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- Vol.16 糖質はがんのエサになる? 正常な細胞のエネルギー源とは?
■糖質制限でがんの増殖が遅くなったという事実はない
私たちの体の中でエネルギーが作り出されるしくみについて、昔、生物などで学んだ方も多いかと思いますが、ここでもう一度おさらいしてみましょう。
食事からとった栄養素は代謝によって分解され、生命活動に必要なさまざまな物質を作り出していますが、食事で得られる最も基本的なエネルギー源はブドウ糖です。体のあらゆる細胞はエネルギー源をブドウ糖に依存しています。
ブドウ糖は、酸素で解糖することでATP(アデノシン三リン酸)が合成されます。ブドウ糖が酸素によって解糖されることを「酸化」と呼びます。この酸化作用によってATPなどのエネルギーを生み出すことを 「代謝」 と呼びます。ATPは主にブドウ糖の酸化によって生み出される代謝産物です。
食事からとった栄養素はいったんATPという形に変換しておかないと、エネルギーとして利用することができません。ATPは車に例えるとガソリンの働きを担っています。ガソリンがなければ車が走らないように、ATPがなければ私たちは生命を維持することができません。ATPは内臓や筋肉を動かしたり、呼吸や代謝を行うためのエネルギーとして利用されます。
一方、細胞が酸素を利用できない条件下では、酸素によるATPの合成ができないため、無酸素でエネルギーを作り出す「解糖系」が活発に働きます。がん細胞では、酸素があるにもかかわらず解糖系に偏ったエネルギー代謝が行われ、解糖系から多くのATPが合成されます。この現象をワールブルグ効果と呼びます。
がんの検査では、PET検査と呼ばれる精密検査を行います。PET検査ではブドウ糖に放射性フッ素を付加したブドウ糖によく似た薬を使用します。静脈からこの薬を注射し、がん細胞に取り込まれたブドウ糖の分布を画像にします。この検査ではブドウ糖を消費して活発に活動しているがん細胞の状態を調べることができますが、脳や心臓、胃や腸などの消化管、肝臓、咽頭の粘膜、膀胱、腎盂、尿管などの泌尿器や、炎症を起こしている組織は診断が難しいとされています。
このPET検査の部分的な仕組みを根拠に「がん患者に糖質はダメ」と主張される方もいますが、糖質をとるとがん細胞の増殖が速くなるということは確認されていません。また糖質を制限すればがん細胞の増殖が遅くなることも証明されていません。これが、現在の臨床データなどから判断される結論です。むしろ、がんが進行していたり、薬の副作用によってやせ始めた方が糖質制限を行うのはとても危険です。糖質が不足すると、体内の脂質やタンパク質を分解してエネルギー源にするため、筋肉が落ち、衰弱をもたらす結果を招きます。
そもそもがん細胞は、食事だけで大きくなったり、小さくなったりするものではありません。がんと食物や栄養については、さまざまな研究が行われていますが、確実にがんのリスクになるとされている食品は意外と少ないのです。がんは食事以外に喫煙、飲酒、身体活動、ストレス、体格、化学物質、ホルモン、加齢などさまざまな要因が複合的にかかわっています。
大高酵素飲料の主成分は糖質(糖度58%程度)で、ブドウ糖と果糖をほぼ同量含んでいます。飲用することでさまざまな身体の悩みを改善したとする体験談はこれまで数多く寄せられていますが、がんが増殖したとする報告例はなく、長い食経験から安全性が証明されています。
「健康の輪」第48号より一部抜粋