建設産業においては、近年建設投資の大幅な減少に伴っていわゆるダンピング受注が激化し、そのしわ寄せが技能労働者の賃金低下をもたらし、若年入職者が大きく減少する一方、高齢化が進み、このままでは熟練工から若手への技能承継がなされずに、将来の建設産業自体の存続が危惧される状況に立ち至っています。人材の育成には一定の期間を要することから、今ここで適切な対策を講じなければ、近い将来、災害対応やインフラの維持・更新にも支障が生じかねないところです。
若年者が建設業への入職を避ける一番の理由は、全産業の平均を約26%も下回る給与の水準の低さであり、また、最低限の福利厚生であり法令により加入義務のある雇用、健康、厚生年金保険(以下「社会保険」という。)に未加入の企業が多いことも大きな原因の1つです。
こうした状況を踏まえ、国土交通省では、平成24年度から官民を挙げて社会保険の未加入対策を総合的に進めることにより、人材の確保と健全な競争環境の構築を進めています。また、技能労働者が不足している状況を反映するとともに社会保険への加入の徹底を図る観点から、平成25年3月末に平成25年度公共工事設計労務単価を設定し、全国平均で約15.1%の上昇となったところです。
これを受け、同年4月18日には、技能労働者の適切な賃金水準の確保、社会保険への加入の徹底等について、太田国土交通大臣から建設業団体トップへの直接の要請を行い、さらに同年10月23日には、本要請に対するフォローアップ会合を実施し、国土交通省・建設業団体双方の取組状況を共有するとともに、今後の取組の加速化について確認を行いました。
国土交通省では、今後も、官民を挙げて、技能労働者への適切な賃金水準の確保対策、社会保険未加入対策に取り組んでまいります。