この秋、アオリイカのティップランに挑戦しては? 千葉・内房の富浦「共栄丸」(笹子宏宣船長=53)では付近の岩礁地帯を攻め、連日ヒットさせている。小魚に似せた餌木(エギ)を底まで落として誘う。今が旬のカワハギのエサ釣り同様、少々テクニックを要するが、それぞれの引き出しの多さが問われる。ピタリとハマれば、1キロサイズの高級おかずの調達も夢じゃない。【赤塚辰浩】

船中第1号は手塚さん
船中第1号は手塚さん

ティップ(ロッドの穂先)がかすかに浮いた。張っていたラインのテンションが抜ける瞬間を、右ミヨシ(最前方)の手塚清樹さん(55=藤沢市)は見逃さなかった。重くなるだけでなく、サバやヒメマスのように食い上げる。素早くロッドを合わせる。800グラムのアオリイカがしっかり乗った。一定のスピードで巻き取り、笹子船長の入れたタモに取り込まれた。


開始早々、共栄丸初乗船の手塚さんはゲストのモンゴウイカを乗せていた。「モンゴウはモゾモゾとしたアタリで、モタッと重くなりました。アオリは、ティップが浮いて合わせた後にズンッ! と重くなりました」。エギを底まで落としたら、ロッドを1回シャクってスピニングリールを1回巻く動作を6回繰り返す。乗らなければ再度、着底させる。時にはエギを交換する。その誘いの連続で確保した。

片側によって仕掛けを投入する富浦「共栄丸」のアオリイカ釣り
片側によって仕掛けを投入する富浦「共栄丸」のアオリイカ釣り

この後、トモ(最後方)に比べて釣り座が高く、揺れやすいミヨシでは、硬めのロッドを使うとアタリが取れてもバラシやすいと判断。軟調で乗りやすく、バラシにくいロッドへと変え、もう1匹同じようなサイズを上げた。状況判断が功を奏した。

伊藤さんは終了間際にゲット
伊藤さんは終了間際にゲット

右胴の間では栗原真一さん(48=横浜市)が絶えずアタリを取っていた。右隣の中村浩一さん(38=相模原市)、その右隣の伊藤豊さん(39=横浜市)と釣り仲間3人で、エギを着底させたらスピニングリールのベールを外したまま手首を返して底付近をはわせるトゥィッチングを少し入れる。アオリにアピールした後、5回ほどシャクっていた。

栗原さんはアオリイカ釣り3回目で初めて本命ゲット
栗原さんはアオリイカ釣り3回目で初めて本命ゲット

アタリがあったら、エギに乗らなくても合わせる。エギを触るだけのかすかな「おさわり」だったり、足を巻き付けるだけの場合もある。空振りして乗らなくても、合わせは誘いになる。


地道に繰り返していた末、400グラムと700グラムを2匹乗せた。今年10月、中村さんに初めて誘われてから3回目でようやく本命をゲットした。「釣れたし面白いから、また来ます」と笑顔を見せていた。

日が落ちてから乗せた藤田さん
日が落ちてから乗せた藤田さん

終了間際、右トモから2人目で7回ほどシャクった藤田秀樹さん(東京都江戸川区=49)と、5回シャクった伊藤さんが続けてヒット。700~800グラム級が取り込まれた。アオリイカを確保できた4人は、いずれも船べりから頭上まで手首を返しながら誘う基本パターンだった。


笹子船長は「シャクリの回数は着底後3~10回。釣れた人の回数をアナウンスするので、参考にしてください」と言う。誘い方もさまざま。シャクリは手首を返す程度の時もあれば、船べりからゆっくり大きく頭上まで聞き上げるなど、アオリの虫の居所によって変える。「ソフトだったり、シャープだったり、その日のヒットパターンの誘いを見つけることがティップランのコツ」と解説してくれた。


