、9時位置にスモールセコンドというシンプルな設計です。
なお、2つ目タイプのクロノグラフは低価格帯〜ミドルクラスのモデルに多く見受けられ、歴史的クロノグラフムーブメント「バルジュー7750」をベースとしたモデルが多くを占めます。
シンプルかつ省スペースな設計のバルジュー7750はメンテナンス性に長けており、その汎用性の高さは現代の時計技師からも高い評価を得ています。
圧倒的なカスタマイズ性を持つことから40年以上も現役で使い続けられています。
構造がシンプルかつ分かりやすい設計であることからオーバーホール料金や修理費が自社製造ムーブメントよりも安く、コスパ重視の方に人気です。
クロノグラフの魅力と注意点
クロノグラフの人気の理由は機能よりもメカニカルなデザインによる部分が大きいです。見た目のカッコよさを重視して購入に至る方は多く、各メーカーの人気モデルを見るとクロノグラフを搭載しているモデルがとても多いです。
機械のみで時間や距離を計測できるクロノグラフ機構にはロマンがあり、文字盤一面に針が展開される美しさは他の時計では味わうことが出来ない魅力がありますよね。
ただし、クロノグラフを購入する際に知っておきたいのが維持コストです。
普通の3針モデルと比べてクロノグラフはとても複雑な機構であるため、オーバーホールや修理にかかる金額が普通の3針モデルより割高になります。平均して1.5倍ほどメンテナンス代が高くなる計算です。
こういった維持コストを少しでも抑えるために知っておきたいのが、「正しい取り扱い方法」です!
精密なクロノグラフは振動や衝撃に弱い個体も多く、針ズレやプッシュボタンが外れてしまうといったトラブルは多いもの。そのため激しい運動の際に身に着けたり、落下に気を付けることはきわめて大切です。
また、クロノグラフ針を秒針がわりとして稼働させることも、パーツ摩耗を促進します。クロノグラフ針は、使わない時はゼロ位置でストップさせておきましょう(ただしパテックフィリップのクロノグラフは、秒針がわりの稼働にも耐えうるのだとか!さすがパテックフィリップですね)。
さらに、定期的なオーバーホールも重要です!調子が悪いのを放っておいて、修理代が思わぬ高額になってしまったという声をよく頂きます。定期的なメンテナンスによって不具合や故障を未然に防ぎ、末永く大切に愛用していきたいですね!
有名ブランドの人気クロノグラフ18選
高級時計ブランドはどのブランドもクロノグラフモデルの開発に力を入れており、時計ファンにとって憧れのモデルが数多く存在します。
この記事の締めくくりとして、有名ブランドの人気クロノグラフをご覧ください。
ロレックス コスモグラフ デイトナ 116500LN
素材:ステンレススティール×セラミック
文字盤:ホワイトまたはブラック
ケースサイズ:直径40.0mm
全重量:142g
ムーブメント:Cal.4130
パワーリザーブ:約72時間
防水性:100m
高級時計に中でも憧れの一本として君臨する”デイトナ”。
そんな現行デイトナ 116500LNは2016年に発表され、以降ロレックスの顔として圧倒的な人気を博しています。
ベゼルには傷のつきにくいセラクロム素材が使用されており、タキメーターの高いデザイン性も大きな魅力です。
なお、ブラック文字盤も高い人気を誇ります。
高級時計のクロノグラフとしては最も有名なモデルといえるでしょう。
オメガ スピードマスター プロフェッショナル ムーンウォッチ 310.30.42.50.01.001
素材:ステンレススティール
文字盤:ブラック
ケースサイズ:直径42.0mm
全重量:135g
ムーブメント:Cal.3861
パワーリザーブ:約50時間
防水性:50m
ロレックスのデイトナと並んで「クロノグラフ」の外せない主人公が、オメガ スピードマスター プロフェッショナルです。
「ムーンウォッチ」の称号からも察せられるように、NASAの公式装備品として月面着陸を始めとした宇宙開発ミッションに携行された歴史を有します。実際、ミッション下でスピードマスターの堅牢かつ信頼性高いクロノグラフが、宇宙飛行士らをよく助けたと言われています。
これまたクロノグラフの永世定番となっております。
IWC ポルトギーゼ クロノグラフ 青針 IW371605
素材:ステンレススティール
文字盤:シルバー
ケースサイズ:直径41mm
全重量:88g
ムーブメント:Cal.69355
パワーリザーブ:約46時間
防水性:30m
デイトナやスピードマスターとはまた違ったクラシカルな雰囲気を湛えるのが、IWCのポルトギーゼ クロノグラフです。1930年代にポルトガルの時計商が、IWCに発注した事がポルトギーゼの始まりと言われており、IWCを代表するシリーズとなっています。
こちらは通称「青針」と呼ばれ、スッキリとしたシルバーの文字盤にブルーの針とアラビアインデックスが綺麗なモデルです。
なお、金針タイプも、同様に人気を誇ります。
アウターにタキメーターベゼルを持たない分、スッキリとシンプルに着けこなせるクロノグラフです。
