新潟医療福祉大学 運動機能医科学研究所


12/12 勉強会

【研究報告】

担当:小島先生

タイトル:空間的刺激位置が異なる機械的触圧覚刺激を用いたPaired Pulse Depressionと二点識別覚機能との関連

  • 背景・目的:末梢刺激時の皮質反応は,2連発の刺激を行うと1発目の反応に比べ,2発目の反応が減弱することが報告されており,これは,Paired pulse depression(PPD)という.このPPDの程度は,刺激の条件に依存して変化することが報告されているものの,刺激位置の違いによる影響は不明である.そこで本研究では,2連発刺激の刺激位置の違いがPPDの減弱度合いに及ぼす影響を明らかにすることと,PPDの減弱度合いと2点識別覚閾値との関連を明らかにすることを目的とした.
  • 方法:対象は健常成人20名であった.PPDの計測には,全頭型脳磁界計測装置を用いて,右示指に対する触覚刺激後の皮質活動を計測した.計測条件は,1発刺激(single)と刺激位置が異なる2連発刺激(PPD_normal,PPD_near,PPD_middle,PPD_far)の合計5条件とし,各200回をランダムに計測した.また,2点識別覚閾値は,右示指の指腹で計測を行い,50%の確立で正答できる2点間隔を算出した.
  • 結果:誘発波形の大きさは,single時に比べて全ての2連発刺激時で有意に小さく,PPDが認められた.しかしながら,抑制度合いの比較では,2連発刺激条件間で有意な差が認められなかった.一方,PPD_far条件の抑制度合いと2点識別覚閾値との間に有意な負の相関が認められた.
  • 結論:2連発刺激の刺激位置の違いは,PPDの抑制作用に影響を及ぼさない可能性が示唆された.一方,空間的に距離が異なる条件でのPPD抑制度合いは,個人の二点識別覚機能を反映する可能性が示唆された.これには,異なる位置を刺激することによって,空間的な二点識別に関与する領域の活動変化も含んだ皮質応答を反映している可能性が示唆された.

【文献抄読】

担当:笠原さん

タイトル:The Acute and Prolonged Effects of Different Durations of Foam Rolling on Range of Motion, Muscle Stiffness, and Muscle Strength

出典:Nakamura et al., J Sports Sci Med. 2021 DOI:10.1186/s12891-022-05656-4

  • 背景:Foam Rolling(FR)は,スポーツ現場で筋力を低下させることなく,関節可動域(ROM)を増加させ,筋スティフネスを減少させるために使用されてきました.しかし,FRの異なる介入時間における急性効果・持続効果を検討した報告はなく,筋スティフネス減少に必要な最小限のFR介入時間も不明である.そこで本研究の目的は,ROM・筋スティフネス・筋力に対するFR介入時間の違いによる急性効果および持続効果を検討することであった.
  • 方法:45名(男性23名,女性22名)が本研究に参加し,3群(30秒×1回群 vs 30秒×3回群 vs 30秒×10回群)のうちの1群に無作為に割り振られた.評価項目は,FR介入前,FR介入2分後,30分後の足関節背屈可動域(DFROM),内側腓腹筋のせん断弾性係数,筋力とした.
  • 結果:30秒×1回群ではFR介入前と介入2分後に有意差はなかったが,30秒×3回群(p=0.042, d=0.26),30秒×10回群(p<0.01, d=0.33)ともにDFROMが増加した.しかし,DFROMの増加は30秒×3回群,30秒×10回群ともに30分後にはFR介入前の値まで戻った.また,せん断弾性係数と筋力は全ての群で有意な変化は認められなかった.
  • 結論:急性効果として,筋スティフネスや筋力を変化させることなくROM増加を目的とする場合,90秒以上のFRが有効であることが示唆された.