新潟医療福祉大学 運動機能医科学研究所


5/10 勉強会

【研究報告】

担当:横田

タイトル:経皮的迷走神経刺激(tVNS)が自律神経機能に及ぼす影響

  • 目的:迷走神経求心線維を経皮的に刺激することが可能な刺激装置(Trancutaneous Vagus Nerve Stimuation: tVNS)を用い, 異なる刺激周波数が自律神経機能(心拍)に及ぼす影響を明らかにすることとした.
  • 方法:20名の健常成人を対象に,安静イス座位にて左の耳甲介に対するtVNS刺激中の心電図波形を記録した.刺激周波数は前後半5blockずつ計10 blockに対して100 Hz, 25 Hz, 10 Hz, 1 Hz, 0 Hz(コントロール)の5種類をランダムに割り当てた.各blockの中にそれぞれ1分間のBaseline,刺激中,刺激後①,刺激後②の解析区間を設け,周波数ごとの心拍数および自律神経活動指標(LF/HF)を計測し,最大エントロピー法を用いて解析した.
  • 結果:反復測定二元配置分散分析の結果交互作用が認められ(F=2.607, p = 0.003),事後検定により0 Hzのコントロール条件を除いたすべての周波数において,Baseline,刺激後①,刺激後②と比較して刺激中に有意な心拍数の低下を認めた(p = 0.001).さらに,刺激中の心拍数の低下は100 Hz条件において他の全ての周波数と比較して有意に大きな低下を示した(p = 0.001).一方で,自律神経活動指標(LF/HF)においてはいずれの条件においても有意な変化は認められなかった.
  • 結論:左耳甲介に対する100 HzのtVNSは,0 Hzのコントロール条件および25 Hz以下の低周波数刺激条件と比較して,最も効果的に心拍数を低下させた.

 

【文献抄読】

担当:鈴木

タイトル:Does moderate intensity impact exercise and non-impact exercise induce acute changes in collagen biochemical markers related to osteoarthritis? – An exploratory randomized cross-over trial

出典:Bjerre-Bastos JJ et al., Osteoarthritis Cartilage. 2021 Mar 3

  • 目的:変形性膝関節症 (膝OA) において運動は痛みや機能改善に大きな効果をもたらすが,運動が膝関節軟骨へ与えるストレスは明らかになっていない。そこで本研究では,膝OA患者の膝関節に衝撃が加わる運動 (ランニング) と衝撃が加わらない運動 (サイクリング) を対象として,運動後の軟骨由来の生化学マーカーの急性変化を検証することを目的とした。
  • 方法:研究デザインはクロスオーバー介入研究で,対象は膝OA患者20名である。各運動の強度は最大心拍数の75%の強度とした。運動の前後で採血を行い,血液サンプルから軟骨由来の生化学マーカー (C2M,C6M,PRO-C2) を取得した。運動前後での生化学マーカーの変化を,線形混合モデルを用いて解析した。
  • 結果:C2Mはサイクリング後に血清中で有意に増加した (p=0.006)。C6Mは両者の運動後に有意に減少した。PRO-C2/C2Mはサイクリング後に,コラーゲン分解方向へ有意にシフトした (p=0.007)。
  • 結論:膝関節に衝撃が加わらない運動 (サイクリング) 後に,軟骨由来の生化学マーカーの急性変化が生じることが明らかとなった。