新潟医療福祉大学 運動機能医科学研究所


5/18 勉強会

【研究報告】

担当:菊元

タイトル:慢性足関節不安定性が片脚着地課題における膝関節運動にあたえる影響

  • 目的:本研究は,ACL損傷の危険因子と考えられる片脚着地動作に着目し,足関節の構造的および機能的不安定性を有して足関節捻挫を再発している症状(Chronical Ankle Instability: CAI)の既往がある選手と足関節捻挫を繰り返していないCoperとの生体力学的な見地での比較を行い,片脚着地時の足関節機能が膝関節に及ぼす影響を検証した.
  • 方法: 高校生女子62名124足を対象に,先行研究の基準に準じてCAI群(14足)Coper群(30足)の選定を行った.三次元動作解析装置を使用して,片脚立位より前方へ跳躍し片脚着地するSingle Hop Testを課題試技とし,足関節と膝関節の関節角度とモーメント値を算出した.
  • 結果:両群間で床反力値や跳躍距離などに違いは認められず,両群で同程度の跳躍を実施していたことが考えられ,足関節の機能的安定性の相違が,片脚着地動作時の膝関節へ及ぼす影響を検証できた.膝関節モーメント値に関して,伸展モーメントはIC時のみにおいて,Coper群が有意に高値を示し,外反モーメントは着地動作の20%から膝関節最大屈曲位までに加え,最大値においてもCAI群で有意に高値を示した.
  • 結論: CAI群で観察された膝関節伸展と外反モーメントの増加は,足関節の機能的破綻が要因となり,着地時の足関節外転角度の増加に起因し,ACL損傷リスクを高めると考えられる.加えてCAI群の着地動作は,矢状面上の運動戦略を有用に使用することが難しく,膝関節外反モーメントに大きく依存した着地動作を行っている可能性がある.足関節の着地動作の相違の原因は,構造的破綻などの要因も考えられ,更なる検証が必要であるが,CAI群はACL損傷の危険因子となり得る膝関節伸展と外反モーメントが高値となる着地動作を行っている可能性が示唆された.
  • 今後:対象者の弛緩性や月経周期など,個人因子を考慮できておらず,各対象者の個人因子を考慮した状態での生体力学的な検証が,更に必要であると考える.

 

【文献抄読】

担当:中村

タイトル:Interset Stretching vs. Traditional Strength Training: Effects on Muscle Strength and Size in Untrained Individuals

出典:Evangelista AL, et al. J Strength Cond Res. 2019 Jul;33 Suppl 1:S159-S166.

  • 目的:8週間の通常のレジスタンストレーニング(TST)とレジスタンストレーニング間のセット間にストレッチングを行うセット間ストレッチング群(ISS)の効果を比較することである.
  • 方法:両群ともに8-12RMの負荷を用いた6種類のレジスタンストレーニングを4セットを実施し,ISS群はセット間の休憩時に30秒間のストレッチングを行った.
  • 結果:両群ともにベンチプレスや膝伸展の1RMは増加し,その効果に両群間に違いは認められなかった.一方,外側広筋の筋厚はISS群の方がTST群よりも大きく筋肥大した.
  • 結論:レジスタンストレーニング中のセット間にストレッチングを追加することは,筋力増強効果に悪影響がなく,筋肥大効果を増加させる可能性がある.