「お客さまのお役に立つために進化し続ける」理念を支えるユニバーサルマナー

「お客さまのお役に立つために進化し続ける」理念を支えるユニバーサルマナー

株式会社丸井グループ

株式会社丸井グループでは、年齢・性別・身体的特徴を超えた「すべてのお客さま」が、インクルードされ「しあわせ」を感じられる豊かな社会を目指しています。そこで、ユニバーサルマナー検定LGBTQ+対応マナー研修の導入、博多マルイの施設診断、ミライロ・リサーチを活用した接客技術の向上など、さまざまな観点からユニバーサルデザイン化に取り組みました。

CSR推進部マルイミライプロジェクト担当課長 井上道博 様、マルイファミリー溝口 メンズ総合ショップ担当 岩佐遼平 様、オムニチャネル事業本部 業務仕入管理課 太田美穗子 様にお話をうかがいました。

本業(ビジネス)と通じて、多様なお客さまと社会に貢献する

聞き手

多様なお客さまへの対応を、全社的に取り組まれたきっかけを教えてください。

CSR推進部 マルイミライプロジェクト担当課長 井上道博 様

CSR推進部 マルイミライプロジェクト担当課長 井上道博 様

井上

丸井グループには「お客さまのお役に立つために進化し続ける」という経営理念があり、脈々と受け継がれてきました。従来は、お客さま=ファッションへの興味が高い若年層と考えられていましたが時代が変わるにつれ、幅広い年代の方々に選んでもらえる商品やサービスを提供するという考え方に変わっていきました。また丸井グループには、私たちが得意とする本業を通じて、社会に貢献していこうという考え方も根付いていました。まずは自分たちが得意な仕事の中で、できることは無いだろうか?と探していたのです。

聞き手

そのファーストアクションが、「ユニバーサルマナー検定」ですね。全社的に取組みたいと思われた理由はなんですか?

井上

すべてのお客さまのニーズを知るためには、年代だけの区別ではなく、障害のある方やLGBTQ+の方など様々な方々への理解が必要だと考えていました。ある日、社員の一人が「毎朝の通勤時に車いすを利用している人を見かけるが、声をかけられない……」と何気なく悩みを話したことがあります。彼女に対してある幹部社員が「そりゃそうだ、いきなりできるわけが無い。でもまずは、仕事でできるようになろうよ。そうすればプライベートでもできるようになる!」とアドバイスをしたんです。日常で接客をする上で、まずはユニバーサルマナー検定を受講して、それぞれができることからスタートしました。

「なぜサポートが必要か」マインドを育てるために最適

聞き手

数ある研修の中から「ユニバーサルマナー検定」を選んでいただいた理由はなんですか?

池袋マルイのユニバーサルマナー垂れ幕

池袋マルイのユニバーサルマナー垂れ幕

井上

もともと2009年から、ご高齢の方や障害のある方へのサポート技術を習得する研修を始めていました。しかし「なぜサポートをするのか?」という根本的な理解は今ひとつ浸透しておらず、行動に移せない社員も多数いました。そういった意味で、障害をお持ちの講師の方が講義をされるユニバーサルマナー検定3級は「すべてのお客さまをおもてなしすることが、企業の価値を向上させる」というマインドを育てるためにピッタリでした。

聞き手

丸井グループさんでは、ユニバーサルマナー検定3級を353名、2級を145名の社員の皆さまに受講いただきました。(2016年7月時点)実際に受講したご感想をお聞かせください

マルイファミリー溝口 メンズ総合ショップ担当 岩佐遼平 様

マルイファミリー溝口 メンズ総合ショップ担当 岩佐遼平 様

岩佐

私が在籍する「マルイファミリー溝口」は、ご高齢のお客さまがとても多いので、どうおもてなしをしてご満足いただけるかを日々考えていました。ご高齢の方や障害のある方を介助する技術を学ぶだけでは「なぜそれが必要なのか」というイメージがつきづらかったのですが、実際に自分が(ご高齢の方や障害のある方の)体験をすることで「こんなに大変なんだ!だからこのサポートが必要なのか」と気づきました。

ご高齢のお客さまへのおもてなし、成功体験ができた

聞き手

ご高齢のお客さまが多い店鋪では、実際にどのような意識の変化が現れましたか?

岩佐

検定の受講後、足がご不自由なご高齢のお客さまを接客し、喜んで頂いた経験が印象に残っています。そのお客様は片足が不自由で、買い物に疲れてしまった様子でした。これまでのように悩むことなく、まずはサッとお声がけをして、どのようなサポートができるかをお尋ねすることができました。椅子をお持ちして座っていただき、靴下や下着を合わせながら、お買い物をじっくり楽しんでもらうことができました。以前は不安のあまりサポートを押し通しがちでしたが、時には一歩引くことで、コミュニケーションも弾みました。また来たいと言っていただき、メンバーズカードの入会までしてくださったのは嬉しかったですね。

店鋪・商品開発でもユニバーサルデザインの視点が活きる

聞き手

接客対応がメインではない部署では、ユニバーサルマナーの知識はどのように活用することができますか?

