諸田玲子「登山大名」(272)
諸田玲子「登山大名」(272)
わたしは身をこわばらせた。宇目(うめ)の願いがわたしの意に反するものだと直感したからだ。だが、この場にいたって耳を塞ぐことはできない。
「聞こう」
宇目は頭を上げ、背筋を伸ばした。膝においた両のこぶしがふるえているのは、渾身(こんしん)の力をこめなければ次のことばを口にする勇気がないからか。
「拙者を五人組から除名していただきたく」
「おぬしの落ち度ではないというたぞ」
「そのことだけではござい…
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