ビジネス課題
JVCケンウッドは、日本ビクターとケンウッドが2008年に経営統合した企業です。両社が長年培ってきた映像、音響、通信という3つの技術を軸に事業を展開しています。経営統合以後、同社では「デザイン経営」を志向し、既存のシステムを残しながらもシナジーを生み出すためにさまざまな変革を行ってきました。とはいえ、新型コロナウイルス感染拡大による影響や半導体供給問題など同社を取り巻く市場環境が大きく変化したことに加え、社内では、人材不足やコーポレート社員が減少するなど事業継続へのリスクが顕在化し、業務プロセスの変革に迫られていました。
従来の基幹システムは、細分化された業務ごとにスクラッチで開発したものでした。そのため、個別に手作業でデータを収集・分析しなければならず、経営予実データの作成にも多くの時間が掛かっていました。 そこで、コーポレート全体の変革を担う全社DXの第1弾として、会計システムの刷新から着手しました。
会計業務の標準化と自動化、データドリブン経営の実現に、データ統合型クラウドERPのオラクルを選択
JVCケンウッドがオラクルを選んだ理由
JVCケンウッドでは、このDX推進プロジェクトを実行するにあたり、会計領域から着手しました。外部コンサルを招聘してTo Beプロセスを作成した後、複数のベンダーから機能要件を満たす製品を選定。その評価ポイントとして、①業務標準化をなしうる製品であること、②同社の機能要件を満たしている、③EPM Cloudとの親和性への期待、④次ステップとしてSCM Cloudを導入する事で販売・物流システムも取り込める、⑤SaaS Cloudによる最新機能を享受できる、⑥導入ベンダーからの提案内容が信頼できる内容、の6つでした。これらを満たす製品として『Oracle Fusion Cloud ERP/EPM』を選定しました。
会計システムの刷新によって実現できたことは、①経営管理の高度化(限界利益分析、キャッシュフロー管理等)、②会計データの一元化(すべての会計データに瞬時にアクセスが可能)
結果
『Oracle Fusion Cloud ERP / EPM』の構築により、データドリブン経営の基盤ができたことが大きな成果となりました。会計業務プロセスとしては、大きく3つの効果が生まれています。1つ目は属人化していた決算作業が標準化・自動化され、「作業」の時間が短縮されたことです。これにより、今後は経営の意思決定をサポートする業務に注力していく見込みです。2つ目は全社データの集約と統合です。経営判断に直結する情報である管理会計の売上見込や在庫見込は、直結したPSI管理システムから取得、また予測に使う売価・原価情報は統合価格マスタとダイレクトに繋げました。以前は様々なシステムから各事業部がワークシートにダウンロードしてデータ利用していましたが、今はオラクルでデータとプロセスの統合を確立できました。結果として、PSI管理システム上のデータ精度をより高めるという意識が社内に浸透されました。3つ目が明細データの収集と蓄積の効率化です。周辺システムからのデータを加工して新システムに取り込むのではなく、明細データのままインターフェースすることにしました。以前と比較し仕訳件数は約10倍にもなりましたが、インターフェースがシンプルになり、業務の統一化と明細データ粒度での分析が可能になりました。オラクルのSaaSクラウドだからこそストレージの心配をせずに、大量のデータを流し込む事が可能になったことが実現の大きな要因でもありました。
「コロナ禍でサプライチェーンが寸断され、PSIシステムの通りに需給できないという現状が従来からの課題を一層際立たせる結果となりましたが、それを解決する事で弊社のDX化が大きく前進すると考えております。今までは個人のExcelに入っている見込情報が正でどうにでもなった事が、基幹システムで統一されたロジックで計算する数字を正しくしないと成り立たない構造とした事は大きな成果です。 コロナ禍でのシステム構築は苦労もありましたが、プラスに働いた事も多く、近年、これだけ順調に進んだプロジェクトは無いという経営陣からの評価もいただけました。今までの「当たり前」が通用しない不確実な未来を見据え、持続的な成長をしていくために我々はDXを推進していく所存です。」(園田氏)
パートナー
今回のプロジェクトでは、日本アイ・ビー・エム 株式会社が、豊富な「Oracle Cloud ERP」の導入経験と、同社のシステム導入手法をOracle Cloud向けに進化させた手法であるIBM Ascend for Oracle Cloudを活用し、日本オラクルのコンサルティング部門との協業でプロジェクトを推進しました。
お客様について
モビリティ&テレマティクスサービス分野、パブリックサービス分野、メディアサービス分野の事業等を営む