寒さが進むにつれ、ひと潮ごとに成長する。師走にもなれば、1~2キロ超えの大型アオリも出てきそうだ。


ヘアクリップがあれば移動中もロッドとエギをうまく収納できる
ヘアクリップがあれば移動中もロッドとエギをうまく収納できる

■あると便利<1> エギを止めるヘアクリップ

アオリイカのエギをロッドに止めるために、あると便利なのが女性用のヘアクリップ。ほぼスッポリ収納できる。

同じ疑似餌でもルアーフィッシングの場合、トリプルフックやシングルフックの針先を引っかける部分が付いたロッドがある。リールのベールやハンドルなどにも、針先は引っかけられる。

エギのカンナ(針先)は小さく上向きになっている。華道で使う剣山のようにかなり鋭く、刺さると痛い。ポイント移動の際にブラブラさせておくと、ほかの釣り客にケガを負わせる危険性もある。このクリップなら、そんな心配はない。


スルメイカ、ヤリイカ、マルイカの場合、船べりに敷いてツノを置くマットや、プラスチックの円筒パイプを使った投入器がある。アオリのエギクリップは、釣具店でも販売されている。

「ヘアクリップなら百均で安く売られているし、数多くあるから選びやすくて便利です」。使っていた中村さんはこう説明していた。

エギの交換を手早くできるスナップ付きヨリモドシ(左)やスイベル(右)
エギの交換を手早くできるスナップ付きヨリモドシ(左)やスイベル(右)

■あると便利<2> 手早く交換スイベル

ヘアクリップのほかにもあると便利なものがある。まずはスナップ付きヨリモドシかスイベル。リーダーとエギを結んでいては手間がかかる。どちらかがあれば、手早く交換できる。

それと歯ブラシ。エギにスミが付着すると、ノリが悪くなる。スミは海水で簡単に落とせる。手洗いしてもいいが、鋭い針先が刺さると痛い。歯ブラシでこすれば簡単だ。


なお、船上にスミが付いていたら備え付けのブラシに海水を含ませて落とす。

釣れたアオリは、氷にじかに当てると身が劣化する。コンビニのレジ袋や、ファスナーの付いたプラスチックのバッグに入れてクーラーで保管すれば、鮮度が保てる。


エギはさまざまなカラーを用意しておく
エギはさまざまなカラーを用意しておく
水深に合わせて使い分けたいシンカー
水深に合わせて使い分けたいシンカー

■船長アドバイス 潮濁れば派手系

◆エギのカラー 使うのは3~3・5号。定番は紫。ほかはケイムラ、オレンジ&金テープなど。ルアー釣りの時と同じで、潮が澄んでいたらナチュラル系、濁っていたら派手系。

◆シンカー ポイントごとどころか、ひと流しの間でも水深と潮の流れは絶えず変わる。これに合わせて30グラムをメインに、5~40グラムまで幅広く用意しておく。

◆タモ取り 無理して引っ張るとスミを吐かれる。抜き上げない。乗ったら必ず船長に知らせ、海面に姿を見せたらタモですくってもらう。


◆釣り宿 富浦「共栄丸」【電話】090・7244・0460。アオリイカは出船午後1時、氷付き8500円。マダイ船同午前5時30分、コマセ・氷付き1万2000円。電話予約制。

※このほか、勝山「宝生丸」(【電話】0470・55・2777)でも出船中


◆アオリイカ ヤリイカ科アオリイカ属。水深100メートルより浅い岩礁地帯や海藻の生えている場所に生息する。大きくなると胴長50センチ以上、重さも2キロを超える。成魚は小魚などを足で捕まえて頭からかじるように食べる。アオリは漢字で「障泥」と書く。馬の鞍の側面下にある泥よけの馬具に似ているため、この名前が付けられたとされる。また、バショウの葉に外見が似ていることから、「バショウイカ」などの別名もある。肉厚で甘みタップリの刺し身は、イカの中でも最高級。

協力店
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