薬を長持ちさせる運び屋分子の性質を解明 – 長浜バイオ大学
×

薬を長持ちさせる運び屋分子の性質を解明

本学の今村比呂志 助教(バイオデータサイエンス学科)と千葉大学大学院理学研究院の森田剛准教授、千葉大学大学院薬学研究院の東顕二郎准教授、岡山大学異分野基礎科学研究所の墨智成准教授らの研究グループは、高分子ミセルのポロキサマー407が優れた薬物送達作用をもつ理由を明らかにしました。

高分子ミセルのポロキサマー407は治療薬を包含することができ、体内に適切に薬を運ぶのに使われています。このポロキサマー407は温度を上げると体温付近で“固まり”(流動性が著しく低下し)ます。これによって包含した薬物を長時間に渡ってゆっくりと放出することができるので、薬を頻繁に投与しなくてもよくなります。

しかし、なぜ温度を上げると“固まる”のかはよくわかっていませんでした。森田准教授らの研究グループは、高分子ミセル同士に働く力に着目し、放射光小角X線散乱実験装置で調べました。その結果、これまで見過ごされていた高分子ミセル同士に働く引力を発見しました。この引力とともに溶液中の高分子ミセルの占有率が増加することが、温度を上げて“固まる”原因となっていると考えられます。

今後は、高分子ミセル同士に働く引力をコントロールすることで、より優れた薬物送達システムの開発につながっていくことが期待されます。

本成果は、Journal of Physical Chemistry Letters (URL:https://doi.org/10.1021/acs.jpclett.4c01138)に掲載されました。

論文名「Pair Potential between Poloxamer 407 Micelles in 14 wt % Aqueous Solution Clarifying the Sol–Gel–Sol Transition by Temperature Rise」 Volume 15, Issue 31, 7909-7915 (2024) Takeshi Morita, Yusuke Torii, Hiroshi Imamura, Teruki Kadota, Fumie Sakuma, Kenjirou Higashi, Tomonari Sumi