県内経済動向調査結果(平成20年6月分)
コンテンツ番号:3266
更新日:
平成20年8月6日
産業経済政策課
概況
県内経済は、原油・原材料価格高騰の影響が拡大し収益性が一層悪化していることや、引き続き消費が弱含んでいることから、全体としても弱めの動きとなっている。
- 製造業 :生産の落ち込みや収益性の悪化により、弱めの動きである
- 建設業 :依然として厳しい状況が続いている
- 小売業 :買い控えが見受けられ、弱含んでいる
- サービス業 :運送業の価格転嫁進まず、利益圧迫
全業種のDI値を前月と比較すると、3か月前との業況比較は▲13.8から▲16.3、現在の資金繰りは▲20.5から▲23.7、3か月先の業況見通しは▲17.8から▲20.3となっている。
製造業では、生産額、受注額はそれぞれ前年同月比2.8%減、同0.6%減となった。3か月先の業況見通しDIは▲9.5から▲14.1となった。主力の電気機械は、コンデンサ等を中心に生産に落ち込みが見られる。携帯向け部品でも生産が落ち込んでいる。木材・木製品では、住宅着工数減の影響を受け、合板、一般製材、集成材の各品目で依然として業況の悪化が続いている。輸送機械は海外市場の減速から、生産額が4ヵ月連続でマイナスとなり引き続き弱めの生産活動が続いている。精密機械は、光学部品や医療機器関連を中心に力強い生産活動が続いている。原油・原材料価格の高騰により収益性が悪化し、資金繰りの厳しい企業が多く、全体としては弱めの動きである。
建設業では、受注額、完工高はそれぞれ前年同月比37.3%減、同18.2%減となった。3か月先の業況見通しDIは▲56.3から▲50.0となった。公共工事、民間工事の減少による競争の激化、原油・原材料の高騰などが、企業の収益を圧迫し資金繰りをいっそう厳しくさせ、業界全体として依然として厳しい状況となっている。
小売業では、売上高は前年同月比で1.7%増、3カ月先の業況見通しDIは▲35.7と変わらない。身回品では、春から好調だった園芸用品に代わりレジャー関連商品が好調であり、堅調に推移している。家電品では、エアコンや冷蔵庫などの白物家電や薄型テレビが好調に売上を伸ばしており、全体としても堅調に推移している。衣料品では、買い控え傾向が強く低調な動きが続いている。飲食料品では、売上は底堅いが、仕入れ価格が上昇し、資金繰りを厳しくさせている。全体として買い控え傾向が見られ、嗜好品で売上が減少している。
サービス業では、売上高は前年同月比5.9%減、3カ月先の業況見通しDIは0.0から▲4.2となった。ほとんどの旅館・ホテルで、すべての部門で客足が減少し、厳しい状況が続いている。地震の風評被害を受けた企業があり、売上を減少させている。運送業では、原油高の影響を受け、運賃への転嫁ができておらず厳しい状況が続く。ソフトウェア関連やDTPは引き続き底堅く推移している。
製造業の動向
食料品
「引き続き弱めの動き」
生産額は前年同月比2.3%減。3か月先の業況見通しDIは▲35.7から▲14.3となった。
品目別の動向を見ると、惣菜類、菓子類、調味料類で前年同月比減となった。冷凍食品は、中国産の影響で業界全体として冷え込んでいることもあり、引き続き厳しい状況が続いている。魚類加工品において、全国一斉休漁の影響は今のところ見受けられない。
酒造では、一部企業で前年を上回っているものの、嗜好品の買い控え傾向が顕著に見られ、全体としては引き続き低迷基調である。米の価格が上がっていないこともあり、原油高などの影響を価格転嫁できていない企業が多い。
全体としては、引き続き各企業ともに、資材や原材料・燃料の高騰が収益を圧迫し、営業努力だけでは補いきれない状況である。
繊維・衣服
「例年並みの生産額だが、収益を圧迫」
生産額、受注額はそれぞれ前年同月比3.6%増、同3.2%増。3か月先の業況見通しDIは▲42.9から▲28.6となった。
生産額では、前年同月比増であるが、原油高原材料高の影響により、利益を出せない企業があり、全体としても厳しい状況の企業が多い。
婦人服・紳士服では、秋冬物の生産に入っているが消費者の買い控え傾向は強く、受注量は減少している。それ以外の品目では、底堅い生産活動が続いている。
木材・木製品
「依然厳しい状況が続く」
生産額、受注額はそれぞれ前年同月比31.3%減、同21.2%減。3か月先の業況見通しDIは36.4から0.0となった。
