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【事例紹介】「生理の貧困」解決に取り組む大学生

REPORT / 2024.11.28

今回は、沖縄キリスト教学院大学・沖縄キリスト教短期大学の学生サークル「Ladybird」の活動をご紹介いたします。

Ladybird
沖縄キリスト教学院大学
人文学部4年 天願 希珠南さん(左)
       當山 もな さん(右)

■Ladybirdついて

 玉城直美准教授(当時)のSDGs関連の授業で「生理の貧困」を取り上げたところ、受講していた5名の学生がこの問題に関心を持ち、「生理の貧困」解決のため、2021年に学生サークル「Ladybird」を立ち上げました。サークル名の由来は、イギリス英語のてんとう虫(Ladybird)です。「Lady」は聖母マリアを指していて、聖母マリアが赤いマントを羽織った姿で描かれることが多いことに由来しています。女性を象徴する聖母マリアが語源となっていること、マントの色、てんとう虫の親しみやすさから、「生理」を象徴するものとしてふさわしいと考え、サークル名にしました。

最初は男性2名、女性3名でしたが、どんどんメンバーが増えていき、これまでの延べ人数は約35名です。そのうち1割程度が男子学生です。

写真:Ladybirdのメンバー


■学内の女子トイレに生理用品を無償設置

 民間団体の調査によると、経済的な理由などにより、学生の約5人に1人が生理用品を手に入れるのに苦労したという結果が出ています。特にコロナ禍でバイトに行けず収入が減ったことで、「生理の貧困」が広がったようです。私たちもサークル活動を始めるまでは全く知らず、とても驚きました。周りの友だちと「生理の貧困」について話すことはなかなかないのですが、誰にも相談できずに悩んでいる学生がいることを知りました。

 そこで、立ち上げ当初から続けている活動として、学内の女子トイレに生理用品を設置しています。生理用品の購入が困難な学生が気兼ねなく無償で手に入れられるように、生理用品を入れた箱を各個室に設置し、2週間に1度補充しています。

 生理用品は、沖縄キリスト教学院の後援会から毎年3万円の資金を得て購入していますが、予算が足りないことが悩みの一つです。女性支援団体と一緒にイベントなどに出展することもあり、資金集めのためにグッズを販売したり、必要なくなった生理用品を寄付してもらうこともあります。中には、わざわざ購入した生理用品を持ってきてくれる方もいらっしゃいます。さまざまな団体・個人の皆さんが協力してくれており、昨年は、西原町の社会福祉協議会から4000個の生理ナプキンを寄贈してもらいました。

 学内でアンケートを取ったところ「この活動を続けてほしい」という声が多く、これまで苦労していた学生がいることを改めて知ることができ、無償設置をやって良かったと思いました。

写真:学内の女子トイレ個室に、生理用品を無償設置


■小中学校で、生理の理解を深めるための出前授業

 もう一つの主な活動は、出前授業です。立ち上げ当初は中学校を対象にしていたのですが、活動の幅を広げるため、現在は小学校でも出前授業を行っています。中学生には「生理の貧困」をテーマに、小学生には「生理とは何か」をテーマに教えています。私たちが小学生のころは、学校では女子生徒にだけ生理のことを教えていましたが、出前授業では男女一緒に教えています。

 小中学校の先生方よりも、私たち学生の方が生徒たちと年齢が近いので、話しやすい雰囲気ができていると思います。最初は恥ずかしがっている生徒もいますが、こちらから積極的に声掛けをして、みんなが参加できるように工夫しています。

 授業の最後には、実際にナプキンを触って体験させています。グループごとにナプキンを渡して、赤い色を付けた水をナプキンに吸わせて触ってもらい、昼用と夜用の吸収力の違いを感じてもらいます。水を多く入れると漏れてしまうので、だからナプキンを頻繁に交換する必要があることなどを体感してもらい、ナプキンの片づけ方も教えています。

 生徒たちに興味を持ってもらえるよう実験の要素を取り入れたり、「もし生理が漏れている女子生徒に気付いたらどうするか」をグループで話し合って生徒同士で考えてもらったりすると、生徒たちはだんだん楽しんで授業に参加するようになり、女子生徒が男子生徒に教えたり、生徒同士で話し合い、学んでいく姿が見られるようになります。

 授業後のアンケートでは、「今まで知らなかったけれど、女の子はこんなに大変な思いをしているんだ」「お姉ちゃんがトイレ長いなと思う時があったけど、そういう意味だったんだ」という男子生徒からの感想がありました。

写真:出前事業では実際にナプキンを触ってもらい、男女問わず参加できるように工夫


■5月28日「生理をジェンダーレスで考える日」制定

 男女問わず生理について考える日として、5月28日を「生理をジェンダーレスで考える日」と決め、クラウドファンディングを活用して、2021年に日本記念日協会に申請し登録されました。

生理は平均で、28日周期(約1か月)で5日間続きます。その期間、女性は嫌でも「生理」について考え、向き合わなければなりません。その28日分の5日間(5/28)をみんなで考える日にしたいという願いが込められています。男女の生理に対する知識のギャップや生理の話をタブー視することをなくし、性別を問わず考える日を作ることで、より生きやすい社会を築くことが目的です。

 今年(2024年)は、「生理をジェンダーレスで考える日」にちなんで7月14日にイベントを開催しました。生理用品を入れたポーチを配布したり、生理事情について資料展示したり、思春期保健相談士の和田なほさんをお招きして「性」と「からだ」について考える講演会を行いました。

性別に関係なく関心を持てるよう工夫し、活動内容を知ってもらう広報活動も行っています。記念日を制定したことで、多くの方に「生理の貧困」について知ってもらうきっかけになっています。

写真:「生理の貧困」を知ってもらうため、積極的に広報活動を行っている


■今後の展望

 出前授業は、小中学校とのやり取りや準備・計画を立てるのがとても大変なのですが、小中学生が男女一緒に生理について学べるのはとても良い機会だと思っているので、もっと増やしていきたいです。私たちの世代は男女別だったので、同級生の男子学生は生理について全然知らない人が多いと思います。男女共に生理について正しい知識を得て、生理について話し合える社会になってほしいです。

サークルメンバーにはこれまで男子学生もいましたが、現在は女性だけです。出前授業の講師に男子学生がいると男子生徒たちも話を聞きやすくなると思うので、メンバーに男子学生が増えてくれるといいなと思っています。

活動費の不足は大きな課題でもあるので、私たちの活動を知ってもらうため、イベントなどにも積極的に参加しています。学内だけでなく、大学近くのコンビニや小中学校、県内の各大学などにも協力してもらい、ポスターを張って告知しています。また、自分たちでも資金を集めるため、ステッカーの販売も行ってきました。

 これまで学園祭では主に展示を行っていたのですが、今年は生理について理解を深めるための授業をしたいと思っています。小中学校で行っている出前授業のように、皆さんに生理事情や生理の貧困について知ってもらえる授業を計画していますので、2024年11月30日(土)の学園祭にぜひお越しください。

 「生理の貧困」課題について、経済的に私たちが支えられる部分は少ないとは思いますが、出前授業やイベント開催などを通して「生理の貧困」を皆さんに知ってもらうことで、困っている人々を支えることにつながっていけばと思っています。

  Ladybird

所在地:〒903-0117
沖縄県中頭郡西原町翁長777
沖縄キリスト教学院大学・沖縄キリスト教短期大学内
インスタグラム:https://www.instagram.com/ladybird_ocu