新潟医療福祉大学 運動機能医科学研究所


9/28 勉強会

【研究報告】

担当:玉越

タイトル:脳出血モデルラットにおける超早期リハビリテーションは炎症促進因子の増加および神経細胞死を促進する

  • はじめに:本研究は,脳出血後の超早期リハビリテーションが運動機能回復および脳組織に及ぼす影響について検証することを目的とした.
  • 方法:実験動物にはWistar系雄性ラットを用いた.対象を無作為に偽手術群(SHAM群),脳出血+非運動群(ICH+Cont群),脳出血+超早期トレッドミル群(ICH+VET群)の3群に分けた.脳出血モデルは,左線条体にカニューレを挿入し,コラゲナーゼ・Type IVを一定流速で注入して作製した.ICH+VET群は,手術6時間後と24時間後にトレッドミル走行運動を実施した.運動機能評価にはHorizontal ladder testを用いて,梯子の掴み方をスコア化した.手術27時間後に全群の脳組織から感覚運動野および線条体を採取した.脳組織解析では,血腫体積,脳浮腫を測定した.また、リアルタイムPCR法を用いて,大脳皮質感覚運動野におけるIL-1b,TGF-b1,IGF-1, Caspase-3のmRNA発現量を解析した.さらに、ウェスタンブロッティング法を用いて、NeuN, PSD95, GFAPのタンパク発現量を解析した。統計処理にはTukey法による多重比較検定を用いて群間比較を行った.
  • 結果:Horizontal ladder testにおいて,ICH+VET群のスコアが,ICH+Cont群と比較して有意に悪化した.両部位ともに、ICH+VET群におけるNeuNおよびPSD95のタンパク発現量は、ICH群と比較して減少傾向にあった。線条体では、ICH+VET群のIL-1b mRNA発現量は,ICH群と比較して有意に増加した.ICH+VET群のTGF-b1 mRNA発現量は,SHAM群と比較して有意に増加した.感覚運動野では、TGF-b1, IGF-1 mRNA発現量は、ICH群では有意に増加したが、ICH+VET群では変化がなかった。ICH+VET群のCaspase-3 mRNA発現量は、ICH群と比較して増加傾向にあった。
  • 考察:本研究から,脳出血後24時間以内から開始する運動は,運動機能障害を悪化させることが明らかとなった.脳組織の解析から,運動機能障害の増悪は,血腫体積や脳浮腫の増大助長ではなく,感覚運動野および線条体において神経細胞死およびシナプスの退縮が促進したことが関与していると考えられる.線条体では、超早期介入によって炎症促進因子が増加したが、アポトーシス促進因子の増加は認めなかった。一方、感覚運動野では炎症促進因子の増加促進を認めなかったが、抗炎症因子および神経成長因子の増加抑制とアポトーシス促進因子の増加促進が認められた。このことから、神経細胞死およびシナプス退縮の促進メカニズムは、脳部位で異なる可能性が示唆された。

 

【文献抄読】

担当:山代

タイトル:Suppression of Somatosensory Evoked Cortical Responses by Noxious Stimuli

出典:Brain Topography (2019) 32:783^793

  • 目的:体性感覚システムにおける侵害刺激と非侵害刺激の相互作用および体表の刺激位置による2連発刺激中の条件刺激の効果を明らかにすること.
  • 方法:被験者は13名であった.1)テスト刺激条件,2)テスト刺激+聴覚条件,3)テスト刺激+非侵害刺激条件,4)テスト刺激+侵害刺激条件.テスト刺激は常に左手手背に提示し,条件刺激として非侵害刺激および侵害刺激を右足に提示した.二連発刺激の間隔は600ms,トライアル感覚は2秒とした.
  • 結果:テスト刺激条件に比べて聴覚刺激条件ではテスト刺激による両側の二次体性感覚野の活動を抑制せず,非侵害刺激および侵害刺激条件ともに両側の二次体性感覚野の活動を抑制した.
  • 考察:条件刺激が聴覚刺激の場合は二連発抑制が起きず,条件刺激が侵害刺激および非侵害刺激の場合は二連発抑制が起きた。このことから同一のモダリティの条件刺激であれば条件刺激が遠隔であっても二連発抑制が起こることが明らかになった.