例年は繁忙期となる時期であるが、改正建築基準法の影響や県内経済の減速から新設住宅着工戸数の減少が続いており、その影響を受けて受注が減少している。生産額を前年同月比増とした企業はほとんどなく、合板、一般製材、集成材の各品目で厳しい状況となっている。
原油・原材料高については、木材乾燥に使う重油代、接着剤、運搬費など多方面で影響を与えている。運送会社からの値上げ交渉は、ほとんどの企業で来ていない。同業他社倒産の影響を心配している企業も多く、今後の先行きは不透明である。
鉄鋼・金属製品
「生産活動は堅調、原材料高騰が収益を圧迫」
生産額、受注額はそれぞれ前年同月比3.5%増、同2.4%増。3か月先の業況見通しDIは▲18.2から▲36.4となった。
品目別に見ると、電気機械関連や産業機械部品の鋳鋼などで好調な生産活動が続いている。
建具関係では、県外から受注を得ておりやや回復の兆しが見え始めた。しかし、今後の見通しはいまだ不透明である。
一部に低調な企業がもあるものの、好調に生産活動を続けている企業もあり、全体としては堅調である。
一方で、原材料価格は鉄などで日々高騰が続いている。受注時に鋼材価格で契約し、その後の価格上昇分は受注企業が吸収するため厳しい経営を強いられている。また、価格転嫁できていない企業もいまだ多い。
一般機械
「受注を確保でき、好調な生産活動」
生産額、受注額はそれぞれ前年同月比0.8%減、同8.2%減。3か月先の業況見通しDIは14.3から0.0となった。
プラント設備や機械部品関連のほとんどの企業で今後の受注見通しが立っており、好調を維持している。一方で、輸送機械関連では、生産が滞っている大口物件を他の取引でカバーするなど、堅調な生産活動が見受けられる。全体としては、生産額において前年同月比減となっているものの、各企業ともに受注を確保しており好調な生産活動である。
一方で、鉄骨など原材料の値上がりのペースが速いうえ値上げ幅も大きく、資金繰りを悪化させている。価格転嫁できるものについてはしているが、それでも収益性の悪化は回避できていない。
電気機械
「生産の落ち込みが続く」
生産額、受注額は、それぞれ前年同月比0.7%減、同0.5%減。3か月先の業況見通しDIは0.0から▲5.0となった。
アメリカの景気減速やオリンピック需要が伸びなかったことを背景とした需要の減少から、主力のコンデンサをはじめ、高周波製品や携帯電話向け部品で生産が落ち込んでいる。通信部品では、今後の受注に見通しがたち、堅調な生産活動を続けている企業がある。通信部品全体としても例年並みの生産額であり、底堅い。半導体でも、一部に好調な企業があり、底堅い生産活動である。プリンタ部品では受注が好調であり、今後の受注増加が見込まれている。しかし、全体としては、5ヵ月連続で前年同月比減となった。
原材料価格の高騰については、一部に価格転嫁できていない企業があり、収益性を悪化させている。
輸送機械
「弱めの生産活動が続く」
生産額、受注額はそれぞれ前年同月比7.1%減、同8.0%減。3か月先の業況見通しDIは16.7から0.0となった。
精密部品では、大口の受注により好調な生産活動を続けている企業もあるが、北米の景気減速による市場の停滞の影響を受けている企業がほとんどである。
全体としては、生産額が4か月連続でマイナスとなっており、弱めの生産活動が続いている。さらに、原材料価格の高騰が顕著であり、収益性を圧迫して厳しい状況が続いている。
精密機械
「光学部品、医療機器関連で好調な生産活動が続く」
生産額、受注額はそれぞれ前年同月比7.1%増、同21.3%増。3か月先の業況見通しDIは▲50.0から▲37.5となった。
光学部品では、デジタルカメラ関連を中心に引き続き好調に推移しているほか、医療機器関連でも好調に生産活動を続けている。また、携帯電話部品や輸送機械部品も受注確保できており、堅調な生産活動が続いている。計量機器関連では、例年並みの生産が続いており、在庫を抱えないように生産調整を行っている。
一方で、生産額や受注額で前年を上回っている企業でも、原材料の価格高騰を価格転嫁ができていないことが多い。収益性の確保が困難である企業が多く、資金繰りが悪化している。
建設業の動向
「業界全体で厳しい状況が続いている」
