ヴィッセル神戸が終了間際の劇的同点弾で、リーグ連覇に向けて大きな勝ち点1を獲得した。敵地で柏レイソルとドロー。前半5分に先制され、終盤まで追い付けない苦しい展開の中、追加タイム10分に元日本代表MF武藤嘉紀(32)が左足で決めた。6戦未勝利と苦手にしていた相手から勝ち点を奪った。2位のFC町田ゼルビアが勝ちV争いに残ったため、優勝決定は最終節(8日)へ持ち越しとなったが、勝って自力で決められる舞台を整えた。暫定で勝ち点4差の3位サンフレッチェ広島はホームで12月1日に、北海道コンサドーレ札幌と対戦する。

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敗色特濃の雰囲気を、神戸MF武藤の左足が切り裂いた。0-1の後半追加タイム10分、CKの流れからこぼれてきたボールを、冷静にコントロールし、ゴール右へ蹴り込んだ。オフサイド判定に頭を抱えたが、約4分間のビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)による検証の末、得点が認められた。冷静な得点場面と正反対に、感情を爆発させ、ユニホームを脱いだ武藤は「町田も広島もいて、ここで勝ち点0なら不利になると分かっていた。これ以上に大きな勝ち点1は存在しない。計り知れない価値がある」。チーム最多12点目の奇跡的同点弾が自力Vの可能性を残した。

立ち上がりから柏に主導権を握られ、苦しんだ。後半に好機を増やすも1点が奪えない。同点の5分前にはFW大迫がPKを失敗。勝ち点獲得は絶望的と思われた中、武藤は「このまま終わってしまうんじゃないか。怖さもあったけど、何とかチームで1点を取りたい気持ちだった」と走り続け、起死回生弾を生んだ。

常勝軍団を目指すチームに必要なものを、自身の姿で示す一戦にもなった。緩さが感じられた試合の入りには「僕らは仲良しこよしでやってるわけじゃない。戦えない選手は置いていくぐらいの気持ちで戦う姿を見せなきゃいけない」と厳しい言葉で苦言を呈した。

一方で自身は、キックオフ直後から闘志むき出しにした。流血もし、接触プレーですぐ立ち上がれない場面が何度もありながら、最後は足を振り切った。個人トレーニングや食事にこだわり、常に最善を尽くすから好結果を呼び込めた。努力の自負があるからこそ、仲間の甘さは許せない。全ては、神戸を強くするために。最後まで厳しい言動で闘い抜く必要性を発した。

V2まで、あと1勝。この勝ち点1に真の意味を持たせるため、最終節でも「チームの勝利のために全てをささげたい」。そう言い切る男が、神戸をさらに1歩前進させた。【永田淳】

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