CASE
日本生命保険相互会社様
保全業務全自動化を目指し、共同機能検証を実施
~「人や紙に頼らない事務処理体制の構築」目指す~
生命保険会社の保全業務は、多種多様な書類の取り扱いが必要であり、長らく全自動化は困難であると考えられてきました。日本生命様ではこれまで、ペーパレス化を推進し、一部の保全業務の自動化に着手するなどして抜本的な業務改革に取り組んできました。しかし、今後も一定残る紙による手続きをいかに正確に、そして迅速かつ効率的に処理できるかが課題となっており、保全業務の委託先であるプリマジェストと共に改善検討が進められてきました。一方で、日本の労働人口減少が現実的になる中、先般の新型コロナウイルスによるパンデミックを契機に、より変化に強い業務運営体制の重要性が顕在化したことを踏まえ、今回、日本生命様とプリマジェストは、「人や紙に頼らない事務処理体制の構築」を目指した機能検証(PoC)を共同で実施しました。
背景・課題
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01
労働人口減少への対応
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02
保全業務の自動化
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03
サステナブルな事務体制の構築
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04
人からテクノロジーに置き換えられる作業を検証
サステナブルな事務体制を構築
労働人口減少への対応、保全業務の自動化で保障責任を全うする
日本生命保険相互会社
契約管理部 調査役
門馬 友氏
──今回のPoC実施の経緯は?
新たなテクノロジーの導入やパンデミックへの対応などに加え、われわれが長期的なビジョンを考える上で、労働人口の減少という課題が顕在化していました。ただ、われわれは千数百万人のお客さまからご契約を頂いており、その保有契約件数の動きは人口減少のトレンドに必ずしも連動しているわけではなく、むしろ直近では増えている向きもあります。当然、保全業務も増加していくことが予想される一方で、われわれの体制はこれからもお客さまをしっかり守り、保障責任を全うしていかなければいけないことは言うまでもありません。つまり今後、仮に人員が減少したとしても保全事務をしっかり継続できるサステナブルな体制を構築することが極めて重要となります。そうした中で、現在、人が担っている業務をいかに自動化していくかについて検証したいとプリマジェストさまにご相談させていただき、PoCを始めることになりました。
──これまでの保全業務における課題は?
当社はこれまで、従来通りの紙による手続きやデジタルによる手続きなど、お客さまが望む形でどんな手続きでもできるようにすることを理想の形と考え、その実現に向けて取り組んできました。その中で、まだデジタル化が難しく紙による手続きが一定程度残る作業に対して、どうやってその紙の処理を迅速かつ正確に行っていくかということを課題として認識していました。また、保全業務には多種多様な手続きがある中、手続きごとにシステムの構築やチームの人員配置を行ってきたことで縦割り化が進み、例えば各業務のピーク時や繁閑のタイミングをチーム間で補い合ったりすることが困難になるなどマルチスキル化が遅れていました。
──課題に対する現在までの取り組みは?
保全業務のさまざまな課題に対して、当社では外部委託、つまりBPOの検討を行い、一部の業務をプリマジェストさまに委託をさせていただくことになりました。その結果、迅速・正確な帳票の処理については、プリマジェストさまのイメージワークフローというシステムが非常に有用であることが分かりました。また、マルチスキル化の課題についても、プリマジェストさまのBPOでは、誰がどの業務でも担うことができる仕組みが構築されており、業務ごとの繁閑が吸収できるようになりました。加えて、災害発生時の業務継続性についても、プリマジェストさまのBPOを導入することで重要業務の継続性が確保されるなど、BCPという観点でも高度化が進んだと思っています。
導入効果
人からテクノロジーに置き換えられる作業を検証
概ね期待通りの結果に、今後に向けて手応え
──今回のPoCのポイントについて。
今回のPoCでは、「人が行う作業をテクノロジーに置き換えられるか」ということがポイントになります。プリマジェストさまに委託するBPOの業務にも人による作業とすでに自動化している業務とがありますので、まずは現時点で人が行う作業を細かく洗い出し、それらの作業の自動化の実現可能性を一つ一つ検証しています。
──具体的な実施内容とその結果について。
当社の保全手続きについて、受付・帳票識別・データエントリー・内容点検といった一連の工程の中で実際に人が手作業で行っているものを特定し、それらがテクノロジーで置き換え可能かどうか、また、置き換えられるとしたらどのくらいの正答率・読み取り率になるかを検証しています。PoCは現在、具体的な実現検証フェーズに入っていて、概ね期待通りの結果が出ているとプリマジェストさまから聞いており、今後に向けて強い手応えを感じています。
──PoCで苦労した点は?
