川の生き物と水質 | 川を楽しむ | カワナビ

vol.1.....川の生き物と水質

実は! 水のきれいさを教えてくれる生き物がいる

川の中にすんでいる生き物たち
日本の川には、四季を通してたくさんの生き物が暮らしています。実際に川の中に入ってみると、ウグイやコイなどの魚類はもちろん、幼虫期を水中で過ごすトンボ(ヤゴ)やホタルなどの水生昆虫類を見つけることができます。

川底には、カワニナなど貝の仲間たちがいて、川岸の方にはサワガニやカエル、イモリが石の間にかくれているかもしれません。さらには、泥の中にドジョウやシジミがもぐっていることもあります。このように、川にはさまざまな生き物がいます。これらをまとめて「水生生物」(すいせいせいぶつ) と呼びます。

しかし、良く観察(かんさつ)してみると、場所によってそこにくらしている生き物がちがうことが分かります。ホタルは普通、きれいなところにいますよね。

実は、どこにどんな水生生物がいるか、それは水のきれいさ・きたなさ(水質)が大きくかかわっています。逆に、水生生物を調べることによって、そこの水がきれいかきたないか、おおよそのことが分かるのです。

川の中にすむ生物の種類(しゅるい)は、水に溶けている酸素(さんそ)の量と深い関係にあります。酸素の少ない水でも生きられる生物と、生きられない生物がいるからです。

川の水に溶けている酸素の量は、水温や水の汚れの程度によって変わります。水の汚れの原因となる落ち葉、昆虫や動物の死がいやふん、ごはんのたべかすなどを「有機物」(ゆうきぶつ)といいます。有機物を小さな生き物たちが分解するときに酸素を使うので、水に溶け込んでいる酸素の量が減ってしまいます。

水質の調べかた
川の水質を調べるには、水の中の有機物の量を測るなど、いろいろな方法がありますが、水生生物から水質を判定する方法は、生き物の観察もできるので楽しく、取り組みやすい方法です。是非チャレンジしてみましょう!



ステップ1:まずは生き物を探してみよう
水生生物を調べて水質を判定する方法は、以下のようなステップで進めます。

ステップ1: 水生生物を採集する
ステップ2: 何がどれだけいるか数える
ステップ3: 点数を数えて、水質を判定する

意外と簡単!? とはいえ、まず、生き物がどこにいるのか、目ぼしをつける必要があります。

①石の表面
②石の裏がわ
③石と石の間やくぼみ
④石に草がかぶっているようなところ
⑤川底の砂の中

他にも葉っぱについていたり、いろいろなところにいますので、石をそっとひろってきて、表面や裏についているものを水で流す、もしくは歯ブラシでこすり落としてみることと、川底を足で「ガサガサ」して(写真)、流れてくるものをすくう、まずはこの2つをしてみます。

良く目を凝らしてみると、小さなものも結構いることが分かります。(写真)
なお、生き物によっては、足が折れてしまったり、傷つきやすいものがいるので、ていねいに取り扱いましょう。石も、元の場所に、あった向きに戻すといいですね。


ステップ2~3: ワークシートを使おう
水生生物を採取したら、次は、何がどれだけいるかを数え、それをもとに点数をつけて、下表のように4段階の水質を判定します。

きれいな水(水質階級Ⅰ)
カワゲラやサワガニ、ナミウズムシ(プラナリア)など

ややきれいな水(水質階級Ⅱ)
ゲンジボタル、カワニナ、ヤマトシジミなど

きたない水(水質階級Ⅲ)
ミズカマキリ、タニシ、シマイシビルなど

とてもきたない水(水質階級Ⅳ)
ユスリカ類、アメリカザリガニ、エラミミズなど

ですが・・・ 生き物の名前がいきなり分かるはずもありません。ちなみに、水質を判定するときに調べる対象とする生物(指標生物(しひょうせいぶつ)といいます)は30種類程度います。全部覚えていくのは大変ですよね。

しかしご安心ください! 国土交通省のホームページ(川の生き物をしらべよう)に、イラスト・写真つきで、対象とする生物と、水質判定の仕方が詳しく紹介してあるワークシートがあります。これと見比べれば、見つかった生き物が指標生物かどうかわかると思います。


調査グッズ
調査に必要なグッズは、ワークシート(川の生き物をしらべよう)にも書かれていますが、ポイントとなるものをあげてみます。

①ネットは下枠が直線のほうが使いやすい。
②バケツやトレーがなくても、食べ物の容器で代用できる。
 (透明のプラスチックカップも観察に使えます)
③スポイトは先を2cm程度切っておくと、使いやすい。
 (小さないきものが、中に入りやすい)
④ルーペは必需品(小さな生き物が意外と多い)。
⑤歯ブラシがあると便利(石をこするときに使える)。

夏の調査では、熱中症対策として、「ぼうし」が必須アイテムです。水分補給にも注意する必要がありますね。

それと、子どもが川で調査するときには、大人が川に一緒にはいって、必ず見守ってあげてください。水難事故(すいなんじこ)には特に注意しましょう。

そういう意味では、はき物にも注意したいところです。長靴は中に水が入ると動きにくくなりますが、サンダルはけがをします。川には釣りばりが落ちている場合もあって危険です。

ウォーターシューズと呼ばれるものがオススメですが、足をきちんとカバーしていて、脱げにくい上ばきでも代用できます。グッズについてあれこれ考えるのも、なかなか楽しいですね。




夏休みの自由研究のネタに

川の中の生き物を観察するのはとても面白いです。どんなものが、どんな場所にいたのかを調べるだけでも、いいネタになりますね。

水質判定ができれば、どうしてその水質階級になるのか、考えてみることができます。どうして水がきれいなのか、どうして水が汚いのか、人間の活動と川の環境の関係を考えるとても良いきっかけになります。さらに、川(流域)全体に想像をめぐらせていくと、川の上流や川が流れ込む湖や海の環境についても考えることができます。

すると、複数の地点で水質判定を行いたくなりますが、まずは生き物とその場所をしっかり観察するなど、テーマを決めて1か所でじっくり取り組んでみてください。ごみは落ちていませんか? 水のにおいや透明さはどうですか? きっと多くの気づきがあるはずですよ!


チェック! 水生生物の調査に参加しよう
どなたでも参加できます
国土交通省と環境省が主導となって、夏休み期間を中心に全国水生生物調査が行われています。学校単位で団体参加する小・中学生が多く、昨年度は約6万人が調査に参加しました。

今年も募集していますので、ぜひ参加してみてください。 実際に行った調査結果は、集計用紙に記入して提出します。全国の調査結果は、国土交通省や環境省のホームページで見ることができます。
調査参加の案内は、右のリンクをご覧ください。

注意:大人も一緒に入って見守りましょう
雨で増水している川には近づかない
子どもが川で生き物を探すときには、大人が川岸で見ているのではなく、一緒にはいって見守りましょう。子どもより下流側にたつ、また、複数の大人がいるときは、ここから先にいってはいけないという範囲をきめて、そこに大人がたつことも大切です。

また、雨が降って増水している川は危険なので、絶対に近づいてはいけません。また川の水位は、上流での雨の影響やダムの放流などによって急に増すこともあります。自分のいる場所が晴れていても安心せず、気象警報や雨量情報を常にチェックしましょう。

雨が降ったあとの川岸は、ぬれて滑りやすく、流木やごみなどに足を取られやすくなっています。「川に入らない調べ学習なら大丈夫」と気を抜いていると、大きな事故につながります。下のハンドブックなどを参考にしっかりとした安全対策を行った上で、家族の人と一緒に出かけましょう。