- 株式会社やまひろ
- 専務取締役
山野 訓弘氏
- 株式会社やまひろ
- 管理本部
係長/大本 人邦氏
- 株式会社サンシステム
- 常務取締役
宮田 良幸氏
検討のきっかけ
事業継続と業務標準化のためにクラウド化を構想
切り札はパッケージしかなかった
株式会社やまひろは1948年の創業。アイスクリーム卸売から事業を徐々に拡大し、現在は自社販売製品の製造のほか、大手アイスクリームメーカーの製造委託(OEM)も手がけるようになった。豊富な経験に裏打ちされた提案力と徹底した品質管理体制を武器に大手アイスクリームメーカーの信頼を得てきたのである。
同社が本格的に次期システムを検討し始めたのは既存システムのサポート終了がきっかけだ。検討のポイントは2つある。
一つ目は「事業継続」だ。同社のシステムサポートを行う株式会社サンシステム常務取締役の宮田良幸氏が説明する。
「広島では、豪雨などの自然災害に見舞われ、データベースに被害を受けた企業をこれまで何度も見聞きしてきました。こうした状況を目の当たりにして、事業継続対策(BCP対策)を強化する必要があると考えました。運用コストを押さえて手間なく事業継続対策を実現するためにクラウド化を目指すことにしたんです」
既存システムでのデータベースはオラクル。クラウド化のためにはAWS等の利用が必要であったが、ライセンスの制約により価格面・運用面でのコストが膨大になるため、既存システムのクラウド化は断念せざるを得なかったという。
二つ目は「業務標準化」である。株式会社やまひろ 管理本部係長の大本人邦氏は「勤怠の締めから給与確定までの期間が非常にタイト。そのため、業務の負荷を分散する目的で工場ごとに給与計算業務を行っていましたが、近年は弊害が目立ってきました」と前置きしつつ「工場ごとに業務を行っていくなかで、工場独自の運用ルールや複雑な給与体系が発生するようになってしまったんです。要はブラックボックス化していたわけです。そんななか、給与計算業務を本社一括で行える体制に変える必要に迫られていました」と詳細を語る。
「事業継続対策のためにクラウド化を実現しつつ、業務標準化を実現するためにはクラウドパッケージしかないと考えました」(宮田氏)
導入の決め手
誰も解読できず手が付けられなかった
給与・賞与の計算ロジック
奉行の豊富なノウハウで計算式を完全再現
既存システムは、柔軟にパラメータ設定ができ、作り込みが可能という特長がある。そのため、システム変更に伴う最大の課題は、複雑な給与計算・賞与試算の計算ロジックの再現性と計算の精度であった。「既存システムでの給与計算式はインタプリタによる記述で700行にものぼっており、給与体系は15体系ありました。工場の賞与試算においては支給日のカウントについて独自のロジックが組まれていました」(宮田氏)
給与奉行では、四則演算や端数処理はもちろんのこと、if関数や3次元テーブルの設定が可能だ。
「2社のシステムを比較検討するなかで、デモンストレーションと評価版の貸し出しがあり、複雑な計算式をスムーズに移行できるイメージを抱いたのが奉行。乗せ換えに不安を感じていましたが、項目拡張オプションという標準オプションを活用すれば、カスタマイズなしで対応可能と聞き、導入を決めました」(大本氏)
そして、宮田氏は「世間で最も広く使われているのが奉行。奉行こそがスタンダードであり、業務標準化に適していると強く勧めました」と導入の理由を付け加える。さらに「プロジェクト型導入支援サービス」も導入の後押しになった。OBCでは、お客さまの要望に応じて、システムの導入から稼働、運用に至るまで一貫してサポートを行うプロジェクト型の導入支援サービスを提供している。
「運用設計のための初回の打ち合わせで、すでにある程度の計算式が組まれた環境ができあがっていたことに驚きました。確かに、事前に就業規則や賃金規定、組織図、従来のシステムの資料をメールで提供していたのは事実。しかし、700行にものぼる給与計算式をすべて読み解いたのは見事としか言えません」(大本氏)
導入効果
業務標準化に加えて生産性向上に成功
本社機能の強化を実現
こうして奉行シリーズの導入が始まった。データ移行に苦戦したものの、納品から稼働まで半年でこぎつけることができた。大本氏は「これほど短期間で、導入できるとは思っていませんでした。プロジェクト型導入支援サービスを活用して正解でしたね」と絶賛する。
