IPOに向いている経営者とは?|コラム|IPO Compass

上場ゴールはNG!IPOを目指す経営者に必要なこととは?

経営者がIPOを「ゴール」ととらえるか、夢や目標、ビジョンを実現するための「手段」ととらえるか、IPOを目指す経営者に求められる3つの条件について解説
更新:2023年8月3日

1.上場ゴールとは何か?

「上場ゴール」という言葉をご存知でしょうか?
上場ゴールとは、IPO時に得られる創業者利潤そのものを目的として上場をすることを揶揄して使われる表現です。

経営者が創業者利潤を得ること自体は、IPOのメリットの一つであるため、問題ではありません。問題は、経営者がIPO自体をゴールとみなし、IPO後の成長を担保しないことです。

IPOにおいて、多くの投資家は、経営者がもつ夢や目標、大きなビジョンに惹きつけられ、期待し、それを実現できる経営手腕があると感じるからこそ、その会社に投資を行います。多くの投資家から資金を調達することの意味を、経営者は正しく理解する必要があります。
大きな夢やビジョンもなく、IPOをゴールととらえているような経営者は、IPOを目指すべきではないのです。

2.2019年の引受審査厳格化要請、経営者の高い意識が大前提

2010年代後半に、IPO直後の業績悪化による下方修正や内部管理体制の問題発覚など、上場企業としての自覚に欠ける企業が散見されました。そのため日本取引所グループでは、「JPX 自主規制法人の年次報告 2019」の中で、主幹事証券会社に対して引受審査の厳格化を要請しました。

株券に係る新規上場等銘柄数は2018年度においても前年度と同様の水準となった一方、申請後に承認に至らなかった銘柄数は46銘柄となり、前年度から大幅に増加しました。承認に至らなかった銘柄の中には、各種法令への遵守体制や子会社管理等の業務上必要とされる管理体制、オーナー経営者に対する牽制体制の構築状況が不十分であるなど、内部管理体制等に係る上場審査基準を満たさない事案が多く認められたことから、当法人では、各幹事取引参加者に対して公開指導及び引受審査の徹底を要請しました。
出典:日本取引所グループ, 「JPX 自主規制法人の年次報告2019」

「申請後に承認に至らなかった銘柄数は46銘柄」とあるように、2018年は証券審査をクリアしたにもかかわらず、その後の取引所審査で承認されなかった企業が46社もありました。このことは日本取引所グループとして看過できない事態ということで、異例の要請に繋がったのです。
主幹事証券会社の審査を厳格化することももちろん重要ですが、経営者が高い意識で企業運営をすることが大前提です。経営者の意識にも訴える要請であったことは間違いありません。

3.IPOを目指す経営者に必要なこと

IPOを目指す経営者に必要なことは「IPO後の成長を担保できること」です。
IPO後の失敗原因の第一位は、企業成長を担保出来ないことです。市場や投資家の期待を裏切ることなく、企業を成長させ続けていくためには、鳥の眼でIPO後のビジョンを明確にし、虫の眼で経営を検証し、説明できる経営者でなければなりません。

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また、IPOの実現は経営者一人の力では不可能です。
パブリック・カンパニーを目指すためには、社員一人一人の意識を変える必要があります。経営者の覚悟を自ら社員に伝えましょう。特に管理部門はIPOをするうえで欠かせない存在です。管理部門が担う役割の重要性を理解し、その期待を伝えましょう。

併せて、IPO準備に必要となる関係機関の指導・助言に真摯に耳を傾けることも重要です。特に証券会社と監査法人はIPOの成否の鍵を握る存在です。証券会社と監査法人からの指摘には迅速に対応し、IPOに向けた課題を一つ一つ解決していきましょう。

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4.最後に

IPOが実現できれば、資金調達や創業者利潤の実現などのメリットを、経営者や会社にもたらす可能性があります。その一方で、上場会社(社会の公器)になるということは、不特定多数のステークホルダーから継続した企業成長を求められことを意味します。

創業者利潤という目先の利益にとらわれ、上場ゴールを目的にした結果、多くの関係者に損害を与えてしまう可能性があることを、経営者がまずは自覚すること、そして、前述した3つの条件を経営者が着実にクリアしていくことで、IPOの実現に近づくことができるのではないでしょうか。
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執筆
IPO Compass編集部
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