アミロイドができる前の“さらにその前”の解明 – 長浜バイオ大学
×

アミロイドができる前の“さらにその前”の解明

本学の今村比呂志 助教(バイオデータサイエンス学科)と神戸大学大学院理学研究科の柚佳祐 大学院生および茶谷絵理 准教授、京都大学複合原子力科学研究所の井上倫太郎准教授および杉山正明教授らの研究グループは、蛋白質のアミロイド線維ができる前の“さらにその前”のプロセスの解明に成功しました。

蛋白質は通常、個々バラバラになって働いていますが、何らかのきっかけで集まり、アミロイド線維と呼ばれる頑丈で大きな凝集体となることがあります。このアミロイド線維はアルツハイマー病やプリオン病などの難治性疾患と関係があり、その根本的な解決方法の開発が待ち望まれています[1]。

最近、脳内などで出来上がったアミロイド線維の構造の分析が進んでいます。しかし、「なぜそのような構造体に至ってしまったのか?」という根本的な点はまだ解明されていません。茶谷准教授はこれまでの研究で、アミロイド線維が形成される”前”にアミロイド前駆体が存在することを発見していました。今回の研究は”さらにその前”にどうやってアミロイド前駆体ができてしまうのか突き止めようとするものでした。

柚大学院生らは、さまざまな先端的手法を使ってアミロイド前駆体の形成の様子を観測することに成功しました。今村助教はアミロイド前駆体の形成過程の数理モデルの構築に貢献し、アミロイド前駆体ができる前に複数のステップがあることを見出しました。そして、それぞれステップに独特な構造的・熱力学的な特徴があることの発見につながりました。これらの知見を基に、将来的にはアミロイド線維化を防ぐ新しい方法が開発されることが期待されます。

参考URL
[1] 茶谷絵理, 変性したタンパク質がつくる集合体を紐解き制御する, 生物物理学会WEBサイト「生物物理のテーマ」: https://www.biophys.jp/highschool/C-34.html

本成果は、Journal of Molecular Biology (URL:https://doi.org/10.1016/j.jmb.2024.168461)に掲載されました。

論文名「Mechanistic modeling of amyloid oligomer and protofibril formation in bovine insulin」 Volume 436, Issue 6, 168461 (2024) K. Yuzu, H. Imamura, T. Nozaki, Y. Fujii, S. M. M. Badawy, K. Morishima, A. Okuda, R. Inoue, M. Sugiyama, E. Chatani