新潟医療福祉大学 運動機能医科学研究所


11/20 勉強会

【研究報告】

担当:藤本先生

タイトル:コンプレッションタイツの着用が日射を伴う暑熱環境下における運動時の生理応答に及ぼす影響

  • 背景・目的:スポーツ現場で用いられるコンプレッションタイツは生理学的なアドバンテージを得られることが明らかとなっているが,日射を伴う暑熱環境下においても同様の効果が得られるかはわからない.本研究では,コンプレッションタイツの着用が日射を伴う暑熱下運動時の生理応答に及ぼす影響を検討した.
  • 方法:健康な成人男性9名を対象とした.60分間の中強度運動 (60%最大酸素摂取量強度) を1) 暑熱下 (WBGT: 25.2 ± 0.2℃) で何も着用しない条件 (Control条件),2) 日射と輻射を伴う暑熱環境下 (WBGT: 29.2 ± 0.8℃) で何も着用しない条件 (Radiation条件),3) 2の条件下で段階的着圧のあるコンプレッションタイツを着用する条件 (Compression条件) の3条件下で行った.運動中の体温,呼吸,循環および感覚パラメーターを測定した.
  • 結果:食道温の変化や平均皮膚温はRadiationおよびCompression条件で差はみられず,温度感覚や主観的運動強度にもRadiationおよびCompression条件で差はみられなかった.一方,心拍数や換気量はCompression条件でRadiation条件よりも低値を示し,呼気終末二酸化炭素分圧はCompression条件でRadiation条件よりも高値を示した.
  • 結論:日射を伴う暑熱環境下での運動時にコンプレッションタイツを着用することで,熱ストレスの増加を伴わずに呼吸循環パラメーターを改善できる可能性が示唆された.

【文献抄読】

担当:飯室さん

タイトル:Noninvasive theta-burst stimulation of the human striatum enhances striatal activity and motor skill learning

出典:Wessel et al., Nat Neurosci, 2023, 26(11):2005-2016. doi: 10.1038/s41593-023-01457-7

  • 背景と目的:新たな経頭蓋時間干渉波刺激法(tTIS)を用いて,ヒトの線条体への非侵襲的な神経調節が脳活動と運動学習に与える影響を検証した.tTISは高周波電流を使用し,線条体に焦点を当てつつ周囲の領域への影響は最小限にすることができる.この刺激方法により,先行研究では困難とされていた健康な被験者における線条体の役割を直接評価した.
  • 方法:計算モデリング,機能的磁気共鳴画像(fMRI),行動評価(運動学習課題)を用いて,ヒトにおけるθバーストパターンのtTISによる線条体の非侵襲的な神経調節の影響を検証した.
  • 結果:θバーストパターンの線条体へのtTISは,線条体と関連する運動ネットワークの活動を増加させた.さらに,健康な高齢者の運動学習能力を向上させた.
  • 結論:本研究により,tTISはヒトの脳深部構造を非侵襲的に標的とする新しい方法として注目され,その機能的役割の理解が深まった.さらに,この結果は,脳疾患に対する革新的な非侵襲的治療戦略の基礎を築くものである.