ブライトリング ナビタイマー ヘリテージ A113B27NP(A13324)
素材:ステンレススティール
文字盤:ブラック
ケースサイズ:直径42.0mm
全重量:148g
ムーブメント:cal.ブライトリング13
パワーリザーブ:約42時間
防水性:30m
1952年、世界初の航空計算尺付き腕時計として誕生した「ナビタイマー」。ブライトリング屈指の名作として親しまれています。
当時のナビタイマーのDNAを引き継いだヘリテージコレクションですが、どこか新しさをも感じさせますね。
フライトコンピューターが搭載されているため、数あるクロノグラフの中でも計器然とした顔立ちが印象的です。
ウブロ ビッグバン ウニコ チタニウム セラミック 411.NM.1170.RX
素材:チタン×セラミック
文字盤:スケルトン
ケースサイズ:直径45.0mm
全重量:136g
ムーブメント:Cal.HUB1242
パワーリザーブ:約72時間
防水性:100m
異素材との組み合わせや多層構造のケースが、ダイナミックながらも美しいウブロ ビッグバン。
様々なバリエーションが存在しますが、こちらはチタンケースとブラックセラミックベゼルのコンビネーションが美しい”411.NM.1170.RX”です。
スケルトンのダイアルから、完全自社製ムーブメント“ウニコ”(Cal.HUB1242)の動きを楽しむことができます。ちなみにウニコは、クロノグラフ機構をあえて文字盤側に設置することで、「見て楽しい機構」をも実現しています。
デザインとしても非常に秀逸ですので、迷ったらぜひ思い切ってビッグバンをご購入になってはいかがでしょうか。
タグホイヤー カレラ キャリバーホイヤー01 CAR2A1Z.FT6044
素材:ステンレススティール×セラミック
文字盤:スケルトン
ケースサイズ:直径45.0mm
全重量:151g
ムーブメント:cal.ホイヤー01
パワーリザーブ:約50時間
防水性:100m
スポーツ界との結びつきが強いタグホイヤーは高級時計界で最もクロノグラフに力を入れているブランドといっても過言ではありません。
そして、数あるクロノグラフの中で一番人気がこの”CAR2A1Z.FT6044″です。
ケースやベゼルにはブラックチタニウムカーバイドコーティングを施したステンレススティールを採用しており、スケルトンの文字盤やモジュール構造のケースなど、既存のカレラとは異なる雰囲気をもっています。
タグホイヤー カレラ キャリバー16 クロノグラフ CBK2110.FC6266
素材:ステンレススティール
文字盤:ブラック
ケースサイズ:直径41.0mm
全重量:121g
ムーブメント:キャリバー16
パワーリザーブ:約42時間
防水性:100m
モーターレースからインスピレーションを受けて誕生したタグホイヤーの“カレラ”。こちらは高級感のあるシンプルなブラック一色に3カウンタークロノグラフで、スタイリッシュなデザインが印象的なモデルです。シンプルで使いやすく、オンオフ問わず使用することができます。
搭載するムーブメント「キャリバー16」はETA7750(前述したバルジュー7750)がベースになっているため、信頼性も高くメンテナンスが受けやすいこともまた魅力です。
グランドセイコー スプリングドライブ クロノグラフ SBGB003
素材:ステンレススティール
文字盤:ブラック
ケースサイズ:直径44.0mm
全重量:187g
ムーブメント:スプリングドライブ 9R84
パワーリザーブ:約72時間
防水性:100m
グランドセイコーが世界に誇るスプリングドライブ機構を搭載した精度の高いクロノグラフです。
スプリングドライブとは、機械式時計のようにゼンマイを駆動力としながらも、クォーツによって精度を採る独自機構です。そのため機械式時計のような力強いトルクを保ちながらも、高い正確性を実現している優れモノとなっております。プッシュボタンの場面が広く、高い操作性を実現しているのも特筆すべき点ですね。
さらにこちらのモデルは、サファイアガラス製のベゼルリングが目を引きます。
インダイアルもまた印象的で、2つの積算計を3時側に寄せられました。
シャネル J12 クロノグラフ 黒セラミック H0940
素材:セラミック
文字盤:ブラック
ケースサイズ:直径41.0mm
全重量:175g
ムーブメント:COSC認定自動巻き
パワーリザーブ:約42時間
防水性:200m
シャネルは女性向けのファッションブランドというイメージがありますが、メンズ時計にも力を入れており、J12は世界中の男性に愛用されています。
J12はケースとブレスレットにキズの付き難いセラミックを採用するという斬新な作りが魅力的で、瞬く間に多くのファンの心をとらえ世界中で爆発的ヒットを収めました。
このH0940はクロノグラフを搭載していることからダイバーズウォッチライクでスポーティに見えますが、スーツなどのオンタイムにも合わせ易いと思います。
