新潟医療福祉大学 運動機能医科学研究所


10/18 勉強会

【研究報告】

担当:山代

タイトル:右前頭皮質への経頭蓋ランダムノイズ刺激はNogo電位およびGo/Nogo RTを変調しない

  • 目的:本研究は、経頭蓋ランダムノイズ刺激(tRNS)の前頭皮質への付加が触覚・聴覚のモダリティを越えてNogo電位を強化し、Go/Nogo RTを短縮するかについて検討した。
  • 方法:被験者17名に対してtRNSと偽刺激(SHAM)触覚および聴覚のGo/Nogo課題時の事象関連誘発電位(ERP)とGo/Nogo RTを計測した。
  • 結果:tRNSおよびSHAM刺激ともに触覚および聴覚Go/Nogo課題に対するNogo電位を強化せず、Go/Nogo RTも短縮しなかった。
  • 考察:実験結果から、tRNSの刺激効果は高次脳領域に対する運動野や感覚野のような低次の脳領域に比べて低い可能性が示された。

 

【文献抄読】

担当:大倉

タイトル:Anodal Transcranial Direct Current Stimulation over the Cerebellum Enhances Sadness Recognition in Parkinson’s Disease Patients: a Pilot Study. 小脳への陽極tDCSがパーキンソン病患者の悲しみの認識を高める

出典:Fabiana Ruggiero et al.  The Cerebellum 2021 Jun 22. doi: 10.1007/s12311-021-01295-y.

  • 背景:パーキンソン病は顔から表情を読み取る顔面情動認識(FER)において、特にネガティブな感情を読み取ることが困難となる。パーキンソン病の病因であるドパミン神経の黒質変性は、情動に関与する大脳基底核や前頭葉、小脳の領域をつなぐ非運動ループにも影響を及ぼす。小脳に障害を持つ患者は、顔面情動認識能力を失うのにもかかわらず、小脳が顔面情動認識に寄与していることを明らかとする研究は少ない。
  • 目的:小脳への経頭蓋直流刺激(tDCS)によって、顔面情動認識が変化するかどうかを評価することである。
  • 方法:9名のパーキンソン病患者へ、小脳へのtDCS刺激(2.0mA. 20分)を5日間連続して与え、少なくとも1か月の感覚をおいて2回実施した。顔面情動認識課題はベースライン時(T0)と小脳tDCS後の5日目(T1)に実施した。
  • 結果:悲しみを示す表情に対する情動認識は、小脳へのtDCSによって約16%向上したものの、怒り・喜び・中立の表情の認識には変化がなかった。
  • 考察:サンプル数は少ないものの、小脳へ5日間のtDCS刺激を与えることで、パーキンソン病患者が特定の顔の表情を認識する方法が変化することが示された。ネガティブな情動刺激には小脳を活性させることから、小脳へのtDCS刺激は、ネガティブな感情の認識に影響を及ぼすことが考えられる。
  • 結論:小脳へのtDCSはネガティブな感情認識能力を向上させることや、パーキンソン病患者における特定の表情の認識する方法を調節することができる可能性を示唆している。