土地収用制度のあらまし (2)裁決手続きの流れ
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(1)裁決の申請
収用裁決の申請には、土地の所有権を取得するための裁決申請と、収用しようとする土地にある物件を撤去して土地の明渡しを受けるための明渡裁決の申立ての2つがあります。明渡裁決の申立ては、裁決申請とあわせてまたはその後に行われます。
起業者が行う手続
事業認定
起業者は裁決申請に先立って、土地収用法に基づいて国土交通大臣または都道府県知事の事業認定を受けなければなりません。起業者が申請した土地の収用が公共のために必要であると認められたときは、事業の認定と告示が行われます。
なお、都市計画事業の場合は、事業認可または承認があれば、事業認定を受けずに裁決の申請をすることができます。
土地調書、物件調書の作成
起業者は、裁決申請にあたっては土地調書を、明渡裁決の申立てにあたっては物件調書を作成して、添付しなければなりません。
土地調書、物件調書には、起業者、土地所有者、関係人または市町村吏員の署名・押印が必要です。土地所有者、関係人は、調書の記載事項に異議があれば、異議の内容を付記して署名・押印をすることができます。
土地所有者、関係人の権利
裁決申請請求
事業認定の告示後は、土地所有者、関係人(抵当権者などは除く)は、いつでも起業者に対して自己の権利に係る土地について裁決申請請求をすることができます。
補償金支払請求
事業認定の告示後は、土地所有者、関係人(抵当権者などは除く)は、収用委員会の裁決前であっても、土地に関する補償金の支払いを請求することができます。
裁決申請前に補償金の支払請求をしようとする場合は、裁決申請請求とあわせてしなければなりません。
明渡裁決の申立て
裁決申請があり、明渡裁決の申立てがされていない場合、土地所有者などからも収用委員会に対して明渡裁決の申立てができます。
(2)裁決申請書の受理、公告・縦覧
裁決申請などがあったときは、収用委員会は法令に適合しているかどうかを審査して受理し、その写しを関係の市町村長に送付し、土地所有者、関係人に通知します。
市町村長は、申請または申立てがあったことを公告し、公告の日から2週間書類を縦覧します。
意見書の提出
土地所有者、関係人は、縦覧期間中に収用委員会に収用する土地の範囲や権利関係、損失の補償などについて、意見書を提出することができます。
縦覧期間経過後に意見書が提出された場合でも、収用委員会が相当の理由があると認めるときは、受理します。
意見書の様式について特に規定はありませんが、少なくとも意見書作成の日付、提出者の住所・氏名・押印を忘れないでください。
(3)裁決手続開始決定、登記
裁決申請書の2週間の縦覧期間が経過すると、収用委員会は裁決手続の開始を決定してその旨公告し、土地を管轄する登記所に裁決手続開始の登記を嘱託します。登記されている権利については、収用委員会と起業者は、この時点の権利者を当事者として扱うことになります。
(4)審理
縦覧期間後、収用委員会は当事者の出席を求めて、審理を開きます。審理は、次のような事項について当事者から意見をきき、意見の対立する点(争点)を整理して、審理を終結(結審)します。
起業者に対して
事業計画、交渉経過、収用地、補償など
土地所有者、関係人に対して
意見書の内容の説明、要求する補償内容、明渡しの期限などについての意見
※代理人が出席する場合は、委任状を提出して下さい。
※審理の内容は事務局で録音しますが、当事者や傍聴人による録音はできません。その他、審理場内でゼッケン、ヘルメット、ハチマキなどを着用することもできません。
収用の手続の当事者
起業者とは、土地収用法などによって、土地を収用することを必要とする公共事業の施行者をいいます。
土地所有者とは、公共事業のために収用しようとする土地を所有している人をいいます。
関係人とは、原則として事業認定時において、裁決申請では土地について地上権、賃借権、抵当権など所有権以外の権利を持っている人、明渡裁決の申立てでは土地上にある建物などの物件の所有者や物件について賃借権などの権利を持っている人をいいます。
(5)裁決
収用委員会では、審理で明らかになった争点について必要な調査、検討を行い、裁決します。裁決前に当事者間で合意が成立した場合は任意契約をして裁決申請を取下げるか、収用委員会で和解調書を作成することができます。裁決には、権利取得裁決と明渡裁決があります。
権利取得裁決の主な裁決事項
- 収用する土地の区域
- 土地に関する権利(所有権、賃借権、地上権、抵当権など)に対する損失の補償
権利取得裁決があると、起業者は権利取得の時期までに土地所有者や関係人に補償金を支払い、権利取得の時期に土地の完全な所有権を取得します。
明渡裁決の主な裁決事項
- 土地の明渡しに伴う補償(建物の移転料など)
- 明渡しの期限
明渡裁決があると、起業者は明渡しの期限までに補償金を支払い、土地所有者や関係人は物件を移転して土地を明け渡さなければなりません。
明け渡さないときは、起業者の請求によって、知事が代執行することができます。
(6)和解
裁決前に当事者全員の間に裁決すべき事項について合意が成立した場合は、収用委員会に和解調書の作成の申請をすることができます。
収用委員会は、和解の内容を審査したうえで、当事者全員の出席のもとに和解調書を作成します。
和解調書が作成されると、裁決があった場合と同様の効果が生じます。
当事者は、和解の成立・内容について争うことができなくなります。