温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号」(GOSAT-2)の観測データのプロキシ法による解析結果(メタンと一酸化炭素)について
(筑波研究学園都市記者会、環境記者会、環境省記者クラブ同時配付)
令和元年7月5日(金) 国立研究開発法人 国立環境研究所 地球環境研究センター 衛星観測センター 観測センター長 松永恒雄 主任研究員 吉田幸生 主任研究員 森野 勇 主任研究員 齊藤 誠 主任研究員 丹羽洋介 主任研究員 大山博史 高度技能専門員 亀井秋秀 高度技能専門員 佐伯田鶴 |
なお、今回の結果は2019年6月25〜27日に米国・サンノゼで開催されたOSA Optical Sensors and Sensing Congressで発表されました。
今後はフルフィジクス法による二酸化炭素のカラム平均濃度推定等に取り組むとともに、得られた濃度データの比較検証を地上観測データや欧米の類似衛星のデータを用いて進めていきます。
温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号」(以下、「GOSAT-2」という)は、環境省、NIES及びJAXA(以下、「三者」という)が共同で開発した温室効果ガス観測専用の衛星で、同じ三者が開発し、2009年に打ち上げ、現在でも運用中の温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(以下、「GOSAT」という)の後継機です。
GOSAT-2は平成30年10月29日にJAXA種子島宇宙センターからH-IIAロケット40号機により打ち上げられました。その後、平成30年11月5〜6日にはGOSAT-2に搭載された雲・エアロソルセンサ2型(以下、「CAI-2」という)の初画像が、平成30年12月12〜14日には温室効果ガス観測センサ2型(以下、「FTS-2」という)の初データが取得され、これらの観測機器が正常に動作していることが確認されました。さらに、平成31年2月1日には、GOSAT-2は定常運用に移行し、CAI-2及びFTS-2による全球観測を開始しました。本報道発表では、FTS-2が取得したデータのプロキシ法による解析結果についてご報告いたします。なお、今回用いたプロキシ法は、二酸化炭素には適用できずメタンと一酸化炭素のみになりますが、雲・エアロソルの影響が多少大きく、処理対象事例の選別や導出結果に対する品質管理が必要な場合でも、比較的精度のよいカラム平均濃度が得られるという特徴があります。
図1は、FTS-2が平成31年3月5日〜4月3日に取得したデータから求めたメタンのカラム平均濃度の分布図です。今回はFTS-2のレベル1Bプロダクト(V002.004)に対し、プロキシ法と呼ばれる手法を適用しました。この図より、メタンの排出源である湿地や森林火災等の多い東南・南アジア、アフリカ中央部、南米北部でメタンの濃度が高くなっていることが分かります。
また、GOSATによる同じ期間のメタンのカラム平均濃度と比較した結果を図2に示します。これよりGOSATとGOSAT-2の差は、平均0.0026 ppm(2.6 ppb)、ばらつき0.0127 ppm(12.7 ppb)であることが分かります。一方、GOSATによるメタンのカラム平均濃度の精度は地上観測データとの比較により確認されていますが、GOSATと地上観測データの差は平均0.0019 ppm(1.9 ppb)、ばらつき0.0134 ppm(13.4 ppb)であり、GOSATとGOSAT-2の差とほぼ同等です。このためGOSAT-2によるメタンのカラム平均濃度推定は適切に行われていると期待できます。
同様に、FTS-2データからプロキシ法で求めた一酸化炭素のカラム平均濃度の分布図を図3に示します。一酸化炭素の発生源となる化石燃料の使用や森林火災等の多い東アジア、アフリカ中央部で濃度が高くなっていることが分かります。同様の分布は、同時期に取得された欧州の地球観測衛星Sentinel-5pに搭載された観測機器(TROPOMI)のデータにも見られています。また推定された濃度の値については、いくつかの世界各地の地上観測データと概ね整合的であることも確認できました。なお、一酸化炭素は温室効果ガスの発生源の種類の識別に有用なGOSAT-2の新規測定項目の一つです。
ただし、現時点ではまだCAI-2による雲識別データ等を使っていないため、今回の解析結果には雲の影響を受けたFTS-2データも含まれている可能性があります。
今後はフルフィジクス法による二酸化炭素のカラム平均濃度推定等に取り組むとともに、得られた濃度データの比較検証を地上観測データや欧米の類似衛星のデータを用いて進めていきます。また、これらの濃度データを含むGOSAT-2レベル2プロダクトの公開はGOSAT-2打上げから1年後の令和元年10月末以降を予定しています。
○NIESの担当者について
○謝辞
(1): https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/db/mar_env/results/co2_flux/animation/index.html【外部サイトへ接続します】
(2): https://jra.kishou.go.jp/JRA-55/index_ja.html【外部サイトへ接続します】
(3): http://www.cger.nies.go.jp/ja/activities/supporting/supercomputer/
http://www.gosat-2.nies.go.jp/jp/about/rcf2/
今回はOrleans(フランス)、陸別(北海道)、つくば、佐賀、Burgos(フィリピン)、Wollongong(オーストラリア)、Lauder(ニュージーランド)の各観測地点における地上観測データを用いました。各観測地点は、以下の機関によって運営されています。
○問い合わせ先
国立環境研究所 衛星観測センター
観測センター長 松永 恒雄(029-850-2838、matsunag末尾に@nies.go.jpをつけてください)
GOSAT-2プロジェクト(029-850-2731/2966、gosat-2-info末尾に@nies.go.jpをつけてください)
○用語等
(参考:吉田、日本リモートセンシング学会誌、39、1、22-28、2019)
(参考:吉田、日本リモートセンシング学会誌、39、1、22-28、2019)
参考 https://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/69/column2.html
○関連ウェブサイト
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http://www.gosat-2.nies.go.jp/jp/
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http://www.nies.go.jp/soc/
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http://www.gosat.nies.go.jp
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https://data2.gosat.nies.go.jp/index_ja.html