新潟医療福祉大学 運動機能医科学研究所


11/22 勉強会

【研究報告】

担当:鈴木

タイトル:足趾把持力のRate of Force Development (RFD) とバランス機能との関係性

  • 目的:若年健常成人における足趾把持力のRate of Force Development (RFD) と開眼片脚立位における重心動揺との関係性を検討する。
  • 方法:対象は若年健常成人50名とした。足趾把持力計にて静的立位姿勢時の足趾把持力を測定し,筋力発揮時点から50ms,100ms,200msにおけるRFDを算出した。さらに,重心動揺計にて開眼片脚立位姿勢における総軌跡長と矩形面積を計測した。解析はSpearmanの順位相関係数を用い,足趾把持力のRFDと開眼片脚立位における重心動揺との関係性を検討した。
  • 結果:足趾把持力のRFD (0-50ms,0-100ms,0-200ms) と矩形面積との間に有意な負の相関関係が認められた (0-50ms:r=-0.43,p<0.01;0-100ms:r=-0.36,p<0.01;0-200ms:r=-0.34,p=0.01)。総軌跡長との間には有意な関係性は認められなかった。
  • 考察:足趾把持力による重心のコントロールでは,瞬発的に足趾把持力を発揮させている可能性や,筋の神経性因子が関与する可能性が示唆される。
  • 結論:若年健常成人において,片脚立位時に重心が大きく動揺しそうになった際,瞬発的に足趾把持力を発揮させ,重心をコントロールしている可能性が示唆された。

 

【文献抄読】

担当:富樫

タイトル:三角靱帯のストレインパターン

出典:Takao et al.(2020) Strain pattern of each ligamentous band of the superficial deltoid ligament: a cadaver study

  • 背景:三角靱帯の詳細なバイオメカニクスに関する報告は少ない.また,細い靱帯にセンサーを挿入することが困難であるため,各靱帯のバイオメカニクスを検討した研究は未だない.
  • 目的:Miniaturization Ligament Performance Probe(MLPP)システムを用いて,三角靱帯表層の各靱帯のストレインパターンを計測することである.
  • 方法:新鮮凍結遺体6体の三角靱帯表層の各靱帯に,MLPPを縫合した.ストレインは,足底面に固定した金属製の円盤(時計)を用いて測定した.また,足部を背屈15度から底屈30度まで徒手的に動かし,足関節・距骨下関節複合体に1.2Nmの負荷を加えた.その後,30度ごとに時計を回転させ,各靱帯のストレインを測定した.
  • 結果:脛舟靱帯(TNL)は,足関節底屈10度から緊張し,底屈角度が増加するにつれ緊張が増加した.さらに,TNLは足部底屈-外転で最も効果的に働いた.Tibiospring靱帯(TSL)は,足関節底屈15度で緊張し始め,角度の増加により緊張が増加した.TSLは,外転時に最も効率的に働いた.脛踵靱帯は,背屈0度で緊張し始め,角度の増加により緊張が増加した.TCLは足部回内で最も効率的に働いた.表層後脛距靱帯(SPTTL)は,背屈0度で緊張し始め,角度の増加により緊張が増加した.SPTTLは背屈時に最も効果的に働いた.
  • 考察:三角靱帯表層の各靱帯は,足部の肢位の違いで,最も効率的に働く部位が異なることが明らかになった.臨床現場では,痛みの範囲の評価を行い,どの靱帯が損傷しているかを評価することに役立ち,患者に手術が必要かを判断することができる可能性がある.本研究では,三角靱帯表層の各靱帯のストレインパターンを詳細に検討したため,術前の詳細な評価や手術の手法に有益である可能性がある.
  • 結論:三角靱帯表層の各靱帯のバイオメカニクスを検討した.三角靱帯のバイオメカニクスを理解するために重要であり,三角靱帯の修復・再建の際に役立つことが示唆された.