新潟医療福祉大学 運動機能医科学研究所


7/8 勉強会

【研究報告】

担当:秦

タイトル:

神経筋電気刺激中の前頭前野の脳酸素化ヘモグロビンの変動

~低強度有酸素運動との比較~

  • 背景:神経筋電気刺激(NMES)後に前頭前野皮質(PFC)の活性化と神経栄養因子の増加が報告されている.PFC活性化は認知機能改善に関連しており,また,PFC活性化には神経栄養因子の増加や,脳の酸素変化が影響していると報告されているが,NMES刺激中の酸素化ヘモグロビンの変化は不明である.
  • 目的: NMES刺激中のPFCの酸素化ヘモグロビンを,同じ強度の有酸素運動と比較することである.方法:対象者は,右利きの健常成人男性15名(平均年齢5±1.4歳)とした.実験は対照条件,NMES条件,運動条件に分けた.対照群は40分の安静を設けた.NMES群と運動群は10分の安静,10分の刺激強度調整後, 3METsの強度で20分間の介入を行った.3METsの強度は酸素摂取量(VO2)の増加から判断した.実験中には,近赤外線分光法を用いてのPFCの酸素化ヘモグロビン(O2Hb)を測定した.また, VO2も同時に計測した.
  • 結果:有酸素運動とNMES刺激中に,VO2は有意に増加した.しかしO2Hbは,対照群と比較し,3METsのNMES刺激および有酸素運動では,増加しなかった.
  • 結論:3MTEsでの20分間のNMESおよび有酸素運動では,PFCのO2Hbは増加しないことが明らかとなった.

 

【文献抄読】

担当:徳永

タイトル:Potential of muscles to accelerate the body during late-stance forward progression in individuals with knee osteoarthritis

出典:Ogaya et al. Human Movement Science. 2018;61:109-116.

  • 目的:変形性膝関節症(Knee OA)患者の歩行において下肢の筋が前方COM加速度を生み出す能力がどのように変化するのかを検証すること.
  • 方法:対象はKnee OA患者12名,Knee OA患者に年齢をマッチングさせた健常成人12名であった.3次元動作解析装置および床反力を用いて,快適速度での歩行動作を計測した.計測データを基にOpenSimによる筋骨格モデルシミュレーションを行い,筋が生み出す前方COM加速度,筋の発揮張力,Muscle potential(対象者の体重に相当する筋張力が発揮された際に生じる前方COM加速度),の3つ評価項目を算出した.解析対象は腸腰筋,ハムストリングス,ヒラメ筋,腓腹筋であった.統計解析にはt検定を用いた.
  • 結果:腸腰筋,ヒラメ筋,腓腹筋が生み出す前方COM加速度はコントロール群に比較してKnee OA群で有意に低値を示した(p < 0.05).また,腸腰筋の発揮張力は,コントロール群に比較してKnee OA群で有意に低値を示した(p < 0.05).加えて,ヒラメ筋のMuscle potentialはコントロール群に比較してKnee OA群で有意に低値を示した(p < 0.05).
  • 結論:Knee OA患者では,ヒラメ筋のMuscle potentialの低下,腸腰筋の発揮張力の低下,によって歩行時における前方COM加速度が低下していることが明らかとなった.