インタビュー(対談) いい広告は、すべての「ステークホルダー」、
そして「社会」を幸せにする。

第72回日経広告賞においてグランプリにあたる大賞を受賞したニチレキ株式会社(以下、ニチレキ)。 長く読み継がれている文学作品や聖書の記述を表現モチーフに道路インフラを“長寿命化”させることの意義を訴求した新聞シリーズ広告に対しては、審査員から「ブランド広告自体が不朽の名作になりうることを示した」と高く評価された。2023年を代表するBtoB広告はどのように生まれ、どんな効果を生み出したのか。そして、今後ニチレキが目指していくコミュニケーションとは。代表取締役社長 小幡 学様にお聞きしました。

「知る人ぞ知る企業」からどう脱却するか

第72回日経広告賞「大賞」

平井:第72回日経広告賞の大賞受賞、おめでとうございます。御社はアスファルトのリーディングカンパニーとして日本の道路インフラの構築と維持に長年貢献しておられます。世の中になくてはならない企業でありながら “知る人ぞ知る企業”という存在でいらっしゃった御社に、今回の受賞によって光が当たるということは素晴らしいことだと思います。受賞作となった広告について社内外の評判はいかがでしょうか。

小幡:数え切れないほどのうれしい声を頂戴しました。道路を管理されている官公庁の皆さまをはじめ、取引先の皆さまからたくさんの祝福の言葉をいただきましたし、社員からは「自分が働く会社がどんな仕事をしているのかを家族にわかってもらえるのがうれしい」といった感想が聞かれました。またニチレキを定年退職されたOBの方からも「自分の勤めていた会社の価値が社会的に広く認められて誇らしい。孫にも自慢できる」といった声をいただいています。今年内定をお出しした学生にも今回の新聞広告を送ったのですが、それを見た親御さんからは「ニチレキという会社のことは正直あまり知らなかったが、プライム市場に上場していることに加えて、社会的に意義ある仕事をしている素晴らしい会社だと考えを改めた」という感想をいただきました。さらに今回の受賞によって、より多くの投資家の皆さま、ニチレキを知らなかった皆さまに広く社名を覚えていただけたことと思います。先ほど“知る人ぞ知る企業”と表現していただきましたが、“知る人”のパイをひろげればニチレキのブランド価値は増幅します。そのために広告の力を大いに活用したいと考えていますし、日本経済社さんには広告に関する豊富な知見とアイデアあふれるクリエイティブで今後ともご協力いただければと思います。

平井:ありがとうございます。“知る人”のパイをひろげるために、私たちもこれまで以上に尽力させていただきます。さて、広告で効果をあげるためには、テレビ、新聞、Webなどの中からどの媒体を使って広告を出稿するのか、また新聞といっても各紙ある中でどの新聞を選ぶのかも重要な要素になるかと思います。御社は一貫して日本経済新聞への出稿を続けていらっしゃいますが、その理由をお聞かせいただけますか。

小幡:私たちはBtoB取引を主とする企業です。そして日本経済新聞もBtoBのベクトル上にあるメディアであると思っています。ですから、他の新聞に出稿するよりも日本経済新聞に出稿する方が、ニチレキの技術に興味を持った会社との共創やコラボレーションの可能性が膨らみます。道路を管理されている全国の官公庁にも日本経済新聞はほとんど置いてありますからアピールになります。また、投資家にとって日本経済新聞が重要な情報源であることは言わずもがなです。BtoBコミュニケーションにおいて多くの利点を持つ日本経済新聞に広告を出稿するというのは当然な選択です。

「伝える」ではなく「伝わるコミュニケーション」を

平井:ここ数年の御社の広告を拝見していると、必ず何らかの「驚き」が表現の中に組み込まれているように思います。2021年の広告(日経広告賞「⽣産財・産業部⾨ 最優秀賞」・日本BtoB広告賞「経済産業大臣賞」)ではアスファルトを手で曲げる写真を使用していたり、2023年の広告では長寿命な道路インフラづくりを文学や聖書などの「不朽の名作」と重ね合わせて表現してみたり。こうしたインパクトのある表現はどのように生みだされているのでしょうか。

日経広告賞「⽣産財・産業部⾨ 最優秀賞」・日本BtoB広告賞「経済産業大臣賞」

小幡:基本的には日本経済社さんのクリエイティブチームと弊社広報部門で練り上げた広告表現案を数案見せてもらいます。その中に「これならいける!」というアイデアがあればそのままGOサインを出しますし、「こうすればもっとよくなるのでは」と思えば私なりの意見を伝えます。私は若い頃、技術営業をやっていたので、どう説明したらこの技術の素晴らしさをわかってもらえるかにこだわりがあるのです。さらに言えば、漫画や映画といった画像、映像の世界に興味があり、手紙を書いたり絵手紙を描いたりすることも好きでしたから「伝え方」にも大いに関心がありました。そうしたこともあって、自分の考えをクリエイティブチームにフィードバックし、社長も社員も外部もなくワンチームとなって表現のクオリティを高めています。

