広報誌「厚生労働」2024年10月号 特別企画3|厚生労働省

「長期収載品の選定療養」導入 Q&A

10月から「医薬品の自己負担の新たな仕組み」がスタート

今年10月1日から始まった「後発医薬品がある先発医薬品(長期収載品)の選定療養」は、将来にわたって国民皆保険を守っていくため、医療保険財政の改善を図ることを目的としたものです。ここではQ&A方式で、その目的や内容などを解説します。


回答者:渡邉真理子
保険局医療課 主査

Q1:「長期収載品の選定療養」とは何ですか?

A1:「後発医薬品」がある先発医薬品を希望される場合は「特別の料金」をご負担いただくということです。

「長期収載品」とは、同じ成分の後発医薬品(ジェネリック医薬品)がある先発医薬品のことを言います。現在、厚生労働省では、こういった長期収載品について、後発医薬品の積極的な活用を国民の皆さまにお願いしています。

一方、「選定療養」とは医療保険制度上の仕組みの一つで、今年10月1日以降、「医療上の必要性がある場合」などを除いて、患者さんの希望により、後発医薬品ではなく長期収載品の処方を受ける場合は、選定療養の対象として、「特別の料金」のご負担をお願いすることとしています。

Q2:「特別の料金」を支払わなくてはいけない理由は何ですか?

A2:将来にわたって国民皆保険を守っていくためです。

国民の皆さまの保険料や税金で賄われている医療保険の負担の上昇を抑え、将来にわたって国民皆保険を守っていくため、現在、国では比較的価格の安価な後発医薬品への置き換えを進めています。そこで、「医療上の必要性がある場合」を除き、患者さんのご希望でより価格の高い一部の長期収載品を希望する場合には、「特別の料金」の負担をお願いすることになりました。

今回めざしているのは、皆さまに特別の料金をお支払いいただくことではなく、この機会に、より多くの方に後発医薬品の利用への切り替えをご検討いただくことです。後発医薬品の活用により、薬の処方を受ける際の経済的負担も軽くすることが可能です。

また、これにより、医療機関や薬局の収入が増えるというわけではありません。医療保険者による保険給付が減少することで、医療保険財政の改善が見込まれるということが狙いです。この点へのご理解とご協力をお願いします。

Q3:どのような場合に、「先発医薬品を使用する医療上の必要性がある」とされますか?

A3:安全性など4つのケースが想定されます。

大きく4つのケースを想定しています。
1つ目は、先発医薬品と後発医薬品で、薬事上承認された効能・効果に差異があり、疾病の治療のために先発医薬品を処方する必要がある場合。

2つ目は、患者さんが後発医薬品を使用された場合に、副作用やほかの薬との飲み合わせによる相互作用が生じたり、先発医薬品との間で治療効果に違いが出るなど、安全性の観点から先発医薬品を処方する必要がある場合。

3つ目は、各学会などが作成しているガイドラインにおいて、先発医薬品を使用している患者さんについては後発医薬品へ切り替えないことを推奨しているような場合。

4つ目は、剤形上の違いにより、後発医薬品の調剤が難しく、先発医薬品を処方する必要がある場合。

以上4つのいずれかに該当すると医師などが判断する場合、「医療上の必要性がある」として、これまでどおり保険給付の対象として先発医薬品の処方を受けていただくことが可能です。その際、今回の「特別の料金」は発生しません。

Q4:医療機関などに後発医薬品の在庫がない場合にも「特別の料金」が発生しますか?

A4:在庫がなければ「特別の料金」は発生しません。

流通などの問題により、医療機関や薬局に後発医薬品の在庫がない場合は、「特別の料金」を支払う必要はありません。

Q5:先発医薬品を使い続けた場合、どれぐらい支払いは高くなるのですか?

A5:先発医薬品と後発医薬品の薬価の差額の4分の1相当をご負担いただきます。

「医療上の必要性がある場合」を除き、患者さんが使用感や味といった、薬の有効性に関係のない理由で先発医薬品を希望する場合は、「特別の料金」として、先発医薬品と後発医薬品の薬価の差額の4分の1相当の額をご負担いただくことになります(図表参照)。

残りの4分の3については、これまでどおり保険給付の対象になり、たとえば3割負担の方なら、そのうち7割は医療保険から給付され、残りの3割が患者負担となります。


 

出典: 広報誌『厚生労働』2024年10月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省