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2021年 上半期ベストセラー総合第1位は『推し、燃ゆ』(河出書房新社)

■全体の傾向

今回のランキングは「鬼滅の刃」「新型コロナウイルス」という2つの大きな社会現象・社会情勢に加え、人々の関心の変化が反映されたランキングとなった。

【「鬼滅ブーム」の継続と新しい風
「鬼滅の刃」は原作が完結を迎えてもなお、関連作品が多数ランクインした。2020年10月16日に公開された映画は興行収入歴代1位の大ヒットを記録するなど、「鬼滅ブーム」が継続した。
「週刊少年ジャンプ」にて連載中の「呪術廻戦」は、アニメの放送をきっかけに売上が大きく伸びた。この点が「鬼滅の刃」と共通しているということからも注目を集めており、今回のランキングにも関連作品が多くランクインしている。

【自粛生活の長期化で、人々の関心に変化が?】
2020年年間ベストセラーでは、人々の関心が家での過ごし方やライフスタイル、働き方、人間関係のあり方などに向かったと考えられ、「おうち時間」「コミュニケーション」 に関連する作品のランクインが目立った。今回は「コミュニケーション」というキーワードに加え、小説人気の再燃や、占い関連作品の人気上昇といった傾向がみられ、長引く自粛生活によって「人の心の内面」に対する人々の関心が高まったと考えられる。

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■ジャンル別の傾向

【総合】『推し、燃ゆ』が第1位に!2021年は小説人気が再燃
第164回芥川賞を受賞した宇佐見りん『推し、燃ゆ』が第1位を飾った。アイドルの熱狂的ファンである高校生を描いた本作は、累計発行部数50万部を突破し、幅広い年代の読者から大きな反響を呼んだ。小説が上半期ベストセラー総合第1位となるのは、2013年の村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』以来、8年ぶりとなる。
第2位はスマートフォンが人間の脳にもたらす影響を説いた『スマホ脳』。おうち時間におけるスマートフォンの接触時間の増加、小中学校でのタブレット端末の支給などにより、デジタルツールとの付き合い方に人々の関心が集まっているとみられる。第3位は占い師・星ひとみのオリジナル運勢鑑定法をまとめた『星ひとみの天星術』。テレビ番組でも活躍し、よく当たると話題の占い師による著書が多くの読者の支持を得た。また、「鬼滅の刃」関連作品は5点がランクイン。『鬼滅の刃 塗絵帳-蒼-・-紅-』は発売3か月で第5位にランクインするなど、驚異の売上を記録し、「鬼滅の刃」の根強い人気を表している。
フィクションジャンルが5点ランクインと、コロナ禍で小説人気が再燃していることがうかがえる。東野圭吾の著書は2作がランクインしており、高い人気を誇っている。
市況が好調なビジネス書からは、『人は話し方が9割』『本当の自由を手に入れる お金の大学』『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』と、メイン購買層である男性だけではなく、女性読者をうまく取り込んだ作品がランクインした。コロナ禍における生活を豊かにするための「コミュニケーション」「お金」に対する人々の高い関心がうかがえる。

【単行本フィクション】宇佐見りん、新川帆立、加藤シゲアキ、新進気鋭の小説家がランクイン
宇佐見りん『推し、燃ゆ』が芥川賞受賞をきっかけに大きく売上を伸ばし、堂々の第1位となった。これまでの芥川賞受賞作と比べて、特に20代の読者が多いのが特徴の一つで、幅広い層からの支持を得た作品となった。第2位は『52ヘルツのクジラたち』。本書は4月に発表された2021年本屋大賞を受賞し、書店員のみならず多くの読者から愛される作品となった。新型コロナウイルスを物語に絡めた『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』や、東野圭吾作品の中で新たなる最高傑作との呼び声の高い『白鳥とコウモリ』など、同氏の著書は2作がランクインした。
また、弁護士という異色のキャリアを持つ新川帆立『元彼の遺言状』が第5位、現役アイドルの加藤シゲアキ『オルタネート』が第6位。業界に新たな風を吹き込んだ小説家2人が初ランクインとなった。

【単行本実用】人気急上昇の『星ひとみの天星術』が第1位!
長引く新型コロナウイルスによる不安定な世相を反映したランキングとなった。中でも特筆すべきは占い本の人気。コロナ禍で占い需要が増大し、その結果として占いをテーマにした番組が開始され、「風の時代」というキーワードが注目を浴びた。それにより、占い本の売上も拡大し、占い師・星ひとみ、ゲッターズ飯田の作品がランクインした。
大旋風を巻き起こしたコミック「鬼滅の刃」からは塗り絵が第2位にランクイン。また、飲食店の営業時間短縮や家ごはん需要の高まりにより、SNS・YouTube等で人気の料理研究家のレシピ本も人気を集めている。