「15あった給与体系は共通項を洗い出し、7体系にスリム化。給与計算式は私たちで直せるものになり、格段に使いやすくなりましたね。複雑な計算式に給与奉行が耐えうるか当初心配していましたが、実際に運用してみると給与計算の精度は以前と変わりなく、安心して運用できています。さらに既存システムではIT環境の変化や法改正のたびに都度カスタマイズが発生していましたが、現在はOS更新や法改正によるシステム更新は自動化されました」(大本氏)
同社では他社の会計ERPソフトと勤怠管理システムを利用している。システム連携に支障はないか。
「会計ソフトとの連携については、給与奉行の“仕訳伝票作成”機能を利用し、勘定奉行用の仕訳データを別プログラムで変換して連携させています。製造原価と販管費の振り分けも、きめ細やかに行えて助かっています。そして、勤怠管理システムからのデータ受入れについては、奉行のマッピング機能を活用することで、システムから出力されるレイアウトをそのまま活用して連携できており、特別な加工や手作業などの手間はほとんどありません」(大本氏)
給与奉行とともに導入した給与明細電子化クラウドによって生産性向上にも成功したという。従来は複写式の専用用紙を使用し、ドットプリンタで印刷。印刷後に個別に明細を分割し、拠点ごとに仕分けし発送していた。
「給与明細は本社で配付を行っているのですが、給与明細電子化クラウドを利用することで、半日かかっていた給与明細の配付作業がゼロになりました」(大本氏)
ブラックボックス化していた給与体系が透明になったことに加えて、入力や明細配付作業の生産性が向上。これにより、これまで3工場と本社で分散して行ってきた業務を本社一括に集約できるようになったほか、2名体制で処理が可能になった。
今後の展望
システムを活用して全社レベルで生産性向上を目指す
データを経営に活かして新しいステージへ
今後、さらに労働人口が減少していく。株式会社やまひろ 専務取締役の山野訓弘氏は「働き方改革や生産性向上を実現していくためにはシステムの力が必要。作業人数や労働時間を減らしつつも業務の正確性を保てるからです」と、システムを活用した業務改革を目指す。
同社では2019年度のスローガンに「Challenge To The New Stage」を掲げた。特に入力業務の効率化を全社レベルで図り、経営戦略に必要なデータをいち早くアウトプットできる体制を目指しているという。「身近な給与明細が紙からWebに変わったことは、全従業員の意識を触発する1つの要因になったのではないか」と、大本氏は語る。
同社では海外展開や新規事業展開をも視野に入れているという。
「クラウドは拠点を新たに設けた際もライセンスを追加するだけで使えるほか、必要なときに必要なデータにアクセスできるのがメリット。奉行シリーズを導入したことで業務が標準化・効率化されただけでなくデータの出し入れもスムーズになり、人件費が正確につかめるようになって次の一手を打ちやすくなりました。クラウドは経営の強い味方ですね」(山野氏)
OBCが提供するクラウドは同社の経営に不可欠なものとなりつつある。“New Stage”に至る取り組みをサポートするのがOBCのシステムなのだ。
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企業情報
アイスクリームを中心に冷凍ゆで麺の製造・卸売を手がける。アイスクリーム製造においては自社販売製品のほか、主要大手アイスクリームメーカーの製造委託(OEM)も行う。衛生、安全、品質を徹底した管理のもと、日産100万個のライン設備を稼働。主な取引先は明治、ロッテ、江崎グリコ、森永乳業、ハーゲンダッツジャパン、日世など。2019年度の売上は212億円で、創業以来最高売上を達成。
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- 会社名
- 株式会社やまひろ
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- 業種
- 卸売業,製造業
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- エリア
- 広島県広島市
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- 従業員数
- 340名(2019年8月現在)
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- 売上高
- 212億円(2019年度)