2019年上場・Kipsが語る、東京プロマーケットの魅力と活用
更新:2022年6月30日
※本コラムは、2020年9月28日時点の記事です。2022年4月4日より新市場区分(東京証券取引所:プライム・スタンダード・グロース)に再編されています。旧市場名は新市場名に読み替えてご覧ください。
- ※登壇者の役職・肩書は、執筆時点の情報です。
1.東京プロマーケットとは?
東京プロマーケットは東京証券取引所(東証)が運営するプロ投資家(※)向け市場です。2020年9月時点で上場社数は36社、2019年には過去最多の9社が上場を果たしました。
一般市場への上場に比べて監査証明が1期分でよい(短期で上場が可能)、形式基準がない、低コストで上場が可能であり、かつ一般市場と同様に、信用力向上、人材獲得の優位性などのメリットも享受することができます。
一方で一般投資家による売買ができないため、株式の流動性は低く、資金調達目的の上場は難しいというデメリットもあります。
注目度が高まる東京プロマーケットに2019年9月、株式会社Kipsが上場を果たしました。
ベンチャー支援・ファンド事業を行う株式会社Kipsはなぜ東京プロマーケットを選択したのでしょうか。代表取締役 國本 行彦氏に東京プロマーケットへの上場についてお伺いしました。
※特定投資家(機関投資家、上場企業、資本金5億円以上の株式会社、3億円以上の金融資産を持ち証券会社へ特定投資家として申し出た個人等)と非居住者を併せて特定投資家等(プロ投資家)といいます。
一般市場への上場に比べて監査証明が1期分でよい(短期で上場が可能)、形式基準がない、低コストで上場が可能であり、かつ一般市場と同様に、信用力向上、人材獲得の優位性などのメリットも享受することができます。
一方で一般投資家による売買ができないため、株式の流動性は低く、資金調達目的の上場は難しいというデメリットもあります。
注目度が高まる東京プロマーケットに2019年9月、株式会社Kipsが上場を果たしました。
ベンチャー支援・ファンド事業を行う株式会社Kipsはなぜ東京プロマーケットを選択したのでしょうか。代表取締役 國本 行彦氏に東京プロマーケットへの上場についてお伺いしました。
会社概要
株式会社Kips
創業:2006年1月
売上高:116,342千円(2019年12月期)
従業員数:2名(2020年9月現在)
事業内容:「一人でも多くの人と一緒に、1社でも多くの公開会社を育てる」を活動理念に掲げ、ベンチャーファイナンス部門としてアドバイザー事業及び投資事業、イベント・メディア部門としてイベント事業及びメディア事業を主な事業とし、起業家とその企業の成長支援に取り組んでいる。
株式会社Kips
創業:2006年1月
売上高:116,342千円(2019年12月期)
従業員数:2名(2020年9月現在)
事業内容:「一人でも多くの人と一緒に、1社でも多くの公開会社を育てる」を活動理念に掲げ、ベンチャーファイナンス部門としてアドバイザー事業及び投資事業、イベント・メディア部門としてイベント事業及びメディア事業を主な事業とし、起業家とその企業の成長支援に取り組んでいる。
※特定投資家(機関投資家、上場企業、資本金5億円以上の株式会社、3億円以上の金融資産を持ち証券会社へ特定投資家として申し出た個人等)と非居住者を併せて特定投資家等(プロ投資家)といいます。
2.Kipsが東京プロマーケット上場を選んだ理由
上場の目的は株主づくりですが、そのために信用力を強化したいという思いもありました。
これは、新たに迎える株主だけでなく、出資検討するベンチャー企業や連携する大学や地方自治体等のベンチャー支援機関に対しても信用を得やすくなるメリットがあります。上場企業というステイタスがあるおかげで、当社の説明コストが以前よりも軽減されていると肌で感じることはあります。
また、資金調達方法の幅を広げたいとも考えていました。
プロ投資家に限定された市場ではありますが、増資や借入など資金調達方法の幅が広がることは有難いと感じています。
そして最大の理由は、我々が実践することでベンチャー企業に東京プロマーケットという道があることを示したかったからです。
当社は売上高5,000万、従業員数がわずか4名(上場当時)の最小規模での上場でした。小さな会社でも上場ができるという最低ラインを示すことで、東京プロマーケットという市場の活用法をベンチャー企業にも伝えられるのではないかと思いました。
これは、新たに迎える株主だけでなく、出資検討するベンチャー企業や連携する大学や地方自治体等のベンチャー支援機関に対しても信用を得やすくなるメリットがあります。上場企業というステイタスがあるおかげで、当社の説明コストが以前よりも軽減されていると肌で感じることはあります。
また、資金調達方法の幅を広げたいとも考えていました。
プロ投資家に限定された市場ではありますが、増資や借入など資金調達方法の幅が広がることは有難いと感じています。
そして最大の理由は、我々が実践することでベンチャー企業に東京プロマーケットという道があることを示したかったからです。
当社は売上高5,000万、従業員数がわずか4名(上場当時)の最小規模での上場でした。小さな会社でも上場ができるという最低ラインを示すことで、東京プロマーケットという市場の活用法をベンチャー企業にも伝えられるのではないかと思いました。
3.上場に関して苦労したことは?
