福島のごみは多いって本当?!ごみの量を減らすためには | FRECC+(フレックプラス) 福島から地域と環境の未来を考えるWEBマガジン
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研究紹介

福島のごみは多いって本当?!ごみの量を減らすためには

近年、持続可能な社会の実現に向け、大量生産・大量消費社会からの転換が求められ、ごみ問題も改めて注目を集めています。
ごみの減量は、個人レベルでも取り組みやすい問題である一方、身近すぎて普段あまり意識しないという方も多いのではないでしょうか。
福島県のごみの現状と、ごみを減らすためにはどうすればいいか、国立環境研究所の飯野 成憲さんにお話を聞きました。

インタビューを受ける飯野成憲さんの写真

福島で多いのは生活系ごみ

都道府県別の1人1日当たりのごみ排出量で、実は福島県は全国ワースト2位。福島県民の方にとっては、少々ショックなデータかもしれません。

全国の1人1日あたりごみ排出量

1人1日あたりごみ排出量(全国)

ごみとは、工場などから排出される 産業廃棄物を除く一般廃棄物のことを指し、一般家庭から出る生活系ごみと、コンビニやオフィス、飲食店などの事業活動で出る事業系ごみに分かれます。
1人1日当たりごみ排出量は、これら2種類のごみを合わせた量から計算されます。

福島県で排出される生活系ごみと事業系ごみの内訳を見ると、令和元年度の1人1日あたりの排出量は1035グラムのうち、生活系ごみは726グラムに対し、事業系ごみは309グラムと、生活系ごみが全体の7割以上を占めています。

福島県の事業系ごみ排出量は全国都道府県のうち30位と、決して少ないわけではありませんが、それでもごみ全体のワースト2位に比べるとだいぶ良い成績です。
一方、生活系ごみは全国ワースト2位となっており、福島県では、生活系ごみが多いことで、ごみ全体の排出量が押し上げられているという構図が見てとれます。

東日本大震災以後、生活系ごみ排出量は高止まり

東日本大震災以前は、福島県の1人1日当たりのごみ排出量は全国平均とあまり差はありませんでした。
しかし、震災以降、ほぼずっとワースト2位という不名誉な位置をキープし、ごみの多い状態で推移しています。

1人1日あたりごみ排出量の推移の図

1人1日あたりごみ排出量の推移

東日本大震災以前は、一人一日当たりのごみ排出量は、全国的に低下傾向にありました。
しかし、福島、宮城、茨城、山形などの震災の影響の強い地域では、震災のあった平成22年度と翌23年度のごみ排出量が増加しました。
飯野さんは福島県の問題点をこう指摘します。

「災害に伴う片付けごみが一時的に発生するのはしかたないことですが、福島県以外では、震災の片付けが落ち着いた後、なだらかにごみの量が減少しています。
福島県ももちろん減ってはいますが、ごみの量が他県に比べて高止まりしている のが特徴です」

災害廃棄物の山(写真)

災害廃棄物の山

震災以降、福島県でごみ排出量が多い傾向が続いている理由ははっきりとはわかっていませんが、紙ごみや生ごみが他県よりも多い傾向にあります。
飯野さんは「データから読み取れることではないので、あくまで推測にすぎない」と前置きした上で、一人ひとりのごみに対する意識の変化の可能性にも言及しました。

「震災を機に『あれだけの震災があったんだから』と、ごみの排出に対する意識が下がってしまった可能性もあるのかもしれません 」

アンケート調査の結果、見えてきた有効な対策

ごみ排出量を削減するためには、一体どうすればよいのでしょうか?
そのヒントを探るために、飯野さんたちは、長野県、栃木県、福島県それぞれの市町村に対して、ごみ排出量抑制のためにどのような対策や取り組みを行なっているか、アンケート調査を行いました。
これらの3県は産業形態や人口数が近いものの、ごみ排出量でみると栃木県が全国平均に近く、長野県は少なく、福島県は多いという違いがあることから、調査対象として選ばれました。

飯野さんたちは、生活系ごみと事業系ごみのそれぞれに対する取り組みについて尋ね、ごみ削減効果を検証しました。
その結果、ごみ排出量削減に有効な対策として、まず浮かび上がってきたのは、ごみ処理手数料やごみ袋の有料化で、その後に生ごみたい肥化事業、分別の数を増やすことが続くことがわかりました。

指定ごみ袋の写真

福島拠点がある福島県三春町の指定ごみ袋

「環境省が毎年公開している全国の一般廃棄物処理に関するデータを活用していた過去の研究でも、有料化や分別の数が多くなるとごみの量が少なくなるということが示されました。
今回の調査も、それと大体同じ傾向が得られました」

有料化がごみ削減に有効な一方で、ごみ袋1枚当たりの金額による差は認められませんでした。
つまり、ごみ袋が高いか安いかよりも、有料化しているか否かが重要な要素だったということです。

「有料化はごみを減らすのに有効ですが、住民の方の理解を得る必要があります。有料化を導入する場合は、自治体と住民の対話が不可欠です」

人口や産業規模、地域によって異なるごみ事情

ごみの排出量や排出パターンには地域によって異なります。
たとえば、10万人以下の都市では50万人以上の都市よりもごみ排出量は圧倒的に少ないことが知られています。
その原因としては、分別を徹底していることが挙げられます。
「大都市よりも、人口の少ない都市の方が分別を徹底しやすいのではないか」と、飯野さんは推測しています。
一方で、人口は少なくても、どうしてもごみが多くなってしまうのが観光地です。
観光客がごみを大量に出すので、どうしても住民1人1日あたりに換算すると多くなってしまうのです。

