新潟医療福祉大学 運動機能医科学研究所


11/7 勉強会

【研究報告】

担当:太田先生

タイトル:2つの異なる筋痛モデルにおけるTmemファミリー分子の発現測定

  • 目的:2つの異なる筋痛モデルの筋において,Tmemファミリーの機械受容チャネルが関与するか調べた.
  • 方法:雄性SDラットの下腿伸筋群に伸張性収縮(LC)を反復負荷し,遅発性筋痛モデルを作製した.LC24時間後の前脛骨筋,下腿筋膜,後根神経節をそれぞれ摘出しRNAを精製後,Tmem120A mRNAの発現レベルをリアルタイムPCR法により定量し,LC反対側(非運動側)と比較した.さらに,LC後複数時点でTmem120AおよびそのパラログであるTmem120Bの発現レベルを経時的に測定した.下腿伸筋群のうち前脛骨筋の筋腹に、3%カラゲニン(50μL)を筋注した.筋注12時間後に前脛骨筋を摘出し上述の通り,Tmem120AおよびTmem120Bの発現レベルを測定した.
  • 結果:LC24時間後において,筋浅層のみTmem120Aが反対側に比べて有意に発現増大した.さらに,無処置筋に比べLC6~48時間後において有意に発現増大し,特に24時間後の発現レベルが最も高かった.一方,Tmem120Bはどの時点でも発現増大しなかった.カラゲニン筋注12時間後の筋浅層において,Tmem120A,Tmem120Bのいずれも無処置筋に比べて有意に発現増大した.
  • 考察・結論:一般に,LCによる力学的負荷の影響は遅筋よりも速筋で大きく,速筋線維は筋浅層に多いことがわかっている.そのため,力学的負荷を強く受けた筋浅層でTmem120Aの発現が増大したと考えられる.筋浅層では機械痛覚過敏に関与する神経成長因子の発現レベルも高いことから,今後はTmem120Aとの相互作用を調べる必要がある.カラゲニン筋炎モデルは遅発性筋痛よりも炎症および組織損傷度が高いため,Tmem120AだけでなくTmem120Bも発現増大し,Tmem120Aに補助的作用をもたらしていると考えられる.

【文献抄読】

担当:丸山さん

タイトル:Enhancement of LTD-like plasticity by associative pairing of quadripulse magnetic stimulation with peripheral nerve stimulation

出典:Wiratman et al., Clinical Neurophysiology. 2022 DOI:10.1016/j.clinph.2022.03.009

  • 背景と目的:Quadripulse magnetic stimulation (QPS)は皮質脊髄路興奮性を変調する刺激プロトコルであるが,LTD様可塑性を誘導する介入では応答率が低い.そこで,末梢神経への電気刺激とLTD様可塑性を誘導するQPSの連合性対刺激(paired-associative QPS:PA-QPS)を考案し,皮質脊髄路興奮性に及ぼす影響を運動誘発電位(MEP)を指標として検討した.
  • 方法:右利き健常成人38名,ESとTMSのペア内間隔は,PALTP-QPSLTDではN20ピーク潜時+2ms,PALTD-QPSLTDではN20ピーク潜時-5msとした.QPSLTD, PASLTD,PALTD-QPSLTD,PALTP-QPSLTDの4条件すべてに参加し,介入後60分間のMEP振幅の変化を比較した.また,QPSLTDとPALTD-QPSLTDの反応率も検証した.
  • 結果:PALTD-QPSLTDは有意なLTD様可塑性を誘導し,反応率はQPSLTDと比較して有意に高値を示した.
  • 結論:新たな刺激プロトコルであるPALTD-QPSLTDは皮質脊髄路興奮性に対して協力かつ一貫したLTD様の可塑性を誘導することが明らかとなった.