新潟医療福祉大学 運動機能医科学研究所


4/23 勉強会

文献抄読

担当:桐本

文献:Scelzo et al. Increased short latency afferent inhibition after anodal transcranial direct current stimulation. Clinical Neurophysiol 498: 167-170, 2010.

要旨

  • 背景:経頭蓋直流電流刺激(tDCS)は,中枢神経を機能変化させるテクニックであり,神経学的,心理学的な疾患に対する改善効果を示している.tDCSの臨床効果により刺激された部位の興奮性の変化が生じたことは示されているが,皮質の神経回路にどのように作用しているのかについては明らかにされていない.一方,経頭蓋磁気刺激(TMS)により得られる運動誘発電位(MEP)の短潜時求心性抑制(SLAI)を評価することにより,ヒトの一次運動野内のコリン作動性神経回路を非侵襲的に探索することができる.本研究は,陽極tDCSはSLAIに関与する神経回路を変化させるか否かについて検討することを目的とした.
  • 方法:12歳の健常被験者(21-37歳)の安静時閾値(RMT),単発MEP振幅とSLAIを陽極tDCS(一次運動野上に1 mAで13分間)前後で比較した.条件刺激は正中刺激への経皮電気刺激を用い,TMSとの刺激感覚はN20の潜時 + 2 msとした.
  • 結果:陽極tDCS後にRMTと単発MEPの振幅に変化はなかったが,SLAIは有意に増大した.
  • 結論: 陽極tDCSの影響は皮質内神経回路の調節作用にも依存する.SLAIによって評価された皮質内コリン作動性神経回路の増強は,陽極tDCSが複数の病状を改善することの機序の重要な裏付けになると考えられる.