パネライ ルミノールクロノグラフ PAM00072
素材:ステンレススティール×チタン
文字盤:ブラック
ケースサイズ:直径40.0mm
全重量:158g
ムーブメント:Cal.OP IV
パワーリザーブ:約50時間
防水性:200m
パネライのクロノグラフモデルは数こそ多くはありませんが、そのいずれも高い人気を誇ります。
特にゼニス社のムーブメント「エルプリメロ」搭載の希少なルミノールクロノグラフ PAM00072は時計愛好家からの評価が高いです。チタンとステンレスのリンクで組み合わされたブレスレットは、軽めに仕上がっており着け心地も抜群です。
初期のエルプリメロ搭載モデルは稀少性が高く、市場に出回ることが珍しいため、入荷即完売となってしまうことがほとんどです。これに伴い実勢相場も上昇しているにもかかわらずお問合せは後を絶たず、実力の高さが垣間見えます。
ブレゲ トランスアトランティック タイプXX 3820BA/N2/9W6
素材:イエローゴールド
文字盤:ブラック
ケースサイズ:直径39.0mm
全重量:117g
ムーブメント:自動巻き 582Q
パワーリザーブ:約45時間
防水性:100m
フランス海軍からの要請で航空隊用に開発されたパイロットウォッチがルーツのモデルです。
ブラックフェイスとイエローゴールドの組み合わせが、落ち着いた大人の印象ですね。
なお、フライバッククロノグラフを搭載しており、デザインだけではない本格派の時計でもあります。
ゼニス エルプリメロ クロノマスターオープン 1969 03.2520.4061/69.M2280
素材:ステンレススティール
文字盤:シルバー
ケースサイズ:直径45.0mm
全重量:176g
ムーブメント:エル・プリメロ 4061
パワーリザーブ:約50時間
防水性:100m
ゼニスのエルプリメロもまた、多くの名門時計メーカーに採用されてきましたが、やはりゼニス社のウォッチに搭載されるとカッコよさもひとしおですね。
こちらはエルプリメロが誕生した1969年当時のモデルからデザインの範を取りつつも、人気のオープンダイアルによってモダンな印象が組み合わされました。
文字盤にはシルバーを基調としながら、ブルーとグレーのトリコロールとなったインダイアルの組み合わせがオシャレ!多くの時計ファンに愛されている不朽の名作です。
ブルガリ ディアゴノ カリブロ303 DG42C14SWGSDCH
素材:ステンレススティール×ホワイトゴールド
文字盤:シルバー×グレー
ケースサイズ:直径42.0mm
全重量:131g
ムーブメント:Cal.BVL303
パワーリザーブ:約48時間
防水性:100m
ブルガリの人気クロノグラフモデル「ディアゴノ」。この時計はディアゴノ誕生20周年を記念して発売されたモデルであり、スケルトンバックからはフレデリック・ピゲ製クロノをベースにした美しいムーブメントCal.BVL303をご覧頂けます。
一見ステンレスケースに見えますが、ホワイトゴールド製のベゼルを備えたスペシャルモデルとなっております。
ブルガリ オクト オリジナーレ ウォッチ BGO41BBSVDCH/B
素材:ステンレススティール(DLCコーティング)
文字盤:ブラック
ケースサイズ:直径41.0mm
全重量:118g
ムーブメント:Cal.BVL328
パワーリザーブ:約50時間
防水性:50m
アヴァンギャルドな八角形モチーフが基礎となりながら、ブルガリらしい洗練性も両立しているのがオクトです。
こちらはDLCコーティングによって、オールブラックを実現していることが大きな特徴です。
オクトは非常に作りこまれていることに加えて薄型で、快適な装着感を提供してくれることでしょう。
フランクミュラー ヴァンガード ヨッティング クロノグラフ V45CCDT YACHTING 5NBL
素材:ピンクゴールド
文字盤:ブルー
ケースサイズ:縦 53.7mm × 横 44.0mmbr /> 全重量:170g
ムーブメント:自動巻き/Self-Winding
パワーリザーブ:約42時間
防水性:日常生活防水
フランクミュラーとイタリアン シーグループとの独占パートナーシップに基づいて開発された“ヴァンガード ヨッティング”シリーズ。このモデルはフランクミュラーでは珍しいクロノグラフモデルです。
文字盤には羅針図が描かれており、大型クルーザーで航海する世界観をイメージしていることがわかりますね。
大振りのプッシュボタンもデザインの一環となっており、人となかなか被らないクロノグラフにうってつけでしょう。
パテックフィリップ ノーチラス クロノグラフ 5980/1A-001
素材:ステンレススティール
文字盤:ブラックブルー
ケースサイズ:直径40.5mm
全重量:158g
ムーブメント:Cal.CH28-520C
パワーリザーブ:約72時間
防水性:120m
ワンランク上のクロノグラフが欲しい!そんな方は、パテックフィリップのノーチラスが断然オススメです!