【単行本ビジネス】引き続き売上増!キーワードは「話術」
『人は話し方が9割』が2020年年間ベストセラーに引き続き第1位を獲得し、根強い人気を誇っている。『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』が第3位にランクイン。対面コミュニケーションの機会が減少し、WEB上での会話が増えたことを背景に、「話術」の重要性を感じたビジネスパーソンが増加したと考えられる。

【新書フィクション】 「呪術廻戦」 「鬼滅の刃」がTOP5を独占
第1位に輝いたのは、人気コミック「呪術廻戦」の小説版『呪術廻戦 逝く夏と還る秋』。同シリーズの『呪術廻戦 夜明けのいばら道』も第3位にランクインし、「呪術廻戦」の高い人気を表す結果となった。
また、「鬼滅の刃」が4作品、「約束のネバーランド」が2作品ランクインしており、「週刊少年ジャンプ」人気コミックの小説版がランキングの大半を占める結果となった。

【新書ノンフィクション】スマホ依存症に警鐘を鳴らす『スマホ脳』が第1位に
スマートフォンが人体に与える影響を最新研究に基づいて明らかにした『スマホ脳』が第1位となり、累計発行部数43万部となった。第2位は「日本資本主義の父」と呼ばれ、NHK大河ドラマでも話題となっている渋沢栄一の『現代語訳 論語と算盤』。第3位は上野千鶴子の『在宅ひとり死のススメ』。同氏の「おひとりさまの老後」シリーズ最新作であり、社会問題にもなっている孤独死にフォーカスをあて、幸せな最期を迎える方法を提案している。スマートフォンの影響や孤独死といったテーマを身近な問題として捉える読者が多かったことがうかがえるランキングとなった。

【文庫】全米図書賞受賞、柳美里『JR上野駅公園口』が第1位に
第1位は2020年に全米図書賞・翻訳文学部門を受賞した『JR上野駅公園口』となった。累計発行部数は40.3万部にのぼる。第2位は浅田次郎『おもかげ』、第3位は東野圭吾『魔力の胎動』と人気作家の作品が続いた。また、第4位に2018年本屋大賞『かがみの孤城』、第5位に2019年本屋大賞『そして、バトンは渡された』、第8位に159回直木賞『ファーストラブ』と、文学賞受賞作品が多くランクインした。

【児童書】「おしりたんてい」の新刊が第1位に!
大人気シリーズ「おしりたんてい」の新刊、『おしりたんてい おしりたんていの こい!?』が第1位となった。第2位には『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編 ノベライズ みらい文庫版』がランクイン。「鬼滅ブーム」はコミックだけではなく、児童書にも波及している。
また、2020年9月にテレビアニメ化した「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」関連作品も3点ランクインし、メディア化作品の強さが際立ったランキングとなった。

【写真集】日向坂46の齊藤京子が写真集女王に!
アイドルグループ日向坂46のメンバー・齊藤京子の『とっておきの恋人』が第1位を飾った。
第2位にも同グループのオフショット写真集『日向撮VOL.01』がランクインと、日向坂46の勢いを表す結果となった。「バズ・ガールズ・マガジン」をテーマに、いま最も注目を集める女の子を特集した『WHITE graph』は2点がランクイン。オーディション番組より輩出された男性アイドルグループJO1の『Progress』や映画・ドラマで活躍中の赤楚衛二『A』、吉岡里帆『里帆採取by ASAMI KIYOKAWA』など、バラエティに富んだランキングとなった。

【コミック】「鬼滅の刃」の人気が続く!「呪術廻戦」もアツい!
2020年12月に発売された「鬼滅の刃」最終巻と「鬼滅の刃 外伝」が第1位・2位となり、長期にわたり高い人気が続いている。第3位・4位には、2020年10月のテレビアニメ放送以降、人気が爆発した「呪術廻戦」シリーズがランクイン。同作は今冬に前日譚である「0巻 東京都立呪術高等専門学校」の映画公開が決定している。また、第6位の「ONE PIECE」は今秋100巻の発売が予定されるなど、ジャンプコミックスが大きな盛り上がりを見せている。

■日本出版販売は書籍・雑誌の流通を担う業界売上第1位の出版販売会社(出版取次)です。
■弊社ベストセラー情報は、約3,000軒の書店様のPOS販売データを基に、全国の書店様での販売状況を総合的に勘案して作成しております。
■集計期間は2020年11月24日~2021年5月21日です。

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