広報誌「厚生労働」2024年11月号 未来のつぼみ|厚生労働省

未来(あした)のつぼみ

年金の財政検証結果を正確に わかりやすく伝えていきたい

大きな制度改正に限らず、日々の地道な積み重ねが厚労行政の可能性を広げています。ここでは、厚生労働省の若手職員たちの取り組みや気づきを紹介します。


川地航平
年金局数理課 数理第二係


私は年金局数理課という部署に所属しており、今年で3年目になります。数理課は公的年金の数理的な部分を扱っている部署で、大きな業務に年金財政の健全性を検証する「財政検証」があります。私は会社員や公務員などが加入する「厚生年金」に係る作業を担当しています。

今年7月に最新の財政検証結果を公表しました。今回の財政検証では初めて「年金額の分布推計」を実施しましたので、ご紹介します。

前回までの財政検証では、給付水準を継続的に測る「ものさし」として、モデル年金と呼ばれる指標が用いられていました。モデル年金は40年間就労し厚生年金に加入した方と40年間専業主婦(夫)という片働き家庭を念頭においた夫婦2人分の年金額ですが、近年、女性の就労期間が延長するなかで、必ずしも個々人の人生設計にとっては参考になっていないという課題がありました。

そこで、今年の財政検証では、性別・世代別に、実際の年金加入歴に基づいた将来の年金額の平均値やその分布を推計し公表しました。推計の結果、若い世代ほど、特に女性で労働参加の進展によって厚生年金の加入期間が伸び、実質賃金の上昇と相まって、平均年金額の増加や年金額の低い方の減少が見込まれる、といった見通しが示されました。これらの効果は年金制度別の加入期間を固定したモデル年金では観察できないものでしたが、今回の推計で初めて定量的に示すことができるようになりました。

「少子高齢化で公的年金はいずれ立ちゆかなくなる」「将来、自分たちの受け取れる年金額は雀の涙ほどだ」といった心配を抱く方が、特に若い世代を中心にいらっしゃると思いますが、実際には日本の公的年金は、より長く働き、より長く加入し保険料を納めることで、自分自身の年金額を増やすことができるという仕組みです。

今回お示しした推計をご覧になった方が、年金制度に対する安心感・信頼感を少しでも持っていただければと願っています。

今後は、財政検証結果を正確に、わかりやすく伝えていけるよう、引き続き努力していきたいと思います。


年金額の分布推計の結果(令和6(2024)年財政検証結果より)

▶財政検証についてより詳しく知りたい方はこちらをご覧ください

▶マンガを用いて年金の仕組みと財政検証をわかりやすく説明したホームページもあります。
詳しくはこちらをご覧ください



 

出典: 広報誌『厚生労働』2024年月11月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省