受注額、完工高はそれぞれ前年同月比37.3%減、同18.2%減。3か月先の業況見通しDIは▲56.3から▲50.0となった。
引き続き公共工事発注件数が減少しており、ほとんどの企業で受注件数が少なく、過当競争が続いている。民需主導に切り替える企業が多いが、民間工事受注件数も少なく、厳しい状況が続いている。
資金繰りについては、原材料や燃料の高騰の影響が引き続き大きく、利益を圧迫している。
小売業の動向
衣料品
「引き続き低調に推移」
売上高は前年同月比2.8%増。3か月先の業況見通しDIは▲83.3から▲66.7となっている。
一部企業のセールにより全体として売上高前年同月比増となったが、その要因を除くと前年同月比11.9%減であり、例年を下回り低調に推移している。紳士服、呉服ともに安い商品が売れる状況にあるほか、浴衣などの季節商品も振るわないなど、消費者マインドの冷え込みによる買い控え傾向が引き続き窺える。
身回品
「先月に引き続き堅調に推移」
売上高は前年同月比5.0%増。3か月先の業況見通しDIは▲66.7から▲33.3となった。
ホームセンターでは、春から先月まで好調だった園芸用品に一部企業で落ち着きが見られる。園芸用品に代わり、レジャー関係の売れ行きが好調であり、全体としては引き続き堅調に推移している。消費マインドが低下するなか、今後の買い控えが懸念される。
原油高・原材料高による仕入れ価格の高騰を、製品価格に転嫁できていない製品もあり、資金繰りを悪化させている。また、地震の影響を受けて客足が鈍くなった企業もある。
飲食料品
「売上額は増加しているものの、利益圧迫」
売上高は前年同月比2.0%増。3か月先の業況見通しDIは▲27.3から▲54.5となっている。
いくつかの企業が好調なことから売上高は前年同月比増となっているものの、その要因を除くと前年同月比1.8%減となりほぼ例年並みである。好調な企業は営業努力により、売上を確保している。一部商品の値上げやガソリン価格の高騰の影響で客足の減少が見られるものの、売上自体は底堅い。来店回数を減らし、安売りの日にまとめ買いする傾向や、安いプライベートブランドへのシフトが見られる。
資金繰りの面では、小麦製品や乳製品はじめとする食料品の仕入れ価格が上昇し、企業の利益を圧迫している。
家電品
「白物家電・薄型テレビを中心に堅調に推移」
売上高は前年同月比1.1%減。3か月先の業況見通しDIは40.0と変わらなかった。
全体として売上高が前年同月比減となっているが、一部の企業でセール期間が昨年とずれたことがその理由であり、それを除くと前年同月比15%増である。
品目別では、パソコンや携帯電話、DVDレコーダー(BDを含む)では低調な売上が続いてる。一方で薄型テレビが引き続き堅調なほか、冷蔵庫やエアコンといった白物家電も好調に売上を伸ばしている。
生活必需品の高騰やガソリン価格の高騰による買い控えの傾向は今のところ見られないが、消費者のエコ意識は高く、省エネタイプの商品が売上を伸ばしている。
今後、オリンピック終了後に消費が落ち込むことが懸念される。
サービス業の動向
旅館・ホテル
「依然として厳しい状況が続く」
売上高は前年同月比10.2%減。3か月先の業況見通しDIは、0.0から▲7.1となった。
ほとんどの企業で宿泊、婚礼、宴会のすべての部門で売上が伸び悩み、前年同月を下回る結果となった。近隣他社との過当競争や、ガソリン価格の高騰により客足の減少が見られる。さらに食材・酒類の値上がり、空調に使われる重油の値上がりが収益を悪化させ、資金繰りの厳しい状況が続いている。一部の企業で、地震の風評被害による影響を受け宿泊客が大幅に減少し、売上に響いている。
今後は映画のロケや中学総体、ショッピングセンターの工事などにより、ホテルでは集客増を見込んでいる。
その他サービス
「ソフトウェア関連やDTP、保険を中心に底堅い」
売上高は前年同月比1.7%減。3か月先の業況見通しDIは0.0と変わらない。
ソフトウェア関連では、生産額で前年同月比減となった企業があるものの、多くの企業で今後の受注が見込めており、底堅い。
運送では、ほとんどの企業で原油高の影響による収益源や、燃料サーチャ-ジ制度の理解を荷主から得られないなど、厳しい状況となっている。
保険では法人向けが落ち込み気味であるが、個人向けの低価格商品が伸びたため、全体としては前年同月比増となった。