就活ハラスメント対策!
就活ハラスメントとは、採用する企業やその採用担当者等が優越的な立場を利用して就職活動中の学生に行うハラスメントのことをいいます。決して許されない行為であることはもちろん、明るみに出れば会社も大きなダメージを受ける行為です。今からでも遅くはありません。学生の安全と会社の将来を守るためにも、自社の採用活動に就活ハラスメントの防止対策を取り入れましょう!
就活ハラスメント防止対策は、労働施策総合推進法に基づく指針※1および男女雇用機会均等法に基づく指針※2において、望ましい取り組みとされています。
※1 事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)
※2 事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(平成18年厚生労働省告示第615号)
就活ハラスメント※の実態
誰が起こすのか?
就活ハラスメントを起こすのはどんな人でしょうか? 想定されるのは以下のポジションにある人です。他にも「リクルーター」や「就活マッチングアプリを通じて知り合った従業員」といった回答も見られました。
学生に聞きました、
就活ハラスメントは誰から?
●インターンシップで知り合った従業員 ⇒
32.9%
●採用面接担当者 ⇒
25.5%
●企業説明会の担当者 ⇒
24.7%
●大学のOB・OG訪問を通して
知り合った従業員 ⇒
17.6%
ハラスメントの具体的な行為は?
就活ハラスメントに該当する行動として挙げられるのが、セクシュアルハラスメント(セクハラ)です。女性に限らず、男性も被害を受けることがあります。また、採用する側という優越的な立場を利用したパワーハラスメント(パワハラ)なども考えられます。
学生の4人に1人が就活
ハラスメントを経験! その内容とは
●性的な冗談やからかい ⇒
40.4%
●食事やデートへの執拗な誘い ⇒
27.5%
●性的な事実関係に関する質問 ⇒
26.3%
どのような場面で起きるのか?
就活ハラスメントが起きるタイミングは企業側の人と学生と接触するときです。インターンシップ中や企業説明会などが多くなっています。
どのような場面で
就活ハラスメントが起きる?
●インターンシップに参加したとき ⇒
34.1%
●企業説明会やセミナーに参加したとき ⇒
27.8%
●就職採用面接を受けたとき ⇒
19.2%
●内々定を受けたとき ⇒
13.7%
●内々定を受けた後 ⇒
12.9%
●リクルーターと会ったとき ⇒
12.5%
●志望先企業の従業員との酒席の場 ⇒
11.8%
※ここでの就活ハラスメントとは特に就職活動中等のセクシュアルハラスメントについて調査した結果です。
出典:「令和2年度職場のハラスメントに関する実態調査報告書」(厚生労働省)
このような行為、
していませんか?
- 幹部社員が女子学生に対し、採用の見返りに不適切な関係を迫り、その後もメールやLINEで連絡を取り関係を迫った。これを女子学生が断ると、「うちの会社には絶対入社させない」と伝え、実際に不採用とした。
- 「つきあっている男性はいるか」「結婚や出産後も働き続けたいか」ということを女子学生にだけ質問した。※「結婚後や出産後も働き続けるか」といった質問を女性だけ(または男性だけ)にすることは男女雇用機会均等法違反(募集・採用に関する性差別禁止)となります。
- 内定した学生に対して研修と称し、内定者でつくるSNS交流サイトに毎日の書き込みを強要する。書き込みを行わない内定者に対して社員が「やる気がない、やる自信がないなら、辞退して下さい」などの威圧的な投稿を度々行う。
企業にとって就活ハラスメントは
大きなリスク!
社会的信用を失うリスク
「就活ハラスメントを起こした会社」として、企業の社会的信用を失い、企業イメージも低下します。
就職後の職場でもハラスメントが横行している会社だと学生に認識され、応募が減少する可能性があります。
働いている従業員にも、働く意欲やモラルの低下により生産性に悪影響が及び、貴重な人材の退職・流失のリスクも生じます。
損害賠償請求をされるリスク
会社の使用者責任が問われ、ハラスメント被害者から損害賠償請求を受ける可能性があります。
行為者は刑事責任を問われる
ハラスメント行為を行った行為者は刑事責任を問われる可能性があります。
人事部採用担当者や役員等が就活ハラスメントにより刑事責任を問われた場合、会社の信用は回復不能になるほどの深刻なダメージを受けることがあります。
どうすれば就活ハラスメントを未然に防げる?
ハラスメント防止の方針の明確化
全従業員(特に採用担当者)に対し、就活ハラスメントを含む、すべてのハラスメントを禁止する方針を明確にしましょう。
就活ハラスメントを行った場合には、その行為者を処分する社内規定や規則(懲戒処分等)を設け、周知しましょう。
ハラスメント防止体制の整備
採用担当者を含む従業員にハラスメント防止に関する研修を継続的に実施しましょう。階層別に研修を実施するのも効果的です。
学生と接する際、採用担当者は可能な限り2名以上とし、オンラインも含め面談やオリエンテーションの際は複数名で対応するなど、採用活動におけるルールを明確にしましょう。
学生向けに就活ハラスメント相談窓口を設置し、周知しましょう。
就活ハラスメント防止に向けた
具体的取り組み
導入のヒント
掲載の事例集で紹介されているとおり、就活ハラスメント防止に取り組んでいる企業にはいくつかの共通項があります。これから対策に着手する場合や取り組みの見直しを検討している場合は、次の3点に着目してみてはいかがでしょうか?
基本的な対策
「公正な採用選考」に基づいた面接実施
「公正な採用選考」とは、厚生労働省が事業主にお願いしている採用選考の在り方。「応募者の基本的人権の尊重」「適性・能力に基づいた採用基準」という、「公正な採用選考」の考え方に沿って面接等を行うことは、就活ハラスメント防止においても基本的な方針となります。
参考:公正な採用選考を目指して(厚生労働省)
効果的な対策
リクルーターの行動指針や
マニュアル策定
就活ハラスメントの中でも特にセクシュアルハラスメント(セクハラ)は、若手社員がリクルーターとして活動するOB・OG訪問や面談時に起こりやすいことがわかっています。その対策として、行動指針やマニュアル、ガイドブックの策定・活用を含む、リクルーターへの研修は有効です。
一歩踏み込んだ対策
応募者の個人情報の限定利用
選考に多少の不便さがあっても、ハラスメントの芽を摘むことがより大切です。就活ハラスメントがそもそも発生しない状況をつくるため、面接官等に対し、学生の個人情報を一部非公開にして、個人情報が悪用されるのを防止するなどの対策を取り入れるのもよいでしょう。
もしも自社で就活ハラスメントが起きてしまったら
事実確認
就活ハラスメントの相談・報告を受けたら、被害者のプライバシー保護を前提に迅速かつ適切に事実確認を行います。
被害者の救済
就活ハラスメント行為が事実と確認できた場合、会社による被害者への謝罪など、速やかに被害者への救済措置を行います。
社内における措置を実施
就業規則等の懲戒規定にもとづき、行為者に対して必要な措置(処分)を行います。
再発防止策の検討・実施
社内において就活ハラスメント防止に関する方針の周知徹底を図るなど、就活ハラスメントの再発防止策を徹底します。
公表
就活ハラスメントの事実が深刻と判断した場合、社外への公表を検討します。なお、実際に公表する場合は、被害者から公表について承諾を得た上で、被害者のプライバシーに万全の配慮を行うことが必要です。
法律に関するお問い合わせ先
都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)
https://www.mhlw.go.jp/content/
000177581.pdf