国連「制裁履行が主課題」対北朝鮮報告書、正式公表
サイバー攻撃で630億円不法に取得
【ニューヨーク=吉田圭織】国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会の専門家パネルは12日、年次報告書を正式に発表した。報告書は北朝鮮が政府機関主導のサイバー攻撃で仮想通貨を5億7100万ドル(約630億円)不法に取得したと指摘した。制裁逃れの実態を広範に明らかにした。
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制裁委員会の議長国を務めるドイツのホイスゲン国連大使は12日、報告書で明らかになった制裁違反の現状を受け、今後の「主な課題は(制裁の)履行だ」と主張。北朝鮮による核・弾道ミサイル問題は「まだ解決していない」とし、国連制裁の継続の必要性を強調した。
今回の報告書では、北朝鮮当局が主導する外貨獲得のためのサイバー攻撃の実態に初めて踏み込んだ。制裁強化で北朝鮮の外貨収入が細る中、サイバー攻撃に特化した部隊が外貨獲得の任務を課されていると指摘した。
さらに弾道ミサイルの開発・実験を民間の工場や空港などで続けている実態も明らかにした。同パネルは「核と弾道ミサイルの開発計画は現状のまま継続している」と断定した。
報告書は制裁の人道的な影響を分析する必要性にも初めて言及した。天候不順による食糧の収穫減も加わり、北朝鮮の全人口の4割超にあたる1000万人以上が栄養失調に陥っていると指摘した。制裁によって国連関連機関も含む人道支援団体の活動が阻害されているという。
報告書は2018年2月から1年間における国連の対北朝鮮制裁の履行状況を8人の専門家がまとめた。パネルは安保理常任理事国出身の5人と、その他国連加盟国(日本、韓国、シンガポール)の専門家で構成する。