マイコプラズマ肺炎
マイコプラズマ肺炎とは
頑固なせきをともなう呼吸器感染症。小児や若い人に比較的多い。
マイコプラズマ肺炎は、「肺炎マイコプラズマ( Mycoplasma pneumoniae )」という細菌に感染することによって起こる呼吸器感染症です。小児や若い人の肺炎の原因として、比較的多いものの一つです。例年、患者として報告されるもののうち約80%は14歳以下ですが、成人の報告もみられます。マイコプラズマ肺炎は1年を通じてみられ、秋冬に増加する傾向があります。
主な症状
発熱や全身の倦怠感(だるさ)、頭痛、せきなどの症状がみられます(せきは少し遅れて始まることもあります)。せきは熱が下がった後も長期にわたって(3~4週間)続くのが特徴です。肺炎マイコプラズマに感染した人の多くは気管支炎で済み、軽い症状が続きます(一般に、小児の方が軽症で済むと言われています)が、一部の人は肺炎となったり、重症化したりすることもあります。また、5~10%未満の方で、中耳炎、胸膜炎、心筋炎、髄膜炎などの合併症を併発する症例も報告されています。
感染経路
感染した人のせきのしぶき(飛沫)を吸い込んだり(飛沫感染)、感染者と接触したりすること(接触感染)により感染すると言われています。家庭のほか、学校などの施設内でも感染の伝播がみられます。感染してから発症するまでの潜伏期間は長く、2~3週間くらいとされています。
治療方法
マイコプラズマ肺炎は、マクロライド系などの抗菌薬で治療されます(※)。軽症で済む人が多いですが、重症化した場合には、入院して治療が行われます。せきが長引くなどの症状がある時は、医療機関で診察を受けるようにしましょう。また、マクロライド系抗菌薬が効かない「耐性菌」に感染した場合は他の抗菌薬で治療します。
(※)成人で、肺炎を伴わない気管支炎であれば、抗菌薬による治療を行わないことが推奨されています。
参考
薬剤耐性(AMR)対策
予防と対策
手洗いはしっかりと。タオルの共用は避けましょう
保育施設、幼稚園、学校などの閉鎖施設内や家庭などでの感染伝播はみられるものの、短時間の曝露による感染拡大の可能性はそれほど高くなく、濃厚接触により感染することが多いと考えられています。普段から流水と石けんによる手洗いをすることが大切です。また、感染した場合は、家族間でもタオルの共用は避けましょう。せきの症状がある場合には、マスクを着用するなど“咳エチケット”を守ることを心がけましょう。
発生状況
国内の発生状況
マイコプラズマ肺炎は、感染症発生動向調査において全国約500カ所の基幹定点医療機関(小児科及び内科医療を提供する300床以上の病院)から週単位で報告される5類感染症の一つです。基幹定点医療機関からの報告数は、2014年~2023年での10年でみると、最も報告数が少なかった報告年は2022年(395件)で、最も報告数が多かった報告年は2016年(19,721件)でした。
新型コロナウイルス感染症流行開始後は流行状況に変化が認められ、2020年5月以降は報告数が減少しました。また、2020~2023年は、毎年起こる秋冬期の季節性の報告数増加もみられませんでした。直近の2024年は、2020~2023年と比較して報告数が増加しています。
最新の発生状況については、下記の感染症発生動向調査をご参照ください。
海外での発生状況
海外でも、新型コロナウイルス感染症流行開始後は、マイコプラズマ肺炎の発生が大きく減少していたことが報告されています。これは、マスクの着用や手指消毒などの感染防止対策が社会全体でとられたためと思われます。しかし、近年、世界の多くの地域で、マイコプラズマ肺炎の発生の増加が報告されています。例えば、中国や欧州では、2023年の秋頃から大きな流行が報告されました。
医療機関・自治体の皆さまへ
事務連絡
感染症法に基づく医師の届出のお願い
基幹定点医療機関は、対象の感染症の発生状況を指定の期間(週又は月)ごとにとりまとめて、保健所に届け出てください。
届出基準・届出様式
都道府県により届出様式が異なる場合がありますので、最寄りの保健所にご確認ください。