オムニチャネル事業本部 業務仕入管理課 太田美穗子 様

オムニチャネル事業本部 業務仕入管理課 太田美穗子 様

太田

学んだ知識や体験を活かし、お店づくりや商品づくりをフォローしていきます。自社ブランドでは洋服や靴、バッグなどを展開していますが、どんな方でも使いやすいという視点も取り入れたいと思っています。

ららぽーと立川立飛「マルイのシューズ」

ららぽーと立川立飛「マルイのシューズ」

井上

既に一部のパンプス(婦人靴)において、サイズ展開を19.5〜27cmまで拡大しています。これまで自分のサイズが無いとお悩みだったお客さまからご好評いただいていますが、実はトランスジェンダー(身体の性と心の性が一致しない方)のお客さまが喜んでご購入くださっていることを、SNSを通じて知り驚きました。少しの工夫や配慮でも、ユニバーサルデザインになると言うことは大きな発見であり、可能性を感じました。

LGBTQ+の方々のニーズを知り、社員の意識が大幅に変化

聞き手

ユニバーサルマナー検定受講後、丸井グループ様ではLGBTQ+対応マナー研修を168名の社員の皆さまに受講いただきました。(2016年7月時点)受講後、社内で良い変化はありましたか?

講習修了の証であるバッジ

講習修了の証であるバッジ

井上

研修を受けた一部の社員は先日行われた東京レインボーウィークの期間中にバッジをつけて店頭に立ちました。LGBTQ+の方々に理解があり研修を受けていることが見た目でわかれば、お声がけがしやすくなるのではと考えました。実際に新宿マルイ本店の時計売り場では、販売員が5〜6人いたにもかかわらず、バッジをつけている販売員を探して、声をかけてくださったお客さまもいらっしゃいました。社員を対象に「丸井グループが企業として、LGBTQ+を含む性的マイノリティの方々への取組みを進めるべきだと思いますか?」というアンケートを取ったところ、研修受講前は「そう思う」と答えた者が35%でした。ところが、研修受講やイベントを経て、80%に増加したんです。まずは話を聞いてみるという一歩を踏み出すことで、社員の意識が大きく変わることを痛感しました。

新設「博多マルイ」は多様なお客さまから愛される店鋪へ

聞き手

念願の九州初出店となる「博多マルイ」をオープンされましたね。店鋪づくりにおいて、ユニバーサルデザインとユニバーサルマナーを全面的に取り入れていただいた理由を教えてください。

2016年4月21日にオープンした「博多マルイ」

2016年4月21日にオープンした「博多マルイ」

井上

商業施設の激戦区の中で、お客さまから選んで頂くためには他とは違う取り組みが必要と考えました。「性別」「年代」を越え、幅広いお客さまに気軽にお立ち寄りいただける店舗を目指しています。在籍する社員は全員ユニバーサルマナー検定3級と2級を取得し、ハード(施設)の面でも事前に施設診断を行いました。オープン後はマルイの他店舗と比べても、車いすを利用するお客さまの来店数が非常に多いのではという話を聞いております。実際に喜んでいただいているという実感があるので、このような取り組みは今後も続けていきたいですね。

聞き手

「博多マルイ」ではミライロ・リサーチ(障害のある当事者による店鋪の実地調査)を導入いただき、接客技術の向上に繋げていただきました。導入の理由を教えてください。

井上

ユニバーサルマナー検定を受講したとは言え、実際には障害のあるお客さまへの接客経験が無い社員も多く「いざと言う時に声をかけられないのでは」という不安もありました。実際に障害のあるモニターさんをおもてなしさせていただき、忌憚ない意見をお伺いすることで、社員の自信に繋げることが目的でした。調査当日は検定で学んだ内容を活かして接客をしつつ、積極的に社員からモニターさんにも質問をさせていただきました。

聞き手

「車いすを利用されるお客さまは足がむくみやすい方も多いので、大きめの靴も提案する」「視覚障害のあるお客さまには、お札の種類をわかりやすくしてお渡しする」など、接客において実用的なアドバイスもさせていただきましたね。

井上
井上

常にお客さまの“期待を越える”サービスを提供したいと思っています。そうすればお客さまにファンになっていただけるからです。そのためにも、多様なお客様に喜んでいただける接客や店舗づくりは今後も模索し、全店に取り入れていきたいですね。

社員自らが自発的に行動し、ユニバーサルマナーの浸透を目指す

聞き手

今後丸井グループさんとして、多様なお客さまの“期待を越える”ために、どのような展開を予定されていますか?

ユニバーサルマナーアワード 「インパクト部門」を受賞

ユニバーサルマナーアワード 「インパクト部門」を受賞

井上

同様の取り組みについては、今後も継続し、グループ内で拡げていきたいと考えています。ユニバーサルマナー検定などを受講していくだけではなく、これからは、丸井グループならではの取組みに挑戦していきたいです。例えば“ユニバーサルデザインコーディネーター”など、車いす利用者や視覚障害者などのお客さまへピッタリのコーディネートやライフスタイルの提案ができる人材を育てたいですね。また素晴らしい“ユニバーサルマナーのおもてなし”を実践している社員を社内で表彰していく仕組みも作りたいです。多様なお客様にファンになっていただけるサービスを、丸井グループから発信できたらと思っています。