平井:なるほど。「伝え方」は、特にBtoB企業にとって重要な要素ですよね。優れた技術を持っていればいるほど、そればかりを伝えたくなりますが「伝える」イコール「伝わる」ではない。どうしたら伝わるか、どうしたらわかってもらえるかに工夫を凝らしていることが御社の広告からは読み取れます。

小幡:おっしゃる通りです。「うちの会社にはこんなにすごい技術があります。こんなにすごいモノをつくっています」という主張を前面に出したところで聞く耳は持ってもらえません。まずは自分の会社が社会に何を為そうとしているのかを語り、その実現のためにこんな技術を開発しました、というコミュニケーションの順番で語る方が聞く耳をもってもらいやすいのではないでしょうか。どんなにすごい技術があっても、社会の中でどう役立つのかが腹落ちしなければ、生活者は利便性や恩恵を感じられません。新聞を開き、広告を目にした読者にどう興味を芽吹かせるか。広告を目にする瞬間の1秒、2秒が勝負だと思っています。
ですから私たちはインパクトのある表現を目指しています。その分、アイデアに苦労もするわけですが(笑)

自動運転へ、脱炭素化へ。つくるのは、未来につづく「道」

平井:社会は進化し、道に関する環境も変化しています。クルマの自動運転技術が進歩する一方で、環境への取り組み、脱炭素化も進めなければなりません。こうした中で、ニチレキはどのような志を持って未来に向かっていくのでしょうか。御社の今後の事業構想についてもお聞かせください。

小幡:自動運転では、センサーで車の周りの状態を把握しながら走るのですが、陥没や穴が道にできていたら事故につながってしまいます。その意味でも、道路の安心安全はこれまで以上に大切になりますし、ニチレキの点検・診断と補修技術が貢献できます。脱炭素化については、アスファルト舗装材をつくる際の熱を抑える機能に加え、道路の長寿命化によって補修工事を減らす機能や、既存の舗装や廃材をリサイクルする機能などを組み合わせた製品・工法によってCO₂排出の削減に貢献しております。
また現在、茨城県つくばみらい市に今後のニチレキの生産・物流基地となる「つくばビッグシップ」の建設を予定しておりますが、万が一、首都圏が大きな地震や災害に見舞われたときには、ここを前線基地としてライフラインである道路の補修を速やかに進めます。
道は、国家の礎です。ニチレキは道をつくり、守るという使命に誇りを持ち、アスファルト舗装に関して、開発を核としつつ調査・診断から設計・提案、製造・販売、施工・管理まで一気通貫でサポートする「道のトータルソリューションカンパニー」としてこれからも社会に貢献していきます。

平井:小幡社長のお話をお聞きして、広告が企業を取り巻く環境にもたらす影響の大きさ、そして社会に与える
インパクトの強さを再認識いたしました。私たち日本経済社は御社のプレゼンスが社会の中でさらに高まるよう広告制作を通じて引き続きサポートさせていただきます。本日はありがとうございました。

【制作スタッフからのメッセージ】

河野:日経広告賞大賞の受賞は素直にびっくりしています。企業としての大きな社会的役割を「伝える」立場として、2019年から並走してひとつのゴールに到達できたことを嬉しく思います。企業価値の向上に少しでも貢献できるよう引き続きスタッフ一同頑張ります。

朝比奈:社会的な役割が大きいからこそ、大きなメッセージを、大きなスペースを活かして発信することが出来たことが今回の受賞につながったのではと思います。
広告を共につくってきた感覚を大事にしつつ、これからも課題に対する意識を共有しながら、ONEチームでチカラを合わせてより良いものを創り上げていきたいと、改めて身の引き締まる思いです。

出演者

小幡 学 様
ニチレキ株式会社
代表取締役社長
 

聞き手

平井 美英子
株式会社日本経済社
上席執行役員
 

制作スタッフ

河野 直之
株式会社日本経済社
クリエイティブ局
第3部 部長 クリエイティブディレクター

制作スタッフ

朝比奈 綾
株式会社日本経済社
クリエイティブ局
第3部 アートディレクター/デザイナー

※内容および出演者の所属・肩書は2023年12月現在のものです。

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