牛乳に含まれる乳糖は、腸内細菌の働きによって乳酸や酢酸に変換されると、腸のぜん動運動を高めて便秘を防ぎ、便を柔らかくする働きがあります。
ヒトの腸内には1,000種類、100兆個を超える細菌が生息しています。
これらの細菌は腸内で相互に関係して、腸内フローラという生態系を形成。
腸内細菌には消化・吸収を助けて腸内環境をきれいにする善玉菌と、腐敗物質をつくり体に害を及ぼす悪玉菌、その中間に位置する中間菌の3種類があり、お互いに拮抗しあっています。
牛乳に含まれる乳糖は難消化性なので、一部は未消化のまま大腸に到達して、そこで腸内細菌による発酵を受け、有機酸を生じます。
酪酸など有機酸のあるものは大腸壁細胞の栄養源となり、また腸内のpHを酸性側に傾かせて、いわゆる善玉菌優位の腸内環境をつくります。
これらの有機酸が、回腸や大腸を刺激し腸の蠕動運動を高め、便秘の改善に寄与するのです。
また、乳糖は腸内の浸透圧を高め、平衡化するために周囲から水分を取り込み、腸内の内容物を軟らかくする働きもあり、スムーズな排便を促進します。
日本人の成人には、体内の乳糖分解 酵 素の働きの弱い人がいます(子どもは少ない)。
特にこの酵素の働きの弱い人が日本人には約10%存在し、牛乳を飲むとおなかがゴロゴロしたり、下痢を起こしたりします。
こうした症状を「乳糖不耐症」といいます。
乳糖不耐症は、牛乳中の糖質である乳糖を消化する酵素が少ないか、働きが弱いため、乳糖が消化・吸収されずに大腸に送り込まれるため起こると考えられています。
エネルギー源として役立つ乳糖が分解されずに大腸に運ばれると、腸内細菌が乳糖を分解してガスを出し、腸を圧迫したり、多量の水分が一気に大腸に送られ下痢をするのです。ただし、下痢をしてもカルシウムなどの栄養素は、その前に小腸できちんと吸収されています。
牛乳を飲むとおなかの調子が悪くなる人は、温めて飲む、コーヒーやココアと混ぜて飲むなどの工夫をしていることが多いようです。
人肌くらいに温めてゆっくり飲むと、胃腸に冷たい刺激を与えずにすみ、乳糖の分解酵素の働きも盛んになります。摂取量を少量ずつから始めて徐々に量を増やす、1日何回かに分けて飲む、混ぜて飲むなどの工夫をしてみてください。