当社は創業当初から監査指導を受けていましたので、上場企業レベルの有価証券報告書作成・監査対応は特に問題がありませんでした。通常はここがネックになるところでもありますのでそういう意味では苦労はあまりなかったかもしれません。
ただ、管理部門の人員は必要になるため、全部で4人の従業員の中から管理部門を2人にして対応する必要はありました。
また、上場時の売上高が問われないとはいえ、上場後に事業が成長するストーリーを描けないといけません。ベンチャー企業の発掘・支援を行いながら安定的な収益を担うイベント・メディア部門を事業基盤として据えて、ベンチャーファイナンス部門(アドバイザー事業・投資事業)を高収益な成長事業とする2軸でストーリーを描きました。ちょうどこの頃、ベンチャー投資事業を本格再開し、エンジェルファンドを立ち上げるタイミングでもありました。審査を担当するJ-Adviserに納得してもらうことができる事業計画を練り上げることが非常に重要です。
4.J-Adviserの選定方法
当社のJ-Adviserは宝印刷様でした。選定の理由は、東京プロマーケット上場について相談した際に、当社の売上高(相談当時は5,000万)でも支援してくださると即受諾してくれたからです
J-Adviserは取引所に代わって上場審査をし、上場後は週次状況報告書の確認、役員会への出席等、継続して支援してくれる重要なパートナーです。二人三脚で準備を進める必要がありますので、経験豊富かつ相性が合う担当者と出会うことが大事です。
J-Adviserは取引所に代わって上場審査をし、上場後は週次状況報告書の確認、役員会への出席等、継続して支援してくれる重要なパートナーです。二人三脚で準備を進める必要がありますので、経験豊富かつ相性が合う担当者と出会うことが大事です。
5.東京プロマーケットの展望
今後、東京プロマーケット上場は拡がっていくと個人的には期待しています。
私がJAFCOに入社したのは1984年、店頭市場(店頭売買有価証券市場、現在のジャスダック)がベンチャー向け市場として整備されて間もないころでした。当時、上場と言えば東京証券取引所という風潮でしたが、それがあっという間に店頭市場を選択する企業が増えていきました。マザーズが設立されたときも同じことが起きました。当初は見向きもされていませんでしたが、それが今はマザーズ一強ともいえる状況です。
新しい市場の活性化には、その市場を象徴するような企業の上場と関係者の理解が必要不可欠です。
東京プロマーケットには、世界に先駆けるような新技術の研究開発を行う企業が向いています。最近よく聞く大学発ベンチャー、テクノロジー系・サイエンス系といった企業がその典型です。
そのような企業に対しては、プロ投資家が支援の手を差し伸べ、長期にわたって成長の手助けをすることが必要であり、その支援の場として最適なのが、東京プロマーケットといえるでしょう。
課題と言われる資金調達面も徐々に改善されていくでしょう。少ないながらも調達事例を知ってもらうことや、プロ投資家層の厚みやその枠組みを拡大することが求められていると思います。これらを支援するJ-Adviserも多様化してきており、東京プロマーケット上場企業が100社を超える頃には景色が変わっているのではないでしょうか。
▼J-Adviser・宝印刷株式会社 大村氏が東京プロマーケットの活用法を解説
私がJAFCOに入社したのは1984年、店頭市場(店頭売買有価証券市場、現在のジャスダック)がベンチャー向け市場として整備されて間もないころでした。当時、上場と言えば東京証券取引所という風潮でしたが、それがあっという間に店頭市場を選択する企業が増えていきました。マザーズが設立されたときも同じことが起きました。当初は見向きもされていませんでしたが、それが今はマザーズ一強ともいえる状況です。
新しい市場の活性化には、その市場を象徴するような企業の上場と関係者の理解が必要不可欠です。
東京プロマーケットには、世界に先駆けるような新技術の研究開発を行う企業が向いています。最近よく聞く大学発ベンチャー、テクノロジー系・サイエンス系といった企業がその典型です。
そのような企業に対しては、プロ投資家が支援の手を差し伸べ、長期にわたって成長の手助けをすることが必要であり、その支援の場として最適なのが、東京プロマーケットといえるでしょう。
課題と言われる資金調達面も徐々に改善されていくでしょう。少ないながらも調達事例を知ってもらうことや、プロ投資家層の厚みやその枠組みを拡大することが求められていると思います。これらを支援するJ-Adviserも多様化してきており、東京プロマーケット上場企業が100社を超える頃には景色が変わっているのではないでしょうか。
▼J-Adviser・宝印刷株式会社 大村氏が東京プロマーケットの活用法を解説
6.最後に
執筆
株式会社Kips 代表取締役 國本行彦氏
生年月日:1960年8月21日
出身高校:東京都立志村高校
1984年03月 早稲田大学法学部卒業
1984年04月 日本合同ファイナンス(現・JAFCO)入社
広島・東京・大阪・名古屋で投資の最前線を経験する
2006年01月 (株)インディペンデンツ(現・(株)Kips)設立、代表取締役就任
2015年11月 特定非営利活動法人インデペンデンツクラブ 理事就任
2019年09月 東京証券取引所TOKYO Pro Market市場上場(9465)
2020年06月 (株)ラクス 社外取締役就任
出身高校:東京都立志村高校
1984年03月 早稲田大学法学部卒業
1984年04月 日本合同ファイナンス(現・JAFCO)入社
広島・東京・大阪・名古屋で投資の最前線を経験する
2006年01月 (株)インディペンデンツ(現・(株)Kips)設立、代表取締役就任
2015年11月 特定非営利活動法人インデペンデンツクラブ 理事就任
2019年09月 東京証券取引所TOKYO Pro Market市場上場(9465)
2020年06月 (株)ラクス 社外取締役就任