広報誌「厚生労働」2024年10月号 連載|厚生労働省

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第3回 脳卒中ってなぁに?

今回は「脳卒中」をテーマに、それぞれの症状や治療、予防について紹介します。

Q.脳卒中はどんな病気?

A.脳卒中は、脳の血管が詰まったり破れたりして脳の血流が途絶え、さまざまな症状を起こす病気です。

年間およそ10万人が脳卒中で亡くなっています。日本人の死因の第4位で、寝たきりや介護が必要になる主な原因の一つです。
突然起こるのが特徴で、脳の血管が詰まる脳梗塞と、脳内の細い血管が破れる脳出血、脳の太い血管に瘤(こぶ)(脳動脈瘤:のうどうみゃくりゅう)ができて破裂するくも膜下出血があります。

〈脳卒中の3つのタイプ〉

脳梗塞は脳卒中の過半数を占めています。血流の途絶えた部分によって症状は異なります。動脈硬化で脳内の動脈が詰まる型と、心房細動(しんぼうさいどう)という不整脈が原因で心臓から血の塊が脳内に流れていって動脈に詰まる型があります。
脳出血は、脳内の細い血管が破れるもので、脳梗塞よりも後遺症が残りやすく死亡率も高くなります。
くも膜下出血の原因である脳動脈瘤は、脳ドックなどで未破裂の状態で見つかることもありますが、破裂すると短時間で死亡することもあります。

●ACT-FASTが重要 一分一秒でも早く治療を

――脳卒中は、どのような症状で始まりますか?
・顔の片側が歪む 
・片側の腕、手に力が入らない
・呂律が回らない
・言葉が出ない
・他人の言うことが理解できない


このような症状が一つでも突然起こったら、脳卒中を疑い、すぐに救急車を呼びましょう。発症すぐであれば、脳梗塞では血栓を溶かす薬やカテーテル手術が、脳出血の場合は血圧を下げる治療が、症状を改善します。
ACT-FAST(アクト・ファスト)――顔(Face)、腕(Arm)、言葉(Speech)の頭文字と「すぐに(Time)」をつなげてFAST――すぐに(FAST)救急車を呼んで(ACT)ください。

特に、くも膜下出血の症状は、突然の激しい頭痛、意識障害などで、再出血を防ぐ手術が必要です。症状がすぐに回復しても再発して重症化するリスクがあります。放置せず専門病院を受診しましょう。

【PickUp】
●さまざまな相談窓口や支援サービスを活用し
本人・家族だけで悩まないように

血管が詰まったり、出血したりした部位によって、手足の麻痺や、言葉がしゃべれない、言葉が理解できない、食べ物がうまく飲み込めない、などの障害が残ることがあります。そのほかに、認知症、てんかん、しびれや痛み、うつ病などが引き起こされることや、誤嚥性肺炎、筋肉量減少(サルコペニア)などを併発することもあります。リハビリテーションはとても重要で、近年は発症早期から行われています。

再発予防はさらに重要です。脳卒中は再発率が高く、再発予防のために継続的な服薬と生活習慣の管理が重要となります。

脳卒中の後遺症があると、ご本人ご家族ともに精神的にも大きな負担となります。後遺症を持つ方の仕事への復帰や復職後の通院などには、職場の理解が欠かせません。

職場への復帰については病院の両立支援コーディネーターなどに相談できますし、一次脳卒中センターの指定を受けている病院には「脳卒中相談窓口」、一部の病院には「脳卒中・心臓病等総合支援センター」が開設されています。

そのほかの病院にも患者相談・支援部門があります。病気のことだけでなく、経済的・社会的な悩みにも応じてくれます。症状・年齢・障害の程度によっては、介護保険や障害福祉サービスも利用できます。

こうした相談機能や患者会なども活用し、一人で、家族だけで悩まないで、各種相談窓口や患者会などを頼りましょう。

●実践しよう! 脳卒中予防十か条

脳卒中の90%は予防可能といわれています。

まず、禁煙・節酒や定期的な運動など生活習慣を改善しましょう。高血圧や糖尿病、脂質異常症などがあれば動脈硬化の進行を防ぐため治療を継続して受けましょう。心房細動という不整脈の早期発見と治療も重要です。自分で脈をとることを習慣にしてみましょう。

日本脳卒中協会では、脳卒中予防十か条をまとめた動画も作成しています。ぜひ一度ご視聴ください。

[脳卒中予防十か条]
1 手始めに 高血圧から 治しましょう
2 糖尿病 放っておいたら 悔い残る
3 不整脈 見つかり次第 すぐ受診
4 予防には たばこを止める 意志を持て
5 アルコール 控えめは薬 過ぎれば毒
6 高すぎる コレステロールも 見逃すな
7 お食事の 塩分・脂肪 控えめに
8 体力に 合った運動 続けよう
9 万病の 引き金になる 太りすぎ
10 脳卒中 起きたらすぐに 病院へ


詳しくはこちら

●10月は「脳卒中月間」

10月29日は「世界脳卒中デー」
世界脳卒中機構は毎年10月29日を「世界脳卒中デー」と定めており、日本脳卒中協会は毎年10月を「脳卒中月間」としています。
これまでも、全国各地で市民公開講座などが開催されたり、東京都庁や、太陽の塔をはじめ各地の建物がシンボルカラーのインディゴ・ブルーにライトアップされたりしました。今年も、各地で啓発活動やライトアップが行われます。
改めて、脳卒中について考えてみる機会にしてください。

世界脳卒中デー2024
詳しくはこちら:公益社団法人日本脳卒中協会

●厚生労働省の循環器病対策はこちら




 

出典: 広報誌『厚生労働』2024年10月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省