- お知らせ 健康コラム
- Vol.15 夏こそ腸活で免疫力アップ、イキイキ元気な腸内
ウイルスや細菌などの病原体から自分の身を守るうえで欠かせないのが体に備わった免疫機能です。その免疫細胞の約7割は腸に集まっており、腸内細菌がさまざまな病気から守る「免疫力」に深く関与していることが明らかとなっています。腸は栄養素を消化・吸収したり、ビタミンやホルモンなどを作り出すだけではなく、病原体に対する生体防御の最前線としての役割も果たしています。夏バテで疲労を引き起こしやすい夏こそ“腸活”で免疫力アップに努めましょう。
■夏バテで免疫力低下、腸のもつ免疫機能に注目
夏は暑さによる食欲不振、冷たいもののとり過ぎ、寝不足、室内外の気温差による自律神経の乱れなどにより、夏バテの症状が出やすい時期です。夏バテによって免疫力も低下してきます。
免疫力とは、体内に侵入したウイルスや細菌などの病原体などを排除して身を守る防御システムのことです。それを実現するために、体内ではいろいろな特徴をもった免疫細胞がお互い協力し合ってチームプレイで体を守っています。
体内には気道の粘膜、唾液、リンパ液、血液などに免疫機能が備わっていますが、免疫細胞が最も存在する場所は腸です。腸は口から食道、胃、肛門までをつなぐ消化器官の一つです。消化器官は常に食べ物や水分などを取り込んでいるため、ウイルスや細菌などの病原体も同時に取り込まれ、腸などを通じて体内に侵入するリスクにさらされています。そのため、有害な物質を体内に入れないために、腸には免疫細胞や抗体が多く集まっています。小腸と大腸に存在する免疫のことを腸管免疫といいます。
また近年の研究により、腸管免疫の発達や働きを維持するために、腸内細菌が重要な役割を果たしていることが明らかとなっています。
■免疫細胞の多くは小腸に存在、腸管免疫の最前線で活躍
腸管免疫の最前線で活躍しているのが小腸です。日本人の小腸の長さは平均6~7mあり、胃で溶かされた食べ物を消化液でさらに分解し、栄養素を体内に吸収する働きがあります。小腸の内壁には絨毛というじゅうたんの毛のような突起物と輪状ヒダがあり、栄養素を効率よく取り込めるようになっていますが、食べ物と一緒に口から入ってきた病原体や異物を退治する機能も備えています。
絨毛の外側にある上皮細胞の間にはМ細胞という免疫細胞が存在します。М細胞は細菌やウイルスなどの病原体や異物を粘膜内に誘導して、他の免疫細胞に渡し、撃退する働きをしています。この小腸特有の免疫組織をパイエル板といいます。
パイエル板の中には、樹状細胞、T細胞、B細胞などの免疫細胞が集まっており、この免疫機能が免疫グロブリンA(IgA)という免疫物質を出しています。IgAは免疫機能が発達していない赤ちゃんを守るため、お母さんや人間以外の哺乳類の初乳にも多く含まれています。
この免疫物質は小腸に最も多く存在していますが、唾液や鼻などの表面の粘膜中でも分泌され、病原体の侵入を防いでいます。
■小腸をくぐり抜けた異物は大腸でとらえて排除
一方、小腸にある免疫機能の攻撃をくぐり抜けた異物は大腸でとらえられ排除します。大腸は最後の砦です。
大腸では、小腸で消化吸収されなかったオリゴ糖や食物繊維などの未消化物を腸内細菌が発酵・分解するときに短鎖脂肪酸を作り出します。短鎖脂肪酸は大腸の腸壁の内側にあるムチンという粘液を増やすことでバリア機能を高め、病原体などが侵入しないよう防御する役割を担っています。
また短鎖脂肪酸は大腸内でのIgAの産生量を増やす作用があるほか、小腸のパイエル板の免疫細胞にも作用し、小腸内でのIgAの産生を増強することも明らかとなっています。さらに大腸で産生されたり摂取した短鎖脂肪酸は制御性T細胞という特殊な細胞を増やす働きがあり、小腸の免疫機能が暴走しないよう大腸がコントロールしていることも解明されつつあります。このように器官の垣根を越えて免疫が関与していることがわかってきており、腸管免疫が全身免疫にも密接に関与しながらウイルスや細菌が体に侵入しても病気にならないよう撃退する力を備えています。
■免疫機能が有効に働くには腸内細菌のバランスが重要
小腸や大腸に備わった免疫機能を有効に働かせるためには、日頃から腸内細菌を活発にする働きのある野菜・海藻類や発酵食品などを積極的にとり、腸内細菌のバランスを整えておくことが必要です。まだまだ暑い日が続くこの夏は、腸活を意識したバランスのよい食生活を心がけ、健康に過ごしましょう。
「健康の輪」No.40より抜粋・一部修正