こちらは、ノーチラス誕生30周年を記念して発表されたパテックフィリップ史上初のスポーツクロノグラフです。非常に希少性が高く現在も定価以上の価格で販売されています。完全自社製ムーブメント“Cal.CH28-520C”を搭載し、6時位置には60分計と12時間計を同軸で統合したデュアル・サブダイヤルが備えられています。
精度、視認性、耐久性、装着感などあらゆる点で実用時計の最高峰を追求したパテックフィリップの最高級ウォッチです。
ヴァシュロンコンスタンタン オーヴァーシーズ クロノグラフ 5500V/110A-B148
素材:ステンレススティール
文字盤:ブルー
ケースサイズ:直径42.5mm
全重量:187g
ムーブメント:キャリバー5200
パワーリザーブ:約50時間
防水性:150m
1996年に登場し、ヴァシュロン・コンスタンタンのスポーツラインとして人気の“オーヴァーシーズ”。
マルタ十字を模したベゼルや堅牢性の高いブレスレットなど、ヴァシュロンの独創性溢れるモデルとなっております。“OVERSEAS”のモデル名の通り、大海原を駆け上がるような雄大さを感じさせるクロノグラフですね。
なお、シルバー文字盤やブラック文字盤もラインナップされておりますが、ブルーが一番人気となります。
ランゲ&ゾーネ 1815クロノグラフ 402.032/LS4024AD
素材:ローズゴールド
文字盤:シルバー
ケースサイズ:直径39.5mm
全重量:103g
ムーブメント:手巻き cal.L951.50
パワーリザーブ:約60時間
防水性:30m
雲上時計ブランド「ランゲ&ゾーネ」も、ワンランク上のクロノグラフとして語るのに欠かせません。
このモデルは創業者であるアドルフ・ランゲの生誕した1815年をモデル名に冠し、ダトグラフの流れを汲むフライバック機能つきの2カウンタークロノグラフを搭載したランゲ&ゾーネを代表するコレクションの一つ。パーツの一つ一つが最高級の仕上がりとなっています。
ケースバックからは息を呑むほど美しいクロノグラフムーブメントをご覧いただけます。
クロノグラフを単なるストップウォッチ機能と思われている方もいるかもしれませんが、恐らくこのムーブメントを見ればそのイメージは覆ることでしょう。
まとめ
クロノグラフについて、ご紹介いたしました!
高級腕時計の世界では、多くの人気モデルにクロノグラフが採用されています。そのため、クロノグラフがどんな機構でどのような使い方をするのかを知っておくと、より理解が深まり、この機構が好きになれますよね。
歴史的にも、機構としても奥深いクロノグラフ。ぜひ一本所有してみませんか?
当記事の監修者
廣島浩二(ひろしま こうじ)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチ コーディネーター
一級時計修理技能士 平成31年取得
高級時計専門店GINZA RASIN 販売部門 ロジスティクス事業部 メンテナンス課 主任
1981年生まれ 岡山県出身 20歳から地方百貨店で時計・宝飾サロンで勤務し高級時計の販売に携わる。 25歳の時時計修理技師を目指し上京。専門学校で基礎技術を学び卒業後修理の道に進む。 2012年9月より更なる技術の向上を求めGINZA RASINに入社する。時計業界歴19年