新潟医療福祉大学 運動機能医科学研究所


8/17 勉強会

【研究報告】

担当:齋藤

タイトル:経頭蓋磁気刺激と末梢電気刺激のペア刺激が皮質脊髄路の興奮性変化に及ぼす影響

要旨

  • 目的:経頭蓋磁気刺激と末梢電気刺激のペア刺激が皮質脊髄路の興奮性変化に及ぼす影響を経頭蓋磁気刺激法を用いて検証する.
  • 方法:健常成人8名を対象に,経頭蓋磁気刺激と末梢電気刺激のペア刺激を実施し,経頭蓋磁気刺激法による運動誘発電位(MEP)の変化を観察した.ペア刺激は右正中神経への電気刺激と対側への経頭蓋磁気刺激の組み合わせとし,その刺激間隔(ISI)を21.5ms,25ms,60ms,100msの4条件とした.MEP計測はペア刺激前と5秒後,10秒後,20秒後に実施した.
  • 結果:ISI = 21.5 msのペア刺激はMEPを増大させるが,それ以外のペア刺激はMEPを減少させた.
  • 結論:経頭蓋磁気刺激と末梢電気刺激のペア刺激の効果はISIに応じて変化する可能性が示唆された.

 

【文献抄読】

担当:下門

タイトル:Neurobiological foundations of neurologic music therapy: rhythmic entrainment and motor system (Review article)

要旨

  • 引き込みの原理:2つの異なる振動体同士が自然と周期が同期してゆく現象(引き込み現象)が発見されて以来、ヒトの内部にも同様のシステムが存在することが認められている。
  • 聴覚システムと時間知覚:これまで運動制御理論では聴覚システムは軽視されていた。しかし聴覚はヒトの感覚の中でも優れた時間分解能を有しており、引き込みの原理によって聴覚刺激が運動システムに影響を及ぼすことがこれまでの研究で示されてきた。
  • 神経系の引き込み:聴覚と運動の引き込みを用いたリハビリテーションが有効であるという報告は多くみられるものの、その神経メカニズムは未だに不明である。下丘が重要な役割を担っている可能性がある。
  • タイミングに基づく運動の最適化:聴覚リズムが提示されることでヒトは脳内に新しくタイムキーパーを持ち、正確な時間を予測できることで脳が運動を最適化計算しているものと考えられている。
  • 今後の活用:聴覚リズムによる引き込みを利用した運動リハビリテーションは、CI療法(Constraint Induced Therapy)と同等数の論文が報告されてきており、その効果が認められてきている。他にも、腕の動きや発話、認知(記憶、時間順序、情報の連続性)への活用だけでなく、人工内耳使用者の聴覚訓練、半側空間無視患者の無視減少、音楽の即興行為による実行機能向上にも効果があると報告されるようになっており、今後も期待される。