新潟医療福祉大学 運動機能医科学研究所


8/31 勉強会

【研究報告】

担当:犬飼

タイトル:小脳への経頭蓋直流電流刺激が立位姿勢制御に及ぼす影響

要旨

  • 目的:非侵襲的脳刺激法の一つである経頭蓋直流電流刺激(transcranial direct current stimulation:tDCS)は非侵襲的に一次運動野の可塑的変化を引き起こすことが可能である.本研究では,小脳へのtDCSが立位姿勢制御に影響を及ぼすかを検証した.
  • 方法:tDCSは外後頭隆起の2cm下方に刺激電極,前頭部に対極電極を貼布した.刺激電極は2.0mA,刺激時間は20分とした.被験者にはSham,Anodal,Cathodalの3条件のtDCSを別日に実施した.刺激前後に重心動揺計にて1分間の開眼立位での重心動揺を測定し,総軌跡長,単位軌跡長,矩形面積,外周面積を抽出した.
  • 結果:総軌跡長,単位軌跡長はCathodal刺激後に有意に減少したが,Sham刺激,Anodal刺激後では変化を認めなかった.矩形面積,外周面積をいずれの刺激でも刺激の前後で有意差を認めなかった.Cathodal刺激前の総軌跡長,単位軌跡長と刺激後の変化率とは有意な相関関係は認めなかった.ICCは総軌跡長,単位軌跡長のいずれも0.8以上の高値を示した.
  • 考察:小脳へのCathodal tDCSは総軌跡長,単位軌跡長を減少させることが示唆された.メカニズムとしてはCathodal tDCSにより,小脳皮質の唯一の出力細胞であるプルキンエ細胞の活動性が低下したことが関与していることが考えられるが,今後更に検証していく必要がある.

 

【文献抄読】

担当:玉越

タイトル:Exercise Training Inhibits the Nogo-A-NgR1-Rho-A Signals in the Cortical Peri-infarct Area in Hypertensive Stroke Rats

要旨

  • 目的:本研究は脳虚血後のトレッドミル走行がNogoA/NgR/RhoA経路と軸索再編成に及ぼす影響について検討した.
  • 方法:腎血管絞扼高血圧性ラットを用いて脳虚血モデルを作製した.実験群をSHAM群,脳虚血群,脳虚血+運動群とした.運動機能評価として前肢握力を測定した.軸索およびミエリンの指標として,GAP43,Tau,MBP,APPを蛍光免疫組織化学染色にて解析した.また,NogoA,NgR,RhoAをウェスタンブロッティング法および蛍光免疫組織化学染色によって解析した.解析は,7,14,28,52日目に行った.
  • 結果:運動群は前肢握力を有意に改善させた.運動群はGAP43, Tau, MBPを有意に増加させ,APPを有意に減少させた.また,NogoA,NgR,RhoAを有意に減少させた.
  • 結論:虚血後の運動は運動機能回復を促進させ,軸索再編成を促進させることがわかった.また,NogoA/NgR/RhoAのタンパク発現減少が軸索再編成の促進に寄与している可能性が高い.