「国際ワン切り詐欺」、折り返したら高額請求
携帯電話に海外の見知らぬ番号から着信があり、すぐ切れた――。「国際ワン切り詐欺」と呼ばれる犯罪の被害が近年、相次ぐ。表示された番号にうっかり折り返すと、高額の国際通話料金の請求が届く。その一部が犯罪グループに流れているという。日本の携帯電話会社も被害増加に警戒を強めている。
「+674(ナウル共和国)から始まる見慣れない番号から着信があった。スマートフォンを触っていたので出てしまった」「昨夜はマーシャル諸島から着信があった」――。短文投稿サイトのツイッターには海外からの謎の着信を巡る書き込みが飛び交う。
海外からの発信を示す「+」がついた番号からの着信で、5月中の投稿にはアフリカのベナンやガボン、韓国、フランスなどの国名が発信元として挙げられていた。
国民生活センターには2019年ごろから「海外から不審電話がかかってきた」「かけ直してしまったが、高額の電話料金が請求されないか不安だ」といった相談が増えている。70代の男性は今年1月、着信があった番号に折り返した。調べてみると発信元はアフリカのギニアで、高額の請求が心配になって相談を寄せたという。
ITジャーナリストの三上洋さんは「国際通話料金の詐取を狙った犯行だ」と指摘する。三上さんによれば、犯罪グループは発信元の国の電話会社の関係者と結託しているとみられる。無作為に選んだ電話番号に「ワン切り」を繰り返し、折り返した被害者には高額の通話料金を請求する。
三上さんは、発信元の電話会社に支払われた料金の一部が犯罪グループに渡っているとみる。
NTTドコモによると、例えばギニアに平日の日中に電話をかけた場合、料金は30秒で180円。三上さんは「犯罪グループは自動的に大量の電話をかけるシステムを構築していると思われ、多額の収益を得ている可能性がある」と指摘する。
通話時間を長引かせる目的で、電話がつながると外国語の音声が流れるケースもあるという。迷惑電話防止サービスを手掛けるトビラシステムズ(名古屋市)は5月、調査の一環でフランスからの不審電話に折り返したところ、英語で「2万ユーロが当たりました」という音声が流れ、「男性は1、女性は2を押してください」と数字のボタン操作を促された。
同社は迷惑電話をデータベース化しており、30以上の国・地域の4000を超える不審な番号を確認している。5月には同社のサービスの利用者700万人以上に、太平洋のナウル共和国とマーシャル諸島から各1万件ずつの着信があった。
被害の増加に携帯電話会社も警戒を強めている。NTTドコモは確認された不審電話の発信元の国名をホームページで公開している。17年7月のパプアニューギニアに始まり、今年5月下旬までに40を超す国・地域名を公表した。担当者は「発信元の国がころころ変わる」と困惑する。
一度かけ直してしまうと「カモ」と見なされ、電話が次々にかかってくる恐れもある。NTTドコモの担当者によると、システムとしてこうした電話を止めることはできない。携帯端末によっては着信秒数が短い通信を履歴に表示させない機能が付いており「折り返し防止」に有効だという。