リデュース(1人1日当たりごみ排出量)取り組み上位10市町村の表

表.リデュース(1人1日当たりのごみ排出量)取り組み上位10市町村

環境省は毎年、全国の市町村を人口10万人未満、10万人以上50万人未満、50万人以上の3カテゴリに分けて、各カテゴリの1人1日あたりごみ排出量が少ない自治体ベスト10を発表しています。
目を引くのは、10万人未満の市町村のランキング上位にずらりと並ぶ、長野県の市町村です。
長野県でごみ排出量が抑制されている背景について、飯野さんはまずトップダウンでの取り組みがあり、そのおかげで、ごみを減らす意識が住民に浸透したのではないかと、飯野さんは 推測しています。

ごみを減らすために、私たちにできること

ごみを減らすためには行政の取り組みももちろん必須ですが、私たち一人ひとりの行動も変えていかなければなりません。

「よく使われる言葉なのでご存じの方も多いと思いますが、ごみ削減のために大事なのは『3R』。リデュース(reduce)、リユース(reuse)、リサイクル(recycle)です

3Rのイメージイラスト

1つ目の『R』である「リデュース」とは、ずばりごみを減らすこと。
そのためにはまず、消費を抑える、つまり余計なものは買わないことが重要だと、飯野さんは強調します。
また、ものを買うときは、長く使えるものを選ぶことも大切です。
そうするとごみになるまでの期間が長くなり、結果的にごみが減ることにつながります。

2つ目の『R』は「リユース」。
リサイクルと混同されがちですが、リユースはリサイクルと違って形状を変えることはなく、使用済みの製品などを繰り返し使うことを指します。
自分が使わないけどまだ使える食器や家具などをリサイクルショップに持って行ったり、友人に譲ったりすることがリユースにあたります。

「僕自身、自分の使わなくなったもの を他の人に使ってもらえると嬉しいですし、愛着のあるもの以外は、フリマアプリなども活用して、他の人に使ってもらうようにしています。
少しはお小遣いにもなるし、そういうマッチングはとても良いと、個人的には思います」

リユースのイメージ写真

そして、最後の『R』は「リサイクル」。
しかし、実は福島県はリサイクル分野でも、他県に遅れをとってしまっています。
空き缶や古紙といった資源ごみなどを再利用した割合を示す「リサイクル率」が、令和2年度、福島県は和歌山県と並んで全国最下位となりました。
福島県のごみ削減のためには、リサイクル率も向上させる必要があります。

「リサイクル率向上には行政の努力ももちろん必要ですが、一人ひとりができる取り組みも大事です。
新聞や雑誌は古紙回収に出す、食品トレイなどはスーパーに行くときに一緒に持って行って回収箱に入れるなど、生活の中に資源回収を習慣として取り入れることで、継続できるのではないでしょうか」

リサイクルのイメージ写真

ごみの捨て方は生活習慣の一つ

どのようなごみをどれくらい出すのかは、生活スタイルによって全く違います。
たとえば食事をお弁当で済ますことが多い家庭では、お弁当を食べた後の容器 などが多くなりますし、自炊が多い家庭では生ごみが多くなります。
どんな商品をどのくらいの頻度で買うのかといった日常の何気ない行動も、実はごみの捨て方につながっているのです。

「たとえば詰め替え用をなるべく選ぶようするなど、まずはできるところから、ごみ排出量を減らすための行動を習慣化していってほしいです」

ごみ排出量を減らすためには、過剰包装を避ける、食品ロスをできるだけ抑えるようなシステムを作るなど、産業界のバックアップも必須です。
近年、多くの企業で、SDGsを意識した取り組みが行われており、大量生産・大量消費という生活スタイルは見直されつつあります。
「こうした産業界の意識の変化も、ごみ削減の追い風になるのでは」と、飯野さんは期待を寄せています。

また、「出たごみをどうやって捨てるのか」という、文字通り「ごみの捨て方」に関わる部分でも、実は私たちにできることがあります。
ごみの分類別に見ると、湿ベース(排出されたときのままの湿った状態)でのごみ重量の4割程度が生ごみで占められています。
そのため、ごみを減らす上で、生ごみを減らすことは非常に重要です。
実際、飯野さんたちが行った調査でも、生ごみたい肥化事業がごみ全体の削減に有効であることを示唆するデータも得られています。

コンポストのイメージ写真

「生ごみは80%くらいが水なので、絞って排出するだけで、水分量をずいぶん減らすことができます。
絞ったあと、生ごみ処理機で堆肥にして家庭菜園に使うなどできれば一番良いですが、そこまでは難しいという家庭でも、生ごみを絞って、80%の水分を50%にすることはできると思います。
水分量が減れば減った分だけ燃えやすくなります」

大事なのは、一つ一つの取り組みの積み重ね

ごみの捨て方は生活習慣に組み込まれた行動なので、その習慣を変えるには長いスパンでの取り組みが必要になります。
何より重要なのが、子どもの頃からごみをできるだけ出さない生活を身につけることだと、飯野さんは言います。

「子どもの頃に習慣化したことは、一生忘れないものです。
ごみをできるだけ出さない生活スタイルを子どもの頃に身につけるためには、体験型の授業など、身を持ってごみ削減の重要性を知るような機会もあるといいですね」

最後に飯野さんは、一人ひとりの行動変容の重要性を訴え、インタビューを締めくくりました。

ごみの排出は私たちの生活に密接に関わっているため、ごみを減らすためには『これさえやればOK』という取り組みはありません。
私たち一人ひとりが自分にできる取り組みを地道にコツコツと積み重ねること。
それこそが、ごみ削減につながる近道なのです

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