新潟医療福祉大学 運動機能医科学研究所


8/18 勉強会

【研究報告】

担当:松本

タイトル:手指運動課題時における同側一次運動野皮質内抑制のラテラリティ

要旨

  • 目的:短潜時皮質内抑制(SICI)および長潜時皮質内抑制(LICI)を指標とし,手指運動課題時における同側一次運動野(M1)の興奮性の変化におけるラテラリティの有無について検証すること.
  • 方法:対象は右利き健常成人8名とした.被験者は自己ペースの単純タッピングと3種類の課題指向型手指運動(キーパッド上の光るキーを叩打する光刺激追従課題,キーパッドへの疑似単語または実単語の入力課題)を左右示指それぞれで行った.安静時および課題遂行時に動作肢と同側M1への単発および二連発経頭蓋磁気刺激(TMS)を行い,安静肢の第一背側骨間筋から運動誘発電位(MEP)を記録した.二連発TMSの刺激間隔は,3 ms,100 msに設定し,SICIおよびLICIをそれぞれ評価した.課題遂行時のSICIおよびLICIの変化をMEP ratio(安静時のMEPに対する課題遂行時のMEPの比)として表した.
  • 結果:手指運動時のLICIのMEP ratioは,右手運動時の同側M1と比較して,左手運動時の同側M1において有意に増加した.一方,手指運動時のSICIおよびLICIのMEP ratioにおいて,課題間に有意な差は認められなかった.
  • 結論:非利き手の手指運動による対側M1興奮性の変化は,利き手のそれより大きく,その結果,非利き手と同側M1におけるLICIが減弱する,手指運動時の課題指向性は同側M1におけるLICIの変化に影響を及ぼさない,以上のことが示唆された.今後の課題として,被験者を増やしさらに検証していく必要がある.

 

【文献抄読】

担当:稲井

タイトル:Peak hip and knee joint moments during a sit-to-stand movement are invariant to the change of seat height within the range of low to normal seat height.

要旨

  • 目的:立ち上がり動作における椅子の高さが下肢関節モーメントピーク値に及ぼす影響を明らかにすること.
  • 方法:健常成人8名を対象とし,課題動作の立ち上がり動作をさせた.椅子の高さはLow(10,20,30cm),Normal(40cm),High(50,60cm)の6条件とした.解析項目は,股・膝・足関節モーメントピーク値,Mechanical load(股・膝関節モーメントの和)ピーク値とした.
  • 結果:股・膝関節モーメントピーク値およびMechanical loadピーク値について,LowとNormalの間では不変であった.またNormalとHighの間では,椅子が高くなることでピーク値は減少した.
  • 結論: 椅子の高さが下肢関節モーメントピーク値に及ぼす影響が明らかになった.本研究の知見は,椅子のデザイン設計や立ち上がり動作の理学療法評価に寄与する可能性がある.