人が行っていた作業をテクノロジーに置き換えた際にどの程度品質が担保できるか、という点があります。例えばAI-OCRで読み取った帳票を果たして人のチェックなしにそのまま後続の工程に流してしまって大丈夫か、という問題があります。もちろん人がチェックしてもミスは起こりますが、仮に今まで人がチェックして1000件に1件のミスだったものがAI-OCRで100件に1件のミスとなった際には、それが許容できるかというと難しい点もあると思います。割り切るという考え方もありますし、いくつかの技術を組み合わせるといった他の方法を模索することも考えられますし、今まさに検討を進めているところですが、いかに品質を担保しながら自動化を進めていくかが重要であると考えています。
Reason
プリマジェスト選定理由
「一緒に作り上げ、一緒に歩みを進める」存在
今まで申し上げてきたような自動化の取り組みに対する考え方は、当然、われわれの社内で一から十まで築き上げたものではなく、プリマジェストさまにご示唆いただいたり、ご提言いただいたりといったことが多々ありました。どうしてもわれわれにとっては自社で行う現行の事務が全てであり、それを是と考えがちですが、さまざまな知見や他社での導入実績、また実際に自社開発のテクノロジーもお持ちになっているプリマジェストさまに忌憚のない意見や提案を頂けるのは非常にありがたいと思っています。とりわけ、システム構築やBPOにしても、「業務が始まったらそれで終わり」ではなく、日々の業務の中で気付いた点をご指摘いただいたり、見える化された業務データに基づいて説得力ある提案をしていただいたりしてもらっていることは、大きな助けとなっています。当社と一緒に業務改善の仕組みを作り上げ、一緒に取り組みの歩みを進めてもらっている存在だと感じており、今後も色々とご意見やご提案を頂ければと考えています。
将来に向けて
自動化ソリューションを順次導入
検証作業が業務プロセスの改革に
──PoCで得た気付きは?
検証作業を進める中で、仮にテクノロジーへの置き換えが難しければ現状では人の作業で続行するという結論になりますが、以前から続けてきたその作業がそもそも本当に必要なのかと疑問に思うことがありました。もちろんわれわれの先輩たちが現在まで続く事務を築いてきており、当然一つ一つの業務に意味がありますが、今日的な観点で業務を見直す余地はあると感じています。顧客利便性や効率性の向上のために自動化を進めていくと同時に、無駄な作業はないかの見直しをセットで行うことによって、業務プロセスの改革にもつながっていると感じています。
──今後の自動化の展望について。
当社としましては、今年度から新たな中期経営計画が始まり、また、2035年に向けた長期ビジョンを見据えてさまざまな領域で取り組みを進めているところです。保全業務につきましては、サステナブルな事務体制の構築が大きなテーマになっていますし、お客さま接点という面では、引き続きお客さまが望む形で手続きができる体制に向けて取り組みを進めています。今後、PoCで検証した各業務で自動化のソリューションを順次取り入れていき、自動化率の向上を進めていきたいと思っています。
──今後の両社の連携について。
今回、PoCを行ったサステナブルな事務体制の構築やBCPの高度化においては引き続きプリマジェストさまにご協力をお願いしたいですし、それ以外でもプリマジェストさまの知見をお借りしたい領域は多々あると思っており、幅広く当社の業務改善についてご相談、ご支援いただければと考えています。また反対に、われわれとの連携でプリマジェストさまに何かプラスになるようなことがあれば、ぜひこちらからもご提案させていただき、お互いうまく高め合っていければと思っております。
明治22年7月、「有限責任日本生命保険会社」の社名で、日本で3番目の生命保険会社として発足。相互扶助の精神と「お客様からの揺るぎない信頼をいただくために」という方針のもと、長期的な視野に立ち、堅実で健全な経営に努める。
ホームページ:https://www.nissay.co.jp/