松本人志さんが訴え取り下げ 文春報道巡る名誉毀損
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女性に性的行為を強要したとする「週刊文春」の報道で名誉を毀損されたとして、人気お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志さん(61)が発行元の文芸春秋側に5億5千万円の損害賠償などを求めた訴訟で、松本さん側は8日、東京地裁への訴えを取り下げた。訴訟は終結した。
民事訴訟法は口頭弁論後に訴えを取り下げる場合は相手方の同意を得なければ効力が生じないと定めている。文春側が取り下げに合意した。双方の間で金銭の支払いはないという。
松本さんは同日、コメントを公表。女性らが参加した会合に出席したことを認めた上で「参加された女性の中で不快な思いをされたり、心を痛められた方々がいらっしゃったのであれば率直におわびする」とした。
報道内容については「強制性の有無を直接に示す物的証拠はないことを確認した」と強調した。「これ以上、多くの方々にご負担、ご迷惑をおかけすることは避けたいと考えた」と訴えを取り下げた理由を説明した。
文春側も同日、「原告側からおわびを公表したいとの連絡があり、女性らと協議の上、取り下げに同意することにした」とするコメントを発表した。
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訴状などによると、週刊文春は2023年12月、15年に東京都内のホテルで松本さんらが開いた食事会に参加したという女性の証言を報道。女性側は会合の途中から松本さんと寝室で2人きりにさせられ、同意のないまま性的行為を強いられたとした。
松本さんは「客観的な証拠がないのに名誉を傷付けられた」として文芸春秋と週刊文春編集長に対し、損害賠償や謝罪記事の掲載を求めて24年1月に提訴した。松本さんは「裁判に注力したい」として、同月から芸能活動を休止している。
3月の第1回口頭弁論で文春側は、女性らに複数回取材を重ね、証言の具体性や裏付けがあるか慎重に検討して「真実と確信した」とし、全面的に争う方針を示した。その上で、具体的に記事のどの部分の事実関係を争うのか明らかにするよう求めた。訴訟はその後、書面や非公開の手続きで審理が続いていた。
不祥事続くエンタメ界、有識者「人権への配慮不可欠」
日本のエンターテインメント業界では旧ジャニーズ事務所の性加害問題や宝塚歌劇団のパワーハラスメントといった不祥事が続発している。エンタメ業界を含め人権に配慮を求める流れがあり、消費者からも厳しい視線が注がれている。
旧ジャニーズ事務所では所属タレントの性被害が長年見過ごされてきた経緯が2023年に発覚。事務所は被害者補償に専念し、タレントのマネジメントを新会社に移管した。宝塚歌劇団は24年3月、死亡した俳優に対して上級生らによるパワーハラスメントがあったことを認め、遺族に謝罪した。
松本人志さんを巡る報道も波紋を広げた。松本さんは活動を休止し、テレビ各局はレギュラー番組で代役を立てるなど対応に追われた。一部企業は活動休止の決定を待たずに、出演番組でスポンサー企業の社名表示を取りやめた。
影響が広がる背景には「ビジネスと人権」を巡る認識の高まりがある。国連が11年に「ビジネスと人権に関する指導原則」を定め、企業の責任が厳格に求められるようになった。取引先の事業活動も含め人権を重視する潮流は世界的に強まっている。
明治大の重田園江教授(政治・社会思想史)は「ビジネスを展開するうえで人権への配慮はいまや不可欠で、企業イメージを大きく損なわないためにも厳しく対応する必要がある」と指摘する。
松本人志さんのコメント全文
訴えを取り下げた松本人志さんのコメント全文は次の通り。(代理人弁護士が発表)
これまで、松本人志は裁判を進めるなかで、関係者と協議等を続けてまいりましたが、松本が訴えている内容等に関し、強制性の有無を直接に示す物的証拠はないこと等を含めて確認いたしました。その上で、裁判を進めることで、これ以上、多くの方々にご負担・ご迷惑をおかけすることは避けたいと考え、訴えを取り下げることといたしました。
松本において、かつて女性らが参加する会合に出席しておりました。参加された女性の中で不快な思いをされたり、心を痛められた方々がいらっしゃったのであれば、率直におわび申し上げます。
なお、相手方との間において、金銭の授受は一切ありませんし、それ以外の方々との間においても同様です。
この間の一連の出来事により、長年支えていただいたファンの皆さま、関係者の皆さま、多くの後輩芸人の皆さんに多大なご迷惑、ご心配をおかけしたことをおわびいたします。
どうか今後とも応援してくださいますよう、よろしくお願いいたします。〔共同〕
週刊文春のコメント全文
週刊文春の竹田聖編集長のコメント全文は次の通り。
本日お知らせした訴訟に関しましては、原告代理人から、心を痛められた方々に対するおわびを公表したいとの連絡があり、女性らと協議の上、被告として取り下げに同意することにしました。なお、この取り下げに際して、金銭の授受等が一切なかったことは、お知らせの通りです。〔共同〕