新潟医療福祉大学 運動機能医科学研究所


8/22 勉強会

【研究報告】

担当:北谷先生

タイトル:バランスディスク上での左プリズム適応による無視様状態が重心変位に与える影響

  • 背景:健常者に対して視野が左に変位するプリズム眼鏡を装着して視覚運動適応を行うことにより,注意が右空間へ変位する左半側空間無視(USN)様の現象が生じる.プリズム適応により生じるUSN現象には,姿勢制御への影響として重心が右へ変位する転移効果が報告されている.プリズム適応による転移効果を増大させる手法として姿勢制御にバランスを要求する方法が報告されているが,重心変位の転移効果への影響を検討した報告はない.
  • 目的:健常者を対象としてバランスディスク上でのプリズム適応が立位時の重心変位に与える影響を検討することである.
  • 方法:若年健常者30名を床面上での立位とバランスディスク上での立位の2群に分けてプリズム適応課題を実施した.プリズム適応前後において,閉眼での前方上肢リーチ時の正中位からの左右変位距離,開脚・閉脚での閉眼静止立位時の重心動揺,身体垂直性の指標としてLongitudinal body axisを測定した.
  • 結果:閉眼上肢リーチは両群ともにプリズム適応後に有意に右に変位していた.バランスディスク上での立位でプリズム適応を行った群のみ,閉脚閉眼静止立位時の足圧中心位置が有意に右に変位していた.また,上肢リーチによる後効果は20分程度持続していた.
  • 結論:バランスディスク上での左プリズム適応により,姿勢制御における左USN現象として立位重心の右変位が増大した.

【文献抄読】

担当:櫻井先生

タイトル:Neural correlates of tactile hardnes sintensity perception during active grasping

出典:Kim et al., PeerJ, 2021. DOI 10.7717/peerj.11760

  • 背景:物体の硬さを知覚するためには、物体を押したりつかむことが必要である.能動的動作は受動的動作よりも自然な触覚硬度の知覚調査である.能動的動作による触覚硬度情報の脳内処理は不明である.
  • 目的:本研究では物体を手で把持しながら触覚硬度の神経活動を明らかにすることを目的とした.
  • 方法:4種類の硬度レベルの刺激を把握時の動作実験と機能的MRI実験を行った.硬度レベルの知覚と硬さを追跡する脳内部位を特定した.
  • 結果:対象者は正確に硬度を知覚できていた.知覚された触覚硬度は後島皮質と正の相関があり、小脳の後葉と負の相関があった.
  • 結論:各刺激がその物理的硬度によって区別できることを明確にした.後島皮質と小脳の後葉が触覚硬度情報に関与していることを明